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エバーグリーンからのお知らせ

2014.10.29

平成26年度第4回講義:「北海道を世界に売り込め!地方テレビ局の挑戦」

講義概要

・講 師: 沼田 博光 氏(昭和63年卒)

・現職等:北海道テレビ放送(株)営業局国際メディア事業部チーフマネージャー

・題 目:「北海道を世界に売り込め!地方テレビ局の挑戦」

・内 容:

<ローカルテレビ局を取り巻く現状>

・テレビ局は国(総務省)から放送免許を得て、その地域限定で放送事業を行う。

・スポンサーからのCMなど宣伝広告費が主な収入源だが、企業の広告費削減が続いている。

<講師の経歴・経験から>

・報道記者から始まり、情報番組、バラエティ、ドキュメンタリーなど番組制作に携わる。

・DVDのグッズ販売やキャラクタービジネスを通して映像の著作権や放送外収入のノウハウ。

・海外テレビ局やプロデューサーらとの番組共同製作。

<ローカルテレビ局の海外展開>

・海外テレビ局とのパートナー構築。

・北海道の情報を発信する番組を海外で放送することにより観光客を招くインバウンド事業、道産品を海外に輸出するアウトバンド事業を推進。

  • 講師紹介

卒業後、北海道テレビ放送(株)に入社し報道局に配属。情報番組やドキュメンタリー番組の制作にも関わる。その後、編成戦略局コンテンツ事業部部長、編成局プロデュース部部長を務め、現在は営業局国際メディア事業部チーフマネージャー。

 

北海道のために働きたいと、HTBへ

 

私は、大学時代は、演劇戦線(※小樽商大の演劇サークル)に所属していまして、応援団とJAZZ研も少々やっていました。卒業後は北海道のために働きたいと思い、札幌に本社のあるHTBを選びました。最終面接の時に、「演劇戦線にいたなら、芝居をやってください」と言われましたが「芝居というのは、お客さんがいて、役者がいて、箱があって、そのなかでひとつの世界を作るので、ここではできません」と答えたら、「じゃあ、好きなセリフは?」と聞かれて、それなら出来ますと披露したら、めでたくHTBへの入社が決まりました。はじめに、地方テレビ局とはどういうところかという話をします。日本にはテレビ局が129局あって、都道府県単位で内容が違います。管轄官庁の総務省から免許を与えられる決まりなので、HTBは北海道だけで放送が許されているわけです。基本的には、どの放送局も与えられたエリアだけで放送していますが、今はエリアを越えて放送しなければならない時代がやってきています。

 

報道記者としての経験から

 

入社してから、まず報道記者となりました。少し古い話ですが、1997年の11月に北海道拓殖銀行が破綻しました。一年かけて、北洋銀行に営業譲渡するわけですが、これから見せる映像は、「今日は拓銀が最後です」というニュースです。拓銀が破綻した日は、夜中に発生する事件や事故などをカバーするために会社に泊まっていて、もうすぐ朝9時で勤務終了という時に、ライバル局であるHBCが「拓銀破綻」のニュース速報を出しました。私はその時、経済キャップとして経済ニュースの責任者を務めていたのに破綻のことをまったく知らず、完全に「抜かれた」状況でしたがその後1年間取材を頑張りまして、「ニュースステーション」で大きな特集をしましたのでその映像をご覧ください。

 

(拓銀最後の1日を追った放送。拓銀本店前で沼田さんがリポートする、当時のニュース映像を放送)

 

スクープを抜かれた後、拓銀に取材を申し込んでも、広報の人から「一切、行員への取材はしないでほしい」と言われましたが、私は道内の約20支店の支店長へ「今は放送しませんので記録をさせてください。そして、営業が終わった日に放送させてください」と手紙を書きました。ほとんどが無視か、断るという返事でしたが、1つだけ取材を受けていただいたのが、当時の拓銀小樽支店の中松義治支店長でした。

 

(破綻後の拓銀小樽支店を追った映像を放送)

 

映像は破綻した半年後の様子で、この時期の拓殖銀行内の映像というのはどこのテレビ局も撮れませんでした。ただ、私どもHTBは、中松支店長が許可してくれたので撮影できたわけです。このとき「自分は誰にも迷惑をかけずにここまでやってきたし、自分の判断で決める」と言って取材を受けてくれた中松支店長は、現在の小樽市長ですね。その後、バラエティー番組の「おにぎりあたためますか」のプロデューサーもやりましたし、ドキュメンタリーの制作もしました。全ジャンルを担当したので、放送以外のこともやりなさいと、コンテンツ事業部にも配属となりました。グッズ販売、放送ライツ(権利)、キャラクタービジネスなどです。「水曜どうでしょう」のDVDを作ったり、onちゃんのぬいぐるみを販売したりしました。これも放送局にとって大事な収入源のひとつになっています。

 

 

国際共同制作とは何か

 

グッズや映像を売って、何を売ったらどれくらい収入があるのかがわかってきた頃に国際共同制作の部署に移りました。最初に言いましたが、北海道のテレビ局は国内の他の地域では放送できませんので海外に行くしかないんです。いくつか、海外のテレビ局と作った番組をご紹介します。

 

(カンボジアで活動する日本人女性教師の番組や、韓国のディレクターと共に東日本大震災の被災地を巡る番組を放送)

 

この田中千草さんという女性は、芦別で学校の先生をしていて、その後、青年海外協力隊に入り、カンボジアで小学校の先生になった方です。当時カンボジアには国語や算数の授業はあるものの音楽の授業がなく、楽器もなかったので、田中さんは日本の学校から使っていない楽器を送ってもらい、小さな音楽隊を作りました。ピアニカを前にして目をキラキラさせ、楽器が壊れるまで吹いているカンボジアの子どもの姿を見ると、幸せかどうかは心が決めるものであって、物質的な豊かさは関係ないんだと感じたそうで、「日本とカンボジアの子どもは、どちらが幸せかわからない」と言っていました。そんな思いを託して制作した番組は賞をいただきまして、ラスベガスで授賞式に出ました。

 

北海道のテレビ局が、海外に出ていく理由

 

道庁の資料によると、北海道の人口は、1997年の約570万人がピークで、2040年には419万人になると推計されています。さらに、生産年齢人口(15歳〜64歳)が減り、高齢者人口が増えていきます。北海道に残りたくても、なかなか仕事がないという現実が見えてきます。また、テレビ局にとっては、広告費の減少も大きな問題です。かつては1つのテレビ番組を家族みんなが見てくれて、そこに広告を出せばみんなが買ってくれた時代でしたが、今はインターネットへ広告費が流れています。4大媒体と言われる新聞、雑誌、テレビ、ラジオの広告費がどんどん減り、代わりに「プロモーションメディア広告」が増えてきました。これは、CMを出すのではなく、スーパーで「牛乳を飲んでくださいと配る」というようなやり方で、直接お客さんに働きかけてモノを売っていく手法です。そこで、私たちもこのプロモーション広告をやってみればいいのでは、と考えました。たとえば、イオンの大型ショッピングモールはタイやマレーシアなどアジアにも進出していて、そこで北海道の水産物や農産物を売ろうとしても、輸出する際に経費がかかり値段が割高になります。そこで、タイやマレーシアなど、現地のテレビ局を北海道に呼んできて、ホタテや味噌を作っているところを取材してもらい、「こんなに手間暇かけて安心安全に気を配って作っているから、多少値段は高いけれど美味しいんです。このホタテが、今ならタイのマックスバリューで販売していますよ」という番組を作って地元で放送してもらい、北海道のホタテをタイで買ってもらうよう働きかけました。これもプロモーション広告のひとつです。最近のHTBの取り組みを見てください。

 

(アジアでのHTBの取り組みについての映像を放送)

 

 

北海道の魅力を、海外に発信!

 

いろいろな番組を海外向けに制作しており、その中で特に戦略的に作っているのが「Love Hokkaido」という番組です。札幌在住の中国人男性(上海出身)と、カナダ人女性、HTBの局アナウンサーの3人が司会を務めています。去年2月の番組開始以来、シンガポール、中国、台湾、ベトナム、ペルー、カンボジア、ハワイで放送し、11月はインドネシア、12月にはタイでも放送が決まっています。シンガポールでは、全てのチャンネルの中で視聴率ナンバー1になり、中国(上海)では23時からと遅い時間帯の放送にもかかわらず、その日一日の中でもっとも視聴率が高い番組です。中国では、領土問題などの理由から、一度日本の番組を一切流さなくなりましたが、現在は、唯一この番組だけ中国で放送されています。年内には、日本のNHKにあたる北京放送でも放送されることになったので、一気に13億人にリーチできるようになります。道内をロケで回っていると、海外の旅行者の方から「番組見ているよ」と声をかけてもらえるようにもなりました。

 

(実際に、「Love Hokkaido」を放送)

 

ただ番組を流すのが目的ではなく、そこに北海道のいろいろな商品をちりばめておいて、取り寄せてみたい、北海道に行ったら買ってみようと思えるような番組を作っています。今、番組では「北海道ドリームクイズ」という企画をしています。「Love Hokkaido」を放送している国の視聴者の方を集めてオーディションし、5か国10人の勝利者を北海道へ招き、彼らと道内を周りながら番組を作るんです。

 

(オーディションの様子を放映)

 

地方のテレビ局ですら、こうやって海外に出ていろんなことをしていますから、皆さんはこれからどんな分野に進んでも、必ず外国と関わりを持つことになると思います。じつは、こう言いながら、私は英語があまり得意ではありませんが、自分の中に語れるものをしっかり持っていれば、相手もリスペクトしてくれてちゃんと会話が成立するものです。英語は手段であって目的ですから、日本語でしゃべることができないことを英語でなら話せるということはないわけです。語れるような経験や考えを持ってもらいたいし、英語を「話せる」ではなく「使える」ようにしてほしいです。英語じゃなくても中国語でも良いでしょう。海外に出ていく準備をしてほしいと思います。


【学生からの質問抜粋】


2年生女子:


事件報道などでは、当事者が話したくないことも突っ込んで話を聞かなければならない場面もあったと思いますが、つらかった経験などがあれば教えてください。


沼田さん:


嫌がる人にマイクを向けるのは、すごくツライことです。じつは、若いときに先輩記者に同じ質問をしたことがあって、先輩から「日本は法治国家なんだから、普通に生きている人が法を破った人間によって命の危険にさらされるということは絶対に許してはいけない。それがもしあった場合には、おまえがその被害者の怨念を背中にしょって、マイクを持っていくんだ。声なき人の声を代弁するんだから、お前の好き嫌いじゃないんだ」と言われましたね。

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