- <担当授業> 商法Ⅰ(会社法)、商法Ⅲ(保険法)、研究指導
河森 計二 教授
KAWAMORI Keiji
個人の幸せのために
これまで研究してきた主な内容としては、生命保険契約における告知義務の問題や保険金受取人の保険金請求権の問題などを考えてきました。前者は博士論文のテーマとして、後者については研究者仲間とともに「保険金請求権の現代的課題に関する研究会」に参加するなどして、民法の第三者のためにする契約と保険契約、補償関係、対価関係、固有権の機能などについて議論し研究してきました。
保険契約を締結するということは単に社会にある様々な場面においてリスクに備えることでもありますが、生命保険においては健康な人ほど保険料が安くなる保険として健康増進型保険が登場したり、損害保険のなかの自動車保険においてはテレマティクス情報を活用して事故回避のための技術開発が行われることでモビリティー社会における事故のない社会を実現していく取り組みなど、これまで保険法研究のなかでは想定していないことが起こるかもしれません。
保険は社会と連動して個人の幸せのためにあるもの。そこに寄り添えるよう日々探求していきたいと思います。
人生は人との出会い
大学時代に保険法の講義を受けるとともにゼミも保険法ゼミに所属したことが保険法研究のきっかけでした。学部時代・大学院時代の恩師が生命保険会社の役員であったこともあり、恩師の研究姿勢が「法理論にしても契約理論にしても、生きた現実の中から問題点を掴み出し、生きた現実の上に構築しようとつとめてきた」ことであり、このことを間近に感じ経験させていただいたことが恩師の人柄と合わさって、保険法という研究分野に魅力を感じることにもなりました。
その恩師が親しくされていた方、これが私のもう一人の恩師であるのですが文学の教授がおりました。その方は樋口一葉や森鴎外といった近代文学研究の権威でもあった方ですが、保険法と近代文学という異なる研究分野ではあるものの研究に対する考えを尊重しあいながら実証研究を行うこと、その姿勢を見せていただきました。
この二人の恩師に出会うことがなければ研究者としての道を歩んでいることは無かったと思います。恩師の言葉に「人生とは人との出会いである」、「受けた恩を返すのではなく、つぎの世代の方にこの恩を送りなさい」とありました。
恩師との出会いを大切にしながら教育と研究を続けていきたいと思います。

人間の学として

保険法を研究している関係から生命保険相互会社の総代を経験したことがあります。北海道内の保険契約者の一部の方を集めて懇談会が開催され、地域のなかで顧客がかかえる問題などを保険会社に直接伝えることができる場でもあり、総代の任期満了まで毎年出席していました。実務と理論との連動が重要であることを実感しました。
保険は現実の経済活動のなかで求められるものであり、保険契約を通じて実践されるものでもあります。「人間の学としての保険法」学を、生きた現実のなかから問題点を掴み出し、生きた現実の上に構築できるよう努めたいと思います。
ゼミ生は「宝物」
私のゼミでは法律に関わる問題が中心となりますが、ゼミで扱う具体的なテーマについてゼミ生に考えてもらい学期はじめに決定をするところから始まります。一つのテーマを2週に分けてディベートや議論をして考えることを毎回行うことで、法的な論点整理や思考を身に着けることをねらいとしています。大学のさまざまな講義を経験したうえで、法律に限らず経済や社会情報、商学の観点など現実のなかで起こっている問題を認識して、横断的で自由な発想をもって考えてほしいということがあります。社会に出たときに共に学んだゼミの仲間とともにじっくり考えた経験が役立つことを祈りつつ。
大学を卒業したゼミのOB・OGが世代を超えて社会人になったいまも連絡をとりあってくれていること。ゼミ生そして卒業生は私の誇りであり「宝物」です。

実学志向の法学教育

商学部のなかで法律を学ぶことは法律を研究することのみならず、生きた現実のなかで世の中の動きを感じ考え続けることを意味します。
社会情勢のなかで法律の役割はますます重要なものとなっており法的な考えを抜きにして社会の動きを語ることができなくなっています。もちろん法律の専門分野に進み弁護士や研究者になった方もいます。
大学はゴールではなくこの先の人生を考えていくスタートになります。
小樽商科大学には「北に一星あり、小なれどその輝光強し」という言葉があります。商大生としての気概と矜持をもつなかにも文化的な思考をも身につけることができるよう学生生活を歴史ある小樽にて学び続けていただきたいと期待しています。
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