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教員インタビュー 石川友和准教授

  • 英語Ⅰ・Ⅱ
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  • 英語科教育法
  • 研究指導(ゼミ)
  • (大学院)異文化コミュニケーションの基礎

石川 友和准教授
ISHIKAWA Tomokazu


英語ではなく「英語話者によるコミュニケーション」を研究しています

私の研究分野は、応用言語学(言語関連の諸問題に取り組む分野)、特に英語話者のグローバルコミュニケーションです。2050年には40億人以上が日常的に英語を使用すると見込まれているのですが、彼らの多くは多言語話者であり、大部分のやり取りは多文化環境で行われます。そのため、表面上は英語に見える場合でも多言語多文化が影響しており、また、英語は言語の一部、さらに言えば、言語は伝達様態の一部に過ぎません。

私の研究では、英語話者のコミュニケーションを、「英語」の枠を超えて、全体論的に把握しようと試みています。

具体的な研究領域と、それぞれの領域における「問い」の例は、以下の通りです。

– Intercultural and transcultural communication (異文化・超文化コミュニケーション)

 → 文化はコミュニケーションの中で、どのように作用するか?

– Multilingualism with English (英語を含む多言語主義)

 → 英語話者は「英語」をどの程度、いかにして活用するか?

– Decoloniality (脱植民地的思考)

 →「言語」や「文化」に関する社会通念に、いかなる権力関係が存在するか?

多言語環境で生まれる英語には、「外国語」の域を超えた魅力があります

博士課程指導教官であったジェニファー・ジェンキンズ氏と

私は中等教育で米国出身の先生方に出会いましたが、彼らは彼らの「母語」として、また私たちの「外国語」として、英語を教えてくださいました。中には英語以外の言語を流暢に操れないとおっしゃる先生もいらっしゃいました。反抗期の私は、「外国」の言葉ならば自分に関係ないと思いましたし、そもそも母語以外の言語をマスターしたことがない人に言語を教わりたくないとも思いました。大学時代に国際法、特にEU法を学ぶために短期交換留学に参加しましたが、その時に感じたことは、英語は学問の共通語であるということです。確かに私にとって、英語は「母語」ではありません。しかし、EU法を学ぶ身として、もはや「外国語」とも感じられなかったのです。

現在、私は小樽商大の教員であると同時に、英国サウサンプトン大学Centre for Global Englishes (CGE)の博士会員であり、CGEを通じて、ロンドン大学Centre for Multilingualism with English (CME)の研究者ネットワークにも参加しています。CGEでもCMEでも、英語は共通語として、常に他の言語と超域的に用いられています。例えば語彙であれ、文法であれ、談話の構成であれ、多言語環境に由来する繊細で創造的な表現の可能性に、常に魅力を感じています。小樽商大で授業をしていると、実は学生たちの多くも、主にデジタル空間を通じて同じような多言語経験をしていることに気づかされます。英語が「英語圏」から次第に切り離され、多言語環境で用いられている今日、英語話者間で新たな文化行為や、新たなアイデンティティが生まれることは、決して特別なことではありません。グローバルな言語や文化の流れの一翼を担う存在であるからこそ、英語は私たちにとって重要なのではないでしょうか。

研究や講演を通じて、繋がりを深める

小樽商大で英語専修科目を担当する教員として、道内外で活躍する言語教育のスペシャリストを育てたいと思います。彼らには、担当科目である英語や、英語教育の役割について、常に批判的に突き詰めて考えて欲しいと思います。そのための一助となるような共編著書を、現在準備中です※1

また、グローバル時代のコミュニケーション、特に文化面を主題とした共著教科書を出版し※2、言語面を主題とする共著教科書を執筆中です※3

こうした著書は、小樽商大の附属図書館にて閲覧できます。

著書や論文を通じてだけでなく、学会でも研究成果を積極的に発信していきたいと思います。2023年度は、ベトナム国立教育科学研究所(VNIES)にて基調講演を行い、韓国応用言語学会(ALAK)、および全国語学教育学会(JALT)に新設された分科会にて、それぞれ全体会議での招待講演を行いました。今後、こうした学会だけでなく、観光地である小樽、ないしは道内で、英語に日常的に触れられている方々と一緒にコミュニケーションについて考え、知見を交換できるような場を設けられたらと思っています。

※1: Ishikawa, T., McBride, P., & Suzuki, A. (Eds.) (2025). Developing English as a lingua franca programmes for language teaching: Innovation, resistance, and applications. De Gruyter.

※2: Baker, W., & Ishikawa, T. (2021). Transcultural communication through Global Englishes: An advanced textbook for students. Routledge.

※3: Baker, W., Ishikawa, T., & Jenkins, J. (2024). Global Englishes (Routledge key guides to applied linguistics). Routledge.

タイTESOL国際学会2023にて

 

商大で「異文化コミュニケーション」を探求する

小樽商大BL1教室にて

2022年9月に小樽商大に赴任して以来、英語と異文化コミュニケーションに関連する科目を担当しています。2023年4月に開講した私のゼミナールでは、「異文化・超文化コミュニケーション」を扱っています。指導方法の詳細はゼミ生と相談しながら決めていますが、2023年度は、テーマに沿った教材を使用し、英語話者のコミュニケーションについてみんなで深く考える時間が多かったです。

考え過ぎて頭が働かなくなり、途中で甘いものを食べたり、「エウレカ!(わかったぞ!)」といった瞬間が訪れたかと思えば、またすぐに混乱したり…。そうした学生たちと共に、考えることを楽しんでいます。

初年度は、7名のゼミ生が在籍しています。そのうち5名は、教員免許状(英語)を取得予定です。大学院進学を考える学生は5名、ゼミ在籍中に、留学等で半年以上海外に出る学生も4名います。開講初年度の卒業予定者は1名、その学生の卒業論文のテーマは、「共通語としての日本語」です。既に大学院進学が決定しています。残り6名は、次年度卒業予定です。国際学会で発表が採択されるように、それぞれの卒業研究を精力的に進めていって欲しいと思います。

英語を介して様々な学びや経験を得られる それが商大の魅力です

語学の商大で、言語を語学としてだけでなく、各自の目的を達成する手段として学びましょう。商大では、常に楽しむ気持ち、ないしは「遊び心」を忘れずに語学学習に取り組んでください。卒業までに、可能な限り、自ら留学したり、あるいは留学生と共に授業を受けたりしながら、英語を含む多言語環境の中でコミュニケーション力を培いましょう。

商大では、社会科学の枠を超えた学際的な学びが可能です。商学部のみの単科大学としては珍しく、英語専修に所属することもできます。大学の授業を通じて、言語、文学、文化、教育、社会等の分野に、初めて深く関心を持つようになるかもしれません。自分の専門分野について、英語を通じて学ぶ機会もあります。4年次には、英語で卒業論文を書いているかもしれません。

「北に一星あり 小なれどその輝光強し」と謳われる商大。入学後は、自由な校風の中で、挑戦多き学生生活を送ってください。「一星」の一員としての気概を持って、それぞれの夢に邁進してください。私も商大の一教員として、研究や教育を通じて少しでもその輝きを支えられるように、全力を尽くします。


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