- <担当科目>
- 基礎ゼミナール、総合科目(社会調査とデータ活用)、OBSプレ科目(アカデミック・ライティングの基礎)
田島 貴裕教授
Tajima Takahiro
教育の質保証を担保する
FD(ファカルティ・デベロップメント)専任教員として、小樽商科大学の「教育の質保証」を担当しています。文部科学省によれば、FDとは「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称」です。現在の大学ではFDの実施や三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)の策定と履行、第三者機関による認証評価の受審などが義務化されており、「教育の質保証」に対して確実な取り組みが求められています。私は教育工学という研究分野から本学の「教育の質保証」へアプローチしています。
教育工学は、人文科学、社会科学、理工学など、様々な分野から教育改善や教育問題を実際に解決していこうとする学際的な分野です。例えば、学習効果を高めるために新しい手法・技術を活用した教育実践、教育手法や学習教材、教育プログラムの開発、学習環境のデザインや改善、教育効果の検証など、研究対象は非常に多岐にわたります。経験や勘のみに頼る教育ではなく、客観的・体系的に検証された再現性のある教育を目指す研究分野であり、教育を科学的に考える学問ともいえます。
このような観点から大学教育の質保証を検証していますが、個人としては遠隔教育、情報教育、理科教育を対象とした教材開発や教育効果についても研究を行っています(写真は2023年に開発したプログラミング教材です)。
教育工学は、人文科学、社会科学、理工学など、様々な分野から教育改善や教育問題を実際に解決していこうとする学際的な分野です。例えば、学習効果を高めるために新しい手法・技術を活用した教育実践、教育手法や学習教材、教育プログラムの開発、学習環境のデザインや改善、教育効果の検証など、研究対象は非常に多岐にわたります。経験や勘のみに頼る教育ではなく、客観的・体系的に検証された再現性のある教育を目指す研究分野であり、教育を科学的に考える学問ともいえます。
このような観点から大学教育の質保証を検証していますが、個人としては遠隔教育、情報教育、理科教育を対象とした教材開発や教育効果についても研究を行っています(写真は2023年に開発したプログラミング教材です)。
“遠隔教育”か、遠隔“教育”か
もともと、理系学部で実験や分析に従事し、理科教材開発などを行っていましたが、インターネットや情報技術の発展に伴い、ICTを活用した教材や教育効果にも関心を抱くようになりました。特に、「いつでも、どこでも、誰でも」学ぶことができるeラーニングを活用すれば、苦手意識を持つ人が多い理科を効果的に学習できるのではないかと考えたことが、「(広い意味での)遠隔教育」へ関心を持ったきっかけとなりました。
遠隔教育研究の中でも、私は「遠隔教育(Distance Education)」と「遠隔“教育”(Education at a distance)」の違いについて興味を持っています。前者は“伝統的な教育とは異なる教育形態”を意味し、後者は“伝統的な教育の延長である教育形態”であって、従来と同じ教育をたまたま遠隔で行ったものと解釈されます。一見すると大きな違いが無いように感じられますが、制度上は明確に区別されています。身近な例としては、2020年のコロナ禍で多くの大学が導入した「オンライン授業」の扱いが挙げられます。
現在、日本の大学におけるオンライン授業の上限は、卒業要件として60単位が上限となっています。“伝統的な対面授業”と異なり、豊かな人間性の涵養や実験・実習科目の履修が十分に担保することが難しいとされているからです。一方で、オンライン授業(メディア授業)のみで卒業できる通信制大学(大学通信教育)は、すでに2000年代から存在しています。学校教育法にある「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させる」という目的を達成できると認められているからです。
「“オンライン授業”か、オンライン“授業”か」「“通信制大学”か、通信制“大学”か」といった問いは、大学教育の質保証を考えるうえで、非常に重要で興味深い論点であると考えています。
遠隔教育研究の中でも、私は「遠隔教育(Distance Education)」と「遠隔“教育”(Education at a distance)」の違いについて興味を持っています。前者は“伝統的な教育とは異なる教育形態”を意味し、後者は“伝統的な教育の延長である教育形態”であって、従来と同じ教育をたまたま遠隔で行ったものと解釈されます。一見すると大きな違いが無いように感じられますが、制度上は明確に区別されています。身近な例としては、2020年のコロナ禍で多くの大学が導入した「オンライン授業」の扱いが挙げられます。
現在、日本の大学におけるオンライン授業の上限は、卒業要件として60単位が上限となっています。“伝統的な対面授業”と異なり、豊かな人間性の涵養や実験・実習科目の履修が十分に担保することが難しいとされているからです。一方で、オンライン授業(メディア授業)のみで卒業できる通信制大学(大学通信教育)は、すでに2000年代から存在しています。学校教育法にある「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させる」という目的を達成できると認められているからです。
「“オンライン授業”か、オンライン“授業”か」「“通信制大学”か、通信制“大学”か」といった問いは、大学教育の質保証を考えるうえで、非常に重要で興味深い論点であると考えています。
開かれた教育を目指して
本学は、「2030年までに高等教育に触れられない道民の数をゼロにする」ことを目標に、ユニバーサル・ユニバーシティ構想を推進しています。この構想は、居住地で教育の質が左右されることなく、教育を受けたいすべての人に学びの場を提供するプロジェクトです。広大な北海道において、「いつでも、どこでも、誰でも」教育を受けられる環境を構築するためには、遠隔教育の理論と技術が有効だと考えています。
遠隔教育の最大の課題は、教員と学生との間における地理的、時間的、心理的な「へだたり」をいかに克服するかという点にあります。大学から離れていても、自分のペースで孤立せずに継続的に学ぶためには、あたかも教員と対話するような教材や学習環境が求められます。すなわち、単なる知識伝達型の授業教材にとどまらず、思考力や学習意欲を高める教育環境の構築が必要です。また、他の学生との交流機会を確保することも重要です。
近年では、動画の配信や視聴が簡単にできるようになり、オンライン上の様々なコミュニケーションツールも普及するなど、遠隔教育における学習環境は大きく進展しました。さらに、生成AIの発展と普及によって、今後は一層充実した教育環境の実現が期待されます。私自身も、AIを活用した自学自習用教材の開発を進めており、ユニバーサルユニバーシティ構想への貢献を目指して取り組んでいるところです。
遠隔教育の最大の課題は、教員と学生との間における地理的、時間的、心理的な「へだたり」をいかに克服するかという点にあります。大学から離れていても、自分のペースで孤立せずに継続的に学ぶためには、あたかも教員と対話するような教材や学習環境が求められます。すなわち、単なる知識伝達型の授業教材にとどまらず、思考力や学習意欲を高める教育環境の構築が必要です。また、他の学生との交流機会を確保することも重要です。
近年では、動画の配信や視聴が簡単にできるようになり、オンライン上の様々なコミュニケーションツールも普及するなど、遠隔教育における学習環境は大きく進展しました。さらに、生成AIの発展と普及によって、今後は一層充実した教育環境の実現が期待されます。私自身も、AIを活用した自学自習用教材の開発を進めており、ユニバーサルユニバーシティ構想への貢献を目指して取り組んでいるところです。
商大生に必要なアカデミック・リテラシー
本学の名誉教授である奥田先生と一緒に、2024年に「新入生のためのアカデミック・リテラシー:一から分かるレポートの書き方」を刊行しました。この手の書籍は、著名な方によるものや、昔からの定番も多数あるのですが、難解すぎるものや、逆に平易すぎるものも多く、商大生に適した内容のものを探すことができませんでした。それならば、と本学の学生に必要な内容を自分たちでまとめることとしました。
理系学部では、実験を行って取得したデータを整理、考察しレポートにまとめるという機会が多くありますが、本学ではそのような経験は多くありません。しかし、社会に出ると、報告書や企画書、業務マニュアルなど、様々な文書を書く場面はたくさんあると思います。
私は文章書きの専門家ではありませんが、授業を通じて得た知見をもとに、本書ではレポートの基本的な書き方に加え、情報の収集方法、データ整理、発表方法など、社会に出る前に身につけておくべき基礎を解説しています。新入生をイメージして書きましたが、将来ビジネススクールに進みたい社会人の方にも、大学時代の復習として役立ててもらえればと思っています。
理系学部では、実験を行って取得したデータを整理、考察しレポートにまとめるという機会が多くありますが、本学ではそのような経験は多くありません。しかし、社会に出ると、報告書や企画書、業務マニュアルなど、様々な文書を書く場面はたくさんあると思います。
私は文章書きの専門家ではありませんが、授業を通じて得た知見をもとに、本書ではレポートの基本的な書き方に加え、情報の収集方法、データ整理、発表方法など、社会に出る前に身につけておくべき基礎を解説しています。新入生をイメージして書きましたが、将来ビジネススクールに進みたい社会人の方にも、大学時代の復習として役立ててもらえればと思っています。
「文系」だからこそ、科学へ目を向けて
高校生の皆さんの中には、「数学や理科が苦手だから『文系』の小樽商科大学を目指そう」と考える人も少なくないのではないでしょうか。本学は「実学・語学・品格」を教育理念とし、単科大学ながら7つの外国語を学ぶことができ、国際教育にも力を入れています。そのため、人文科学系の大学という印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、厳密には商学を中心とする「社会科学」系の大学であり、数学や統計学、情報学なども大いに活用する分野です(高校科目に“商学”はありませんが、ほぼ対応する“商業”の学習指導要領をご覧ください)。
ビジネスの現場では、科学技術に関連した商品やサービスを取引したり、企業活動においてインターネットやAIなどの情報技術を活用したりします。したがって、それらの基盤となる理数系科目の学びも欠かせません。
とはいえ、数学や理科が苦手だから、「社会科学」系の小樽商科大学への進学をためらう必要はありません。社会科学とは、文字通り、人々が相互に関わり合いながら構築している社会を「科学的」に考え、探求することを目指す学問分野です。ここでいう「科学的な考え方」が出来るようになるためには、科学に基づいた分析手法や思考プロセスを学修する必要はありますが、自然科学に関する高度な学問体系の修得が必ずしも必要というわけではありません(もちろん修得できれば望ましいですが)。
「文系」の学生が数学や理科を学ぶ意義は、科学について正しく理解し判断する力、すなわち問題解決力や論理的思考力、数学的表現力などを向上させる点にあると思います。高度な理数系科目の修得は必須ではありませんが、日頃から科学技術に関心を持ち、科学的な思考を意識することで、「社会科学」を学ぶための素養が自然と身についていくはずです。「社会科学」を探究する小樽商科大学への入学を心よりお待ちしています。
ビジネスの現場では、科学技術に関連した商品やサービスを取引したり、企業活動においてインターネットやAIなどの情報技術を活用したりします。したがって、それらの基盤となる理数系科目の学びも欠かせません。
とはいえ、数学や理科が苦手だから、「社会科学」系の小樽商科大学への進学をためらう必要はありません。社会科学とは、文字通り、人々が相互に関わり合いながら構築している社会を「科学的」に考え、探求することを目指す学問分野です。ここでいう「科学的な考え方」が出来るようになるためには、科学に基づいた分析手法や思考プロセスを学修する必要はありますが、自然科学に関する高度な学問体系の修得が必ずしも必要というわけではありません(もちろん修得できれば望ましいですが)。
「文系」の学生が数学や理科を学ぶ意義は、科学について正しく理解し判断する力、すなわち問題解決力や論理的思考力、数学的表現力などを向上させる点にあると思います。高度な理数系科目の修得は必須ではありませんが、日頃から科学技術に関心を持ち、科学的な思考を意識することで、「社会科学」を学ぶための素養が自然と身についていくはずです。「社会科学」を探究する小樽商科大学への入学を心よりお待ちしています。
関連リンク