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教員インタビュー ジョーダン チャールズ准教授

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  • 研究指導(ゼミ)

ジョーダン チャールズ准教授
JORDAN, Charles


大規模な計算機で計算の限界を広げる

「高速アルゴリズムと形式論理」といわれる情報科学の基礎的な研究分野について研究しています。アルゴリズムとは詳細まで細かく決まっている手続きであり、例として掛け算を行う手法が挙げられます。アルゴリズムは遠く感じる分野かもしれませんが、近年はカーナビでの自動車ルート検索やネットショッピングでの推薦システム等、日常生活において高性能アルゴリズムが広く利用されています。同じ計算問題を解く手法(アルゴリズム)がたくさん存在しますが、高速さやハードウェアの効率的な利用、スマートフォンのバッテリーへの負担等、それぞれ性質が異なり、アルゴリズム分野では計算問題を解く手法とその性質について、研究しています。

私の研究は「理論」と「応用」の両方を含み、基礎的な課題から高速アルゴリズムをフリーソフトとして開発し、実際に応用できるものとして公開しています。特に、近年は数多くの計算機を同時に使う大規模なクラスターやスパコンを効率よく利用できる並列化の共同研究と実装をしています。近年取り組んでいる計算問題に対して、従来の手法を並列化することにより計算時間は千倍以上減らせる場合があり、従来期待されていなかった大規模な計算が現実的になります。開発した並列実装は、バイオインフォマティクスや数学の異分野で他の研究者に使われ、異分野での成果にも繋がります。

自分の発明が世界に波及していく面白さ

アルゴリズムに興味を持ったきっかけは、高校生の時に電卓やグラフ電卓でプログラミングを始めたことです。当時、かなり低いスペックの計算機でプログラミングをすると、アルゴリズムと実装の効率性の重要性を実感し、納得できるパーフォマンスを得るためには工夫は必要でした。

アルゴリズムの分野は、数学のような理論的な学問から実際の問題を解決する応用まで幅広い分野をカバーしています。近年では、異分野にも広く影響与えており、新しい証明を見つけたり、従来の手法を明らかに超える高速手法を実装したりすると、世界で自分だけがそれを持っていることになります。そしてそれを公開することで、他の研究者が改善したり、異分野で応用されたりしていく様子を見ることも、研究の面白さの一つです。

数学や形式論理に関わる場合、細かい内容を形式的にかつ正確に記述する必要があります。計算機の進化とアルゴリズムの高速化により、かつては期待されていなかった計算が日常的に行えるようになっています。情報科学は急速に変化する賑やかな分野であり、その変化は常に体感できるものです。人気のあるソフトウェアも絶えず変化しているため、「最新のソフトの使い方」よりもむしろ「基礎的な手法と理論」を理解しておくことで、急速な変化に対応しやすくなります。

フリーソフトのインパクト

高速アルゴリズムを実装すると、当初想像しなかった応用が現れることがあります。特にその実装をフリーソフトとして提供すると、ユーザがその実装を改善・利用することが可能になり、その実装を基に新たなものを作成することもできます。

私の研究では、計算機を数多く含む大規模なクラスターやスパコンを対象にしているため、計算機のコストと計算結果を待つ時間のバランスが取れ、応用によって計算機の規模を考えることができます。一つの計算問題が全ての応用に対応するわけではありませんが、基礎的で重要な計算問題を扱うと、様々な分野に応用することが可能となります。

しかし、実際にユーザに使ってもらうためには、面白い機能を実装するだけでは不十分です。これはかなり専門的な内容ですが、その計算を必要とする人々が実装の存在に気づき、簡単に入手でき、使い方が適切に説明されていることが、実装の存在と同じ程度重要で、長年使い続けることができる形に作り上げることも必要不可欠です。このような作業は非常に重要ですが、アルゴリズムの能力だけではなく、様々なスキルが必要とされます。

また、研究と直接関係ありませんが、最近学生から授業で学んだ内容をバイト等の場面で応用したという話を聞き、うれしく感じています。

情報技術のスキルを持つ人材は、今後ますます重要になる

計算機の進化、AI、インターネット及びスマートフォンの普及により、情報技術は急速に進展し、多くの分野で重要なツールとなり、日常生活においても広く使われる時代になりました。異分野において、情報技術のスキルを持つ人が既に重要な人材として求められていますが、今後さらに重要性が高まることが予想されます。実社会における問題を対処するためには、最適化や高速な近似、データ解析やAIの合理的な利用等、幅広い技術が必要です。先述のように、ソフトウェアやウェブサイトは急速に変化し続けており、今後も使えるようにするためには、基礎的なスキルが非常に重要です。

情報技術の難しさについては個人差もありますが、どの分野でも難しく感じる部分はあります。しかし、従来と比べて、現実的な計算機が手に入りやすくなった現代において、計算機で遊ぶ気分で試したり何かを作ったりすることが学習にもつながります。これにより、新しいスキルを習得し、技術の進化に適応することが可能となります。そのためには、好奇心と継続的な学習の意欲が大切です。

学生とともに作り上げる新たなゼミ

私は2021年度に着任し、現在は1期生と共に新しいゼミナールを作っています。ゼミでは、アルゴリズムに関する基礎的な理論研究からアルゴリズムの実装と改善、高性能の実装を利用して実問題を解く応用研究まで、ゼミ生の興味に基づいた幅広いテーマを取り扱っています。

ゼミナールの将来的な展開は、ゼミ生達の貢献が重要で、ゼミ生の活躍と面白い卒論を楽しみにしています。


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