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2021.01.06

令和2年度第9回講義:公認会計士の仕事について

講義概要(1月6日)

 

○講師:寺西 正道氏(平成17年商学部経済学科卒/公認会計士)

 

○題目:公認会計士の仕事について

 

○内容:

就職氷河期に就活をした私は、幸い名のある会社に入ることができた。しかし腕一本で生きていける仕事に就きたいと思い、公認会計士をめざすことにする。3年かけて目標をかなえた私は、いくつかの職場を経ていま、監査法人の札幌事務所で働いている。就職と転職をめぐっていくつもの後悔がある私だが、後輩たちに体験的なアドバイスをおくりながら、公認会計士の仕事ややりがいについても話したい。

 

 

 

監査を通して、北海道経済に貢献したい

 

 

寺西 正道氏(平成17年商学部経済学科卒/公認会計士)

 

 

 

 

 

後悔がついてまわった就活と就職

 

 

 

私が商大に入ったのは21世紀最初の年(2001年)で、アメリカで同時多発テロがあった年です。だいたい皆さんが生まれたころだと思います。卒業した2005(平成17)年は、就職氷河期の最後の方で、就活には苦労しました。就職浪人を選ぶ人もいました。親しい学友たちも、とりあえず名前の知れた大手企業に入れたら良しとするような状況で、私もそうなるのですが、その後転職する人も多かったのです。といっても私の場合、企業情報を必死に集めたり、先輩を積極的に訪問することもなく、なんとなく始めた就活でした。もっとちゃんと行動していれば良かったと後悔することになります。公認会計士が現在の職業ですが、そもそも学生時代には公認会計士にまったく興味をもたない私でした。今日はこの「後悔」という言葉が何度も出てくるので、皆さんにはぜひ、私の「後悔」を教訓として受けとめてほしいと思います。そんな就活ではありましたが、漁協の経済連合会に入ることができました。札幌で社会人生活が始まると思っていましたが、入社3日目からまず浜益(石狩市)に行くことになり、ここで朝4時からホタテの稚貝のサイズをひたすら計測する仕事をしました。秋には知床でサケを販売して、やがて根室に転勤。ここに1年半ほどいて、それから築地にある東京支店で総務や経理の仕事に就きます。リーマンショック(2008年秋)の前で、東京という都市が持っているぶ厚いパワーは、道東の中標津で生まれ育った私を圧倒しました。若くして大成功をおさめてすごい暮らしをしている青年たちがいるし、一方では住む家もない人々が必死に生きている。このエネルギッシュなまちでずっと暮らしてみたい、北海道には戻りたくない、と思いました。そこで私は、3年いた会社を辞めることにしました。25歳です。では生活をどうやって組み立てていくか?そうです、当初の私は、公認会計士になりたくて会社を辞めたのではありませんでした。バックパッカーになって世界を旅してみよう、なんて考えていたくらいです。東京の会社に就活もしたのですが、このとき、「新卒切符は価値あるものだったなぁ」、と痛感しました。自分は新卒でもないし即戦力でもない。3年くらいの経験では、自分にはこれができる、と胸を張れるものがなかったのです。では、経験もない新卒を企業はどうして雇うのか?それは、伸びしろに対する評価と投資なのです。考えが浅かったな、と私はまた「後悔」しました。そこで公認会計士になるぞ、と肚(はら)をくくりました。実は私が商大に入ったころ、父は大手食品メーカーにいたのですが、その会社が不祥事を起こして大規模なリストラがありました。幸い父は対象から外れたのですが、年収は大きくダウン。父は私にしみじみと、一人でも生きていけるように手に職をつけておくのが良いぞ、と言いました。そんな言葉にも動かされました。母などは、せっかく入った安定した大手企業を辞めることを嘆いたのですが…。公認会計士はご存知のように難関資格ですから1年で取れるとは思いませんでした。でも2年でなんとかしたい、受験は2年までだ、と自分の目標を立てました。結果は3年かかってしまったのですが…。

 

 

 

企業活動の先に、日本経済を見すえる

 

 

 

ここであらためて、公認会計士とは、という話をします。公認会計士の業務は大きく3つあります。中心になるのが、「監査」。これは公認会計⼠だけができる独占業務で、企業の決算書(財務諸表)が正しく作成されているかどうかを、独⽴した第三者の⽴場からチェックします。このチェックによって、株主や投資家などが、その企業を調べたり正しく評価することを助けるのです。それから、「税務」。税務代理、税務書類の作成、税務相談を行います。そして「コンサルティング」。会計や税務の全般、MAIFRSInternational Financial Reporting Standards・イファース・国際財務報告基準)の導入など、会計の制度は国内外でいろいろ変わっていきますから、そうしたことへの対応をサポートします。また、企業や組織の中で経理や財務、IR(Investor Relations)などに関わる、組織内の公認会計士もいます。私たちが拠って立つ公認会計士法では、第一条で公認会計⼠の使命が次のようにうたわれています。「公認会計⼠は、監査及び会計の専⾨家として、独⽴した⽴場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国⺠経済の健全な発展に寄与することを使命とする」まず、公認会計士は高度に専門的な技能を持ちます。その上で、対価をいただくクライアントに対して、独立した立ち位置にいます。報酬をもらうからといって忖度するのではなく、批判的なアプローチを厳正に行うのです。何を行うのか。それは、「財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保する」こと。具体的には、計算書類などが一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成され、会社の財政状態や経営成績などが正しく表示されているかを批判的にチェックして、監査報告書を提出します。このことで「会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り」ます。ひいてはそれが、「国⺠経済の健全な発展に寄与すること」になります。つまり公認会計士とは、クライアント企業の要求に応えながら、その先に日本経済の健全な発展を公共的なまなざしをもって見すえている専門職なのです。

 

 

 

公認会計士と税理士の違いとは

 

 

 

株式会社は、経営者と所有者(株主)が分離されています(所有と経営の分離といいます)。経営者は年度ごとに所有者(株主)に、どれだけ儲かったか、どれだけの財産を所有しているかを報告しなければなりません。ではどうやって—?そのために、企業は財務諸表を作るのです。1年生の皆さんはこれから学んでいくでしょうが、財務諸表には、例えばどれだけの資産と負債をもっているかという財政状態をあらわす「貸借対照表」があります。そして、どれだけの儲けが出たかという経営成績を示す「損益計算書」などがあります。ただし企業は、もしかしたら不正やミスによって誤った報告をするかもしれません。そうなると社会の経済活動が正しくまわりません。あくまで独立した第三者の立場からそのチェックをするのが公認会計士による財務諸表の監査なのです。監査は、資本市場の基盤を支える仕組みであり、それを担う公認会計⼠は「資本市場の番⼈」である、というわけです。会計の分野のプロフェッショナルな資格として、公認会計士と税理士があります。実は私自身も学生時代にはよくわかっていなかったのですが、その違いを説明しましょう。まず端的に、業務内容が違います。税理士は、顧客のために税務を担います。そして公認会計士は、その企業の株主や投資を考えている人たちのために、独立した第三者の立場から財務諸表の政策を監督し検査します。税理士があくまで自分のクライアントのために仕事をするのに対して、公認会計士は、財務諸表を利用するすべての人のために監査を行うのです。顧客で見れば、税理士のクライアントは主に個人や中小企業。公認会計士のそれは、主に大企業です。試験もかなり違います。税理士の試験は5科目で、内訳は会計2科目、税務3科目。1年に1科目ずつ、つごう5年かけて合格を手にすることもできます。公認会計士の場合は、短答式試験が4科目、これに受かると論文式試験6科目に進みます。6科目のうち1科目は税務です。短答式試験は一次試験のような位置づけですが、これに合格してから論文式試験が不合格となっても、以後2年間は短答式試験が免除されます。また論文式試験には科⽬合格制度があって、不合格となっても科⽬合格した科目については、以後2年間その科⽬が免除されます。人数の比較では、税理士は全国に79,243人。公認会計士は32,463人となっています(202011月末)。ちなみに、公認会計士は、税理士登録をすれば税務業務ができます。

 

 

 

公認会計士の試験の仕組み

 

 

 

皆さんの中には、公認会計士になりたいと考えている人もいると思います。公認会計士の試験についてもう少し説明します(コロナ禍以前のものになります)。短答式試験は年2回、12⽉と5⽉にあります。4科目と言いましたが、「財務諸表論」、「管理会計論」、「監査論」、「企業法」になります。論⽂式試験は、年1回、8⽉です。科目は、「会計学(財務会計論・管理会計論)」、「監査論」、「企業法」、「租税法」と、「経営学」「経済学」「民法」「統計学」の中から1科目を選択します。ここまでが公認会計士試験ですが、合格しても、実際に公認会計士として登録するためには、もうひとつのハードルがあります。年1回、12月に実施される修了考査です。これには、監査法人などで2年間の実務経験を積むことと、実務補修所で必要単位を取得しなければなりません。試験は5科目で、A3サイズで20Pくらいある問題を、二日間12時間くらいかけて解きつづけるというとてもハードなものです。この修了考査に合格した人がようやく、公認会計士として働くことができます。公認会計⼠試験は、学歴や年齢に関係なく受験可能です。例えば、医師になるなら医学部に、弁護⼠になるためには法科大学院に通って学びますが、公認会計士試験は受験要件を得るのにコストがかからないのです。ですから16歳で合格した高校生もいますし、60代で合格する人もいます。ここ10数年の合格者の推移グラフを見ていただきますが、受験者が2万5千人以上いた年もあるかと思えば(2010年)、1万人ちょっとの年もあります(2015年)。合格率も、19.3%(2007年)から6.5%(2011年)と変動が大きい。合格者数も、2007年には4千人以上いましたが、2015年には1千人ちょっと。昨年(2019年)は1,337人でした。これは公認会計士界の人手の需給バランスの変動によるもので、私が勉強をはじめた2008年には17.1%だった合格率が、合格した年2011年には6.5%。苦労するはずです(笑)。公認会計士をめざす人は、こうしたデータをチェックしてみてください。また、はじめから公認会計士をめざさなくても、簿記を勉強するうちに面白いなと感じて、公認会計士にチャレンジしたくなる人もいると思います。いずれにしても簿記の勉強は、将来必ず役にたちます。どんな分野に進んでも、それは間違いありません。

 

 

 

財務諸表監査の流れ

 

 

 

2011年の11月に晴れて公認会計士になった私ですが、その年は東日本大震災があった年で、日本経済は厳しい状況でした。監査法人に就職したかったのですが、希望する求人がありませんでした。そこで私は、ある地方銀行に入行しました。そこで2年半くらい融資の審査の部署で働いたのですが、2014年の秋に、富山にある中堅の監査法人に入ることができました。31歳。商大を出てから9年かけて、私はようやく自分で納得する職業に就くことができました。もっと早く決断して勉強を始めていれば、とまた「後悔」しました(笑)。そこで実務経験を積んで、修了考査に合格したのが20161月。その年の6月に、いまの勤務先である「あずさ監査法人」に転社しました。勤務は札幌事務所です。監査は公認会計士一人でできますが、大規模な企業の財務書類を監査するには一人ではとても足りません。そのような監査に対応するため監査法⼈という組織があります。監査法人とは、公認会計士法にもとづいて、会計監査を目的として設⽴される法人です(公認会計⼠が5⼈以上必要)。監査法人の規模は、千人単位で公認会計士がいる大手から、5、6名のところまでさまざまで、全国に250社くらいあります。いわゆるBIG4と呼ばれる大手が、「EY新⽇本有限責任監査法⼈」、「有限責任監査法⼈トーマツ」、「PwCあらた監査法人」、そして私が所属する「有限責任あずさ監査法人」です。あずさには全国で3千人ほどの公認会計士が働いています。監査法人の職階(職務上の階級)は4段階あって、まず新人は「スタッフ」。次に現場を束ねる「シニア」(現在の私です)、それから中間管理職で顧客の幹部と関係をつくる「マネージャー」。そして監査の全責任を負い、監査法人の経営に関わる「パートナー」となります。監査の流れを、一般的な3月決算の企業を題材に簡単に説明しましょう。まず前年の7月あたりに監査の契約を結びます。それから「監査計画を策定」して、「期中監査」に入ります。企業は月ごとに会計を締めますが、そのデータを受け取って、取引の数字をつかみ、取引がルール通りに行われているかといった内部統制の評価などを行います。このデータのやり取りはいまはデジタルファイルで行いますから、分析の仕事はテレワークに向いています。3月にはいよいよ「期末監査」です。債権など残⾼の確認や、帳簿の数字と実際が正しく合っているかを確認して、すべての現金を数えたりします。債権残高の確認では、取引先の企業群に封書で問い合わせて回答をもらいます。それから大変なのが、在庫の棚卸しに立ち会うことです。企業がもっている商品・製品や材料などが、帳簿と照らし合わせながら実際にあるかを確認するのです。札幌本社でも道外に拠点を持つ企業ではそこまで出向きます。例えば本州の山あいの旅館で、生け簀で泳いでいる魚を数えたことがありました(ふつうの物品だと付箋を貼りながらカウントしますが、生け簀の魚ではそうはいきません)。あるいはマイナス30℃の冷凍倉庫の中でひたすらマグロを数えたり、鉄道会社だと保線用のレールを数えたり、印刷会社で膨大な紙を数えたり、といったことです。3月末には日本中の公認会計士が出張先で奮闘していると思ってください(笑)。そうした調査の結果を踏まえて担当の公認会計士が「意見形成」を行い、担当以外の者も含めた「意見審査」。そして5月中ごろに監査報告書を取締役会などに提出します。

 

 

 

かつて東京に憧れた意識の変化

 

 

 

公認会計士試験に合格した年、監査法人に就職したかったけれどかなわず、まず地銀に入行した、と言いました。このとき私は、いま思えば得がたい経験をしました。銀行では新卒はまず営業の最前線でキャリアをスタートさせますが、いささか寄り道をして資格を持っていた私は、融資の本部審査をする部署に配属されました。銀行の営業マンは定期的に客先を訪問して、融資を求められれば、経営相談や改善計画をいっしょに練り上げます。融資した資金を確実に返済できるかどうか財務分析をしたり、担保や保証の有無などを調整するわけです。そうして店内の審査を通ってきた稟議書を審査するのが私の仕事でした。つまり現場と距離を置いているので、顧客と深くコミュニケーションを取って背景や状況から深く思考するのではなく、あくまで上がってくる数字を見る毎日でした。あるとき、老舗の酒蔵への融資案件がありました。そこは数年業績が悪く先行きも不透明でした。ですから私は、融資はせず、この際これまでの資金を回収すべきです、と上司に進言しました。すると、たいへんな剣幕で怒られたのです。君の判断は、この老舗企業の息の根を止めてしまう。そのことがちゃんと想像できるのか?数字の向こうにある歴史や人間の顔をちゃんと見ろ、経営者の人柄、家族、後継者、社員とその家族、取引先のことも考えろ、と。それまでの自分にはない世界の本質にふれたような気がしました。しかし銀行では、公認会計士の資格は直接にはあまり役に立ちませんでした。同じ期に合格した連中は、もう監査の現場に立っているのに、という焦りもありました。そこで伝手を頼って、富山の中規模の監査法人に転職したのでした。そこで1年半ほど実務経験を積んで公認会計士登録ができたのですが、やがて公認会計士の仕事もまた、単に数字を見ているだけではダメなんだ、と実感します。監査は、結果としての数字ではなく、その企業の事業全体を見すえなければなりません。そのためには、いろいろな人とコミュニケーションを取って話を聞き出すことが重要です。監査のことを英語で「audit」と言いますが、「audi」は「音」とか「聴く」に深く関わる接頭辞です。audioとかaudience(聴衆)のaudiですね。だからここで必要なコミュニケーション力とは、愛想良く楽しい雰囲気を作ること、ではなく、人から話を自然に聞き出す力です。質問力と理解力が問われます。例えばクライアントの経理担当者に帳簿上のミスを指摘する場合、ズバッとそれを言うと態度を一変させてしまう人もいます。向こうにもプロのプライドがあるわけです。ですからその間違いの背景や、改善方法までを見渡しながら話を進める必要があります。仕事をしながら私はだんだん富山の人や風土が好きになっていきました。その土地で古くから営まれてきたさまざまな経済活動に、公認会計士の立場で深く関わることができることに充実感を覚えました。思えば最初の会社の東京勤務で東京のエネルギーにふれて、東京で働きたい、と思ったのが私の転職と社会人キャリアの大きな転機でした。でも富山を経験して、私は思いました。自分の知見や技能をもって、ふるさとである北海道をあらためて見てみたい、と。北海道に貢献するような気持ちを持って、北海道で働いてみたい—。そうしていま私は、大手監査法人の札幌事務所で働いています。富山の会社を離れるとき、上司が飲みながらこう言ってくれました。「遠くを見ても何もないぞ。近くからコツコツがんばれ」。その通りだな、と思います。遠くを意識することは必要ですが、もっと大切なのは、目の前のことに着実に取り組んで行くことなのです。今回の講義の準備をしながら、まだ40歳前の身ですが、自分のキャリアをあらためて振り返ることができ、さまざまなことを考えました。良い機会をくださって、母校にはほんとうに感謝しています。自分はまだまだ発展途上ですが、より信頼される公認会計士として、これから精進していきたいと思っています。就活や転職や資格をめぐって、私にはいくつもの「後悔」がありました。どうぞ皆さんは私のこの「後悔」を参考にしてください。今日の話を聞いて公認会計士に少しでも興味を持ってくれれば、うれしい限りです。コミュニケーション力のことを言いましたが、人と話をするのが好きだったり、相手のことを思いやる気持ちの強い人は、公認会計士に向いていると思います。公認会計士の世界は、いつでも皆さんを歓迎します。ぜひチャレンジしてみてください。

 

 

 

<寺西 正道さんへの質問>担当教員より

 

 

 

Q 公認会計士は「資本市場の番人」であるとおっしゃいました。お仕事の中でやりがいや社会的使命を実感したエピソードなどをお教えていただけますか?

 

 

A 守秘義務があるのであまりリアルな話はできないのですが、公認会計士はクライアントから、毛嫌いされることもある存在です。ある企業とのおつき合いがはじまって最初に訪問したとき、担当の方に経理上のミスを指摘したのですが、ずいぶん気を悪くされたようで、こちらの質問にも素っ気ない答えしか返ってきません。関係改善のために次の訪問ではいろいろな話をして信頼を得ようと努めました。それを何度か繰り返すうちに、迎えてくれる担当の人数も増えて、さまざまな話を本音でできるようになりました。自分の信頼度が上がってきたのがわかって、うれしかったですね。

 

 

 

Q 大企業の不正会計がスキャンダルとして報道されることがあります。公認会計士も共犯ではないのか、と思う人もいるでしょう。公認会計士の職業倫理や責任についてはどのようにお考えですか?

 

 

A 監査の目的な不正の摘発ではなく、あくまで財務情報に対する保証です。しかし、社会は監査に不正の摘発を期待しています。このように、社会の監査に対する期待と、監査法人が実際に行う監査の内容にギャップ(Expectation Gap)があることは、私たちのあいだでもつねに議論されています。監査法人の仕事は、財務諸表を利用するすべての人のためにあるわけですから、さらなる信頼づくりのために、ルールの厳格化も進められています。

 

 

 

Q 職業としての公認会計士の魅力をあらためて聞かせてください。

 

 

A 私はいま札幌で10社ほどを担当していますが、財務を通して企業の中味をまるごと見渡すことができるのは、ほかの職業ではあり得ないことだと思います。また経営者や幹部の皆さんと業務や経済をめぐって深い話を日常的に行っていることも、年齢の割には得がたい経験です。こうした日々が自分を成長させてくれていると感じています。私は寄り道したあとでこの世界に入りましたが、こうしたことを20代のうちからやっている後輩などを見ると、その思いを深くします。

 

 

 

 

<寺西 正道さんへの質問>学生より

 

 

 

Q 公認会計士になるためにはどのくらいの勉強が必要でしょうか? また、勉強へのモチベーションを保つために意識したことがあれば教えてください。

 

 

A 一般には、総量として3千〜4千時間と言われています。1日びっちり8時間を365日休まず繰り返しても3千時間に届きませんから、それくらいのイメージを持ってください。私はずいぶん遅いスタートでしたが、例えば大学1年から真剣に始めれば3年生で資格を得ることも可能です。そういう人は非常勤扱いで監査法人で仕事をすることもできて、学生の感覚だとびっくりするくらいの給料がもらえるでしょう。勉強へのモチベーションについては、前の会社を辞めて取り組んだ私は、退路がないのでとにかくやるしかありませんでした。モチベーションが上がらないなぁ、などどと悩む余裕はなかったのです(笑)。

 

 

 

Q なぜ公認会計士を志望したのでしょうか? 安定した会社を辞めて公認会計士をめざそうと決断するのは、どんなお気持ちだったでしょうか?

 

 

A 商大を出て漁協の経済連合会に入り、東京支店では数字を扱う仕事をしていました。東京のエネルギーを全身で受けて、自分の腕一本で生きていける仕事に就こうと決めたとき、そこからできることを考える中で、公認会計士という選択肢が浮かびました。つまり、まったく新たなことを始めるのではなく、受験の制限もない。資格を得て就職すれば、生活や人生設計が余裕を持って立てられる。そのころ商大の後輩(準硬式野球部)が公認会計士になって、いろいろ話を聞いたことも背中を押しました。

 

 

 

Q 寺西さんが考える、いい会社の見つけ方、見分け方がありますか? これからの就活のために教えてください。

 

 

A 私は財務諸表から企業を見るのが仕事ですから、まず企業の財務を調べてみましょう、というのが第一の答えになります。それに加えて、私ははじめての会社を訪問するとき、オフィスのエントランスやトイレ、備品などに目がいきます。トイレがキレイで備品類がていねいに扱われている会社は、働く人たちの表情も活き活きしているものです。コロナ禍で企業に出向くことも難しい日々ではありますが、機会があればそんなことを気にしてみてください。

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