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エバーグリーンからのお知らせ

2014.11.05

平成26年度第5回講義:「会社の経営に関する失敗?中心の昔話〜リーダーを目指す皆さんに伝えたいこと〜」

講義概要

・講 師:黒川 博昭 氏(大学院アントレプレナーシップ専攻(OBS)在籍中)

・現職等:富士通(株)顧問/同社元代表取締役社長

・題 目:「会社の経営に関する失敗?中心の昔話〜リーダーを目指す皆さんに伝えたいこと〜」

・内 容:

(1)はじめに

 ・OBSで学んでいること

 ・皆さんの良さと・・・

(2)富士通での経験

 ・生涯システムエンジニアを目指していたが・・・

 ・突然、再建を任されて(社長経験)

 ・富士通の今

(3)社長を目指すならば。それには、

 ・学生時代の大切さ

 ・失敗と向き合う

 ・万事塞翁が馬

(4)まとめ

<私の読書の薦め>

○企業の話

 ・ジム・コリンズ:「ビジョナリーカンパニ―3 衰退の5段階」

○歴史の話

 ・司馬遷:「史記」その他中国の歴史

 ・塩野七生:「ローマ人の物語」

○リーダシップ(イギリスのパブリックスクール)

 ・池田潔:「自由と規律」

 

講師紹介

昭和42年 東京大学法学部卒業後、富士通信機製造株式会社(現 富士通)入社

システムエンジニアとしてソフトサービス部門に在職。

平成11年 取締役就任。

平成15年から代表取締役社長に就任し、平成20年に顧問となる。

平成26年6月に富士通を退社するが、引き続き顧問を務める。

また、平成25年より、小樽商科大学ビジネススクール10期生として現在も通学中。

 

はじめに、伝えたいこと

 

私は、会社が倒れそうな時に社長を引き受けました。異常な経験でしたが、その状況だからこそわかったこと、気づいたことなどがたくさんありました。今日はそんな話をいたします。はじめに、学生時代をとにかく大事にしてほしいと思っています。学生時代、一番大事なことは、友達を作るということです。どんな時でも話を聞いてくれる、自分を理解してくれる友達を作ってもらいたい。それから、失敗と向き合う勇気を持つことも大事です。その訓練として、話すときに人の目を見て話すことを心がけてほしい。人の目を見て話すのは勇気がいりますが、それができないようでは、社会人になった時にたいした仕事ができません。もう1つは、「万事塞翁が馬」という中国のことわざの通り、人生にはいい時も悪い時もあります。いい時は適度に喜び、悪い時はそんなに落ち込まないでください。

 

初めて見たコンピュータに惹かれて富士通へ

 

法学部出身者がコンピューターの仕事を選んだことは、不思議に思われるかもしれません。大学4年の夏休みに、先輩から「富士通という会社があるから見に来ないか」と誘われて、生まれて初めてコンピューターというものを見て感激し、すぐにこの仕事がしたいと思いました。システムエンジニア(以下SE)を志望し、会社に入ってからシステムやプログラムのことを教わりました。ただ、当時は厚さ10センチくらいのマニュアルを読めば、お客さんに対してアドバンテージをとれる時代でしたが、今なら自分の背の高さくらいのマニュアルを読まなければダメでしょう。それほど、ITの世界は進みました。そのままSEのままで一生を終えたいと思っていたのですが、突然、2003年社長に就任することになりました。

 

富士通創業時の理念

 

富士通は、1935年に電話事業から始まり、現在はソーシャルイノベーションというソフトサービスが主体の企業です。国内でのシェアは高いものの、世界ではまだまだの状況です。富士通の創業時の理念は、「慣れた仕事に油断せず、お客さんの心を自分の心として、研究心を旺盛に」でした。「お客様に売るのは、機械ではなく信頼だ」「失敗を隠さず、失敗に学ぶ」「とにかくまじめに粘り強くやる」というポリシーをもった、非常に「泥臭い会社」だったと言えるでしょう。

 

業績不振のなかでの社長就任

 

コンピューターや通信システムで日本のトップグループの富士通が、2001年に営業利益が赤字となり巨額の特別損失を出す状況になりました。翌2002年はなんとか営業利益は持ち直しましたが、特別損失・当期純利益ともにマイナスで、当時「富士通はもうつぶれるのでは」と言われていました。私はその直後の、2003年から2007年度の社長を務めました。ITバブルが崩壊したことが発端で、富士通の持っていた問題が露呈しました。経営の基本を軽視していたこと、目標管理制度の悪影響も出ていました。役員も部長も自部門のことで精いっぱいで、ベンチマークの欠如、他社比較もせず、全体的に数字以外の感度が低下していました。これらの問題は口では伝わりません。私は「現場・現物・現状」の情報共有にこだわりました。

 

時間との勝負のなかで、どう利益を出すのか

 

社長就任1年後、2004年5月には、「強い会社を目指す」、「確実な利益成長を実現していく」、「技術や商品でリーダーシップを取る」、「マネージメント力を持つ会社に」と目標を決め、そのために4つのチャレンジを行いました。1つは、「既存ビジネスの徹底した体質強化」です。皆さんは、「利益を出すなら、新しい商品を作って売ればいい」と考えるかもしれませんが、新しい商品を作るというのは非常に大変なのです。アイディアを出して検討し、具体化してそれを製品にして売る。その後にお金を回収するのですから、利益が出るまでにものすごく時間がかかるのです。富士通はどん底の状態で、いつ再生機構に入って整理されるかという時でしたので、時間が勝負でした。だから、通常の「売上-原価=利益」という考え方でなく、「売上-利益=原価」という考え方、行動にしました。利益を固定費と考えて原価を下げ、事業スピードを上げることに集中しました。

 

 

とにかく「現場・現物・現実」を大事にする

 

富士通のコールセンターのシステムを利用いただいている、あるインターネットサービス業の社長が、コールセンタ―に集まるすべてのクレームを見ておられると聞きました。ネットで商売では、コールセンター、クレームが現場です。ネット商売だからといって、現場がない、お客様がないと考えたら大間違いです。小樽商大のみなさんを見ていると、すぐにネットで調べますね。私もそうです。しかし、ネットにも真実はあるでしょうが、「人間相手のビジネスなら、現場に行かないとダメだ」とOBSの仲間には言っています。ぜひ、現場・現物・現実を大事にしてください。

 

基本の徹底が変化を生み出す

 

2003年から、一番大事にしたのが「意識行動改革」です。そして、基本の徹底、お客様起点、スピード、納期、品質、コスト、プロダクト部門を復活させる、工場を再生する、チームでやるということだけです。これで、製造部門の生産性は2年で2倍になり、あっという間に目標を達成しました。HDDの開発スピードの話です。他社より開発が4か月遅れて190万台しか売れなかったのが、2か月遅れになると280万台、1か月遅れだと700万台、同時に開発した時は1130万台も売れたのです。これが、「TIME TO MARKET」(製品化するまでに要する時間)の重要性です。これからの事業では「時間」が大事で、一瞬の遅れによって、あっという間に商売を失ってします。HDDの例では月単位の話でしたが、今はもっとスピードがあがっているでしょう。

 

ITからビジネスソリューションへ

 

社長として、最後の年であった2007年は、「成長とリターンを拡大する」、「ITソリューションからビジネスソリューションへシフトする」と計画をたてました。大事なことは、たとえば、富士通は「お客さまのお客さま」のことを考えて仕事をするというのが、本当のビジネスと言ってまわりました。みなさんも、B to Bの会社に入ったら、直接のお客さんは勿論ですが「お客さまのお客さま」に関心をもたなければ良い仕事はできません。富士通は、もっとお客様の視点から考えて仕事をするべきだったと気づき、2007年にはフィールドイノベーションチームを作りました。お客様の問題を洗い出して議論し、それを提案していくチームです。ITソリューションからビジネスソリューションを目指す形を作りました。

 

時代の流れのなかで、何を大切にするか

 

私は社長の時、入社式で「人の寿命は80年に伸びたが、会社の寿命は30年、さらに技術の寿命は5年か10年だ」と話していました。私が入社した時代から約50年の間に、メインフレームの時代からミニコンになり、パソコンが普及し、インターネットの時代に変わっていきました。そのような速い流れのなかで、何を大切にしたらいいのか。一つは、トヨタの人たちがよく言っている「見たか、何故だ?」を行動の基本にすることです。現場で何かが起きた時に、「伝聞で報告するのではなく、現場や起きたことを実際に見てきなさい」というトヨタマネージメントの基本の1つですが、大変重要と思います。。

 

自分を陳腐化させない

 

経営で一番の問題は「人は陳腐化する」ということです。入社後10年、20年と時は流れますが、きちんと刺激を与えて訓練をしなければ、人は成長を続けられません。人の周りはどんどん変化していくので、人の成長が止まった途端に人は陳腐化します。機械なら取り換えればいいですが、皆さんは取り替えられたくはないですよね?富士通では、お客さましっかりと観察することで変化を見つけるように心がけました。お客さまは、自分たちより人数も多くて賢いのだからので、我々だけで考えるより多くのビジネスチャンスを発見できます。だからお客様起点で考えて行動を続けるのです。

 

最後に伝えたいこと

 

学生時代にぜひスペシャリティを持ってください。会計関係の資格を取るとか、何でも持ってください。そのスペシャリティをベースにして、新しい環境で自分を伸ばしていくのです。そして、失敗と向き合う勇気を持つことです。人の目を見て話を聞き、話をする、というのは結構勇気が要りますが、これも訓練です。この勇気には、正直さ、まじめさも含まれます。日ごろから心がけていればできるようになります。そして、この世の中には、良いことも悪いこともある、「万事塞翁が馬」なのです。したがって、大事なことはくよくよしないで、顔を上げて前を向いて歩いていくということです。


<質問抜粋>


学生に対する読書のすすめとして、何か教えてください。


「自由と規律」はイギリス貴族の学校の話ですが、普段社会で大事にされている人は、国家が危機にある時は先頭に立って戦うものだという内容です。高校時代に先生に勧められて読みました。社長時代もそれが念頭にあり、役員にも「普段みんなにチヤホヤされているのに、なぜ会社の危急存亡の時、先頭に立ち責任を果たさないんだ」と言っていました。「ローマ人の物語」は、ローマ帝国がどういう風にできて、勢力を広げ、滅んでいくかが描かれていますが、会社も同じです。経営の本を読まなくても、人間にとって何が大事なのか、何を大事にしていかなくてはいけないのかということがよくわかります。また「史記」も中国の歴史が描かれています。ぜひ社長の教養として読んでおくことを勧めます。


(文責)黒川博昭

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