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教員インタビュー 田中晋矢教授

  • 計量経済学
  • 経済学入門Ⅱ
  • 統計学
  • 研究指導(ゼミ)

田中 晋矢 教授
TANAKA Shinya


膨大な数と情報量をもつ金融・経済データに関する実証研究及び理論研究を行っています。

私の研究分野は計量経済学と呼ばれるもので、統計理論を駆使して、さまざまな経済問題を分析する学問です。計量経済学の扱う範囲は非常に広いものですが、私は「大規模」なマクロ経済あるいは金融に関する統計データを用いた実証研究、そしてこれらの分析に必要な統計手法に関する理論研究の両方を行っています。ここで「大規模データ」とは、いわゆるビッグデータ、すなわち膨大な数・情報量を有するデータのことを意味します。

私が現在取り組んでいる研究は、数千種におよぶ株式に関する大規模データから、リスク・リターンの両面を考慮したうえで、もっとも合理的なポートフォリオ(株式の組み合わせ)を構成する方法を考察するというものです。数十程度の小規模株式データを用いる場合においては、効率的なポートフォリオを構成するための標準的な方法がありますが、大規模データではこの方法を利用できません。

このため、理論・実証の両面から妥当性のある新しいポートフォリオ構成方法の確立に取り組んでいます。

このほか、大規模なマクロ経済データを用いて、最も重要な経済指標であるGDPを、いかに正確にかつ早く予測できるかという研究も行っています。

計量経済学の魅力・おもしろさは、経済に関する「医者」のような役割を担えることだと思います。

計量経済学に興味を持ったきっかけは高校時代に遡ります。私の出身高校では全国でも珍しく3年次に卒業研究を行うことが義務付けられていたのですが、研究テーマを模索している際に懇意にして頂いていた先生から「ポートフォリオ選択問題について研究してみたらどうだ」とアドバイスを受けました。当時はポートフォリオ選択問題について全く知識がありませんでしたが、元々金融・経済に関心が強かった私はポートフォリオ選択問題を研究テーマにすることを決め、研究に没頭しました。その過程でポートフォリオ選択理論は経済学・金融論そして統計学がベースになっていることを知り、自然な流れで計量経済学を大学及び大学院での研究分野とすることにしました。

少し回り道をしましたが前述の通り、今の研究内容がポートフォリオ選択に関するものであることについて、運命的なものを感じます。計量経済学の魅力・おもしろさは、精緻な数学を用いて記述される経済モデルが現実経済と照らし合わせて整合的であるかを検証することや、あるいはデータ分析結果をもとに経済の状態を「診断」し、問題があればその「治療法」を検討・提案することができる、いわゆる経済に関する「医者」のような役割を担えることだと思います。

計量経済学は地域社会・地域経済も研究対象であり、これらと密接にかかわっています。

上述のとおり計量経済学は、様々な経済問題を対象として定量的な分析を行うものです。そのため、計量経済学の研究において、実証分析は、常に現実社会(経済)とのつながりがあり、また、理論分析においても、そのつながりが意識されているといえるでしょう。

計量経済学を用いることで、地域経済の連動性や波及効果を検証・計測することが可能です。

例えば東京都の景気が良く(悪く)なるとそれと連動して北海道の景気も良く(悪く)なるのかどうか、もし連動性がみられるのであれば、どの程度の時間的な遅れをもつのかということを統計学的に検証したり、北海道新幹線を札幌まで延伸させることは北海道経済にどれだけの経済効果をもたらすのか、そしてこれが道外の都府県へどの程度の規模の波及的な経済効果をもたらすのか、といった試算を行うことが可能となります。

文系理系問わず統計データ分析スキルは現代では「読み・書き・そろばん」と同様に必須です

大学生の皆さんにとっては計量経済学を学ぶことは、統計データ分析の方法を学ぶことと同義といってよいでしょう。統計データ分析というとその数理的な響きから理系学生が対象のものであり、文系学生にとっては無縁無用のものと思われている人も多いかもしれません。しかしながら、現代においては文理問わず統計データ分析スキルを学生時代に身につけておくべきです。なぜなら統計データ分析スキルを有することで、世の中の様々な事象を、「客観的」かつ「冷静」に見つめることができるからです。

例えばあなたがある住宅の購入を検討しているとします。住宅営業担当者はその住宅をお買い得であるとして購入を勧めますが、本当にそうでしょうか。統計データ分析スキルがない場合には、他人のアドバイスに依存して良し悪しを判断するしかありません。一方で統計データ分析スキルを持っていれば、マクロ経済や不動産関連のデータを用いて、自らの力でその住宅価格が適正か否かを判断することができるでしょう。

文系の自分が実際にそんなことができるようになるのかと思うかもしれませんが、最近は統計データ分析ソフトウェアが著しく進化してきており、文系学生でも十分に実践的な統計データ分析が可能です。もちろんそのためには十分な専門知識を有する教員による適切な教育・指導が不可欠ですが、小樽商科大学ではそのような優秀スタッフが揃っていると自負しています。

高いモチベーションと志を持つ皆さん、私のゼミで統計データ分析に没頭しましょう

私の担当するゼミナールでは「実践的統計データ分析」をテーマとし、3年次に3~4人からなる小グループ単位でのグループ研究、4年次に3年次でのグループ研究の経験を生かした個別の卒業研究を行っています。グループ研究・卒業研究はどちらも研究テーマは自由であり、例えば実績として「小樽市にカジノを誘致した場合の経済効果の分析」や、「消費者ニーズに合った売れるバニラアイスの提案」といった「経済・マーケティング」に関するものから、「アイドルグループの歌詞に関する統計分析」や「失恋につながる要因の統計分析」といったものまで、研究テーマは非常にバラエティに富んでいます。

このように、身近な疑問からマクロ経済に至るまで制約なく自分の興味のある研究を行えるというのが、当ゼミの魅力だと思います。また、当ゼミにおいては、グループ研究・卒業研究ともに、積極的に学内外の様々なコンペティションに応募してもらうことにしており、今までに学内コンペティションにおける多数の受賞、また、学外でのコンペティションについても総務省統計局など4団体が毎年共催している「統計データ分析コンペティション」での受賞(審査員奨励賞)実績があります。

ゼミ生の卒業後の進路については、業種としては「IT系」が最も多いですが、金融、コンサル、エンタメ、メーカー、公務員など多岐にわたっています。私はゼミ生たちに「このゼミに入って本当に良かった」と思ってもらえるようなゼミ作りを目指していますし、そのために自分の持てる力を全て投入する覚悟でゼミを運営しています。高いモチベーションと志を持った皆さんとゼミ活動を一緒に行うことができれば本当に嬉しく思います。


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