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2019.04.04

平成31年度入学式 学長式辞

 
  商学部、大学院の新入生のみなさん、みなさんは、今日から、小樽商科大学の構成員になられました。心より歓迎し、お祝いを申し上げます。本日のこの式にご臨席を賜りましたご家族のみなさま、ご来賓の方々にも篤く御礼申し上げます。
 
新入生のみなさんは、大きな期待と若干の不安をもって、大学の門を潜られたことと思います。大学では、新しい出会いや体験、今まで知らなかった考え方・思想、異文化との触れ合いが待っています。誇りをもって小樽商科大学で学んで頂きたいと強く願うものであります。
 
  小樽商科大学は、1911年(明治44年)、この地で、旧制の高等商業学校として誕生いたしました。戦前は北海道では唯一の文科系高等教育機関として、戦後は商学を中心とした社会科学系の単科大学として「実学」、「語学」、「品格」をモットーとする教育を展開し、北海道のみならず全国に社会を支えあるいは社会のリーダーとなる人材を送り出してきました。
 
小樽商科大学の教育の最大の特徴は「実学」にあります。特定の分野で専門を深く掘り下げると同時に、人文社会科学、自然科学、外国語など幅広い分野の知識を修得する教育(T型人材の育成)を一貫して追求してきました。さらに、単なる知識の修得にとどまらず、それらの知識を用いて、社会の課題に取り組み、解決策を考える能力・意欲を涵養することにも力を入れてきました。そのために、アクティブラーニングや学外学習を、全国の大学に先駆けて取り入れ、また、ベンチャーマインド育成教育、海外留学支援、様々な分野で活躍する人々との交流の機会の提供に務めてきました。
 
それを更に高度化したのが、大学院教育です。数少ない国立の商学研究科として、社会の幅広い層の人々に、高度な専門知識・理論を、専門職大学院(ビジネススクール)にあっては、高度専門職業人として必要な実践的な知識・能力を身につける機会を与えてきました。
 
これらの教育を支えているのが研究です。小樽商科大学は、商学部のみの単科大学であります。しかしながら、みなさんが学ぶ「商学」は、ビジネスや経営学やマーケティングだけではありません。本学では、「商学」を、複雑な現代社会を理解し解決を導くための、さまざまな学問分野を融合させた総合的・実践的社会科学ととらえています。本学には、多様な分野の研究者が集まり、自由で活発な交流が行われ、その成果が実学教育に生かされているのです。
 
小樽商科大学のもう一つの教育上の特徴は、「国際感覚を備えた品格ある人材」の養成であります。現在、「グローカル人材の育成」という目標を掲げて改革を進めています。「グローカル」とは、「グローバル(地球規模)」と「ローカル(国、地域、職場)」を合成したことば、グローカル「人材」とは、グローバルな視野を持って、自分が直面する課題(ローカルな課題)に立ち向かう人のことであります。そのために、本学の伝統である語学教育や国際交流の実績を活かした新たなカリキュラム、「グローカル・マネジメント副専攻プログラム」をはじめとする5つの副専攻プログラム、それを発展させた主専攻プログラム(グローカル・コース)、合格後1年間の入学猶予を受けて海外留学する「ギャップイヤープログラム」を学部でスタートさせました。国際交流では、留学に関するほとんどすべての費用を支援する給付型の海外留学奨励金制度を用意しています。これらのプログラム、海外留学はすべての学生に開かれています。みなさんのチャレンジを期待しています。
 
来月から年号が変わり、新年号「令和」の時代が始まります。みなさんが生きている今の社会は、30年に及ぶ平成の時代を通じて、グローバル化やデジタル化が進み、大きく変化してきました。家族、地域社会、会社など、人々の生活や成長の場であった集団・組織の力が弱まって、個人としての力や生き方が問われる社会、いわば「個の時代」になりつつあるように思えます。他方で、個人として生きながら、社会の様々な課題に他者と協力して取り組む「協働する力」が求められる時代でもあります。
 
  大学・大学院を卒業・修了すると就職が待っています。我が国では、産業界が自主ルール(3月から企業説明会、6月から採用活動、10月に内定)を決めて、新卒業生を一斉に採用(一括採用)するのが慣わしでした。ところが、この自主ルールを定めてきた経団連は、昨年、今年度を以て廃止することを表明しました。このルールが守られていないこと、一括採用の方法では、産業界が求める人材・能力の見極めが困難であることなどが背景にあると言われています。そして、経団連は大学に働きかけて、大学教育の在り方、社会で求められる人材・能力、採用の方法などについて直接話し合う協議会を設けました。産業界は、単に大学を卒業したということではなく、大学生活で具体的に身に付けた個々の能力を問うようになってきているのです。
 
個人としての能力は、長い時間をかけて身につけるべきものですが、大学・大学院生活は、そのための大事な第一歩です。空前の売り手市場で就職には苦労しないかもしれません。だからといって楽して卒業しようとは思わず、入学後は、しっかり学び、様々なことに挑戦し、体験を積んで、自己を高めることに務めて下さい。冒頭でお話ししたとおり、小樽商科大学は、みなさんにその機会を用意しています。たとえ興味の沸かないこと、苦手なこと、自分自身に直接役立たないと思われることであっても、決してあきらめずに取り組んでください。そして、それは卒業後も続くことを忘れないで下さい。社会では新しい技術や知識が次々と生まれ、新しい産業やビジネス・モデルが誕生しています。就職してからの生き方が大切なのです。
                                
   もう一つ、毎年入学式でお伝えしていることがあります。この会場・体育館の玄関横に小さな碑が建っています。今から7年前に、本学のグラウンドで運動クラブの学生が飲酒で死亡する事故が起こりました。この学生は、入学したばかりのみなさんと同じ大学1年生でした。私たちは、亡くなった方に衷心より哀悼の念を捧げるとともに、二度とこのようなことが起こらないように生命・安全を守ることを誓いました。これはその「誓いの碑」です。未成年の飲酒は法律で禁止されています。また、飲酒は、場合によっては大変危険をともなう行為です。みなさんとくに大学一年生の諸君においては、大学の指導を守り、健康と安全に注意して大学生活を送ってもらいたいと思います。 
1911年に前身の小樽高等商業学校ができてから25年後、学生新聞(緑丘新聞)のなかで、一学生が、母校のことを、「北に一星あり。小なれどもその輝光強し」と称えました。これは設立間もない母校の将来を願う誇りに満ちたことばです。私たちは、その後、学生が言い出したこのことばを、大学の標語として使い続けています。私は、みなさんとともに「小さいけれども光り輝いている」、そういう大学を作っていきたい。
 
みなさんご存じのとおりこの3月に、大リーグ、シアトル・マリナーズのイチロー選手が現役引退を表明しました。記者会見の中で、彼は、数々の記録を打ち立てた28年の野球人生を振り返り、次のように述べています。
「秤(はかり)はあくまで自分の中にある。それをちょっと超えてゆく。その積み重ねでしか自分を超えていけない。」
どんな天才でも、結局は、このようにして自分自身を作っていかざるを得ないのです。最後にこの言葉を新しい時代を迎えるみなさんに送り、私の挨拶とさせていただきます。みなさんのこれからの大学・大学院での生活が稔り豊かなものになることを祈っています。
 
                                   2019年(平成31年)4月2日
                                  国立大学法人小樽商科大学長 和田健夫

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