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教員インタビュー 石井孝和准教授

  • <担当授業>
  • 国際会計論
  • 研究指導(ゼミ)
  • 基礎ゼミナール

石井 孝和准教授
ISHII Takakazu


M&Aを行った際に会計上認識される「のれん」に関連した研究を行っています。

専門は財務会計で、主に企業がM&Aを行ったときに会計上認識される「のれん」と呼ばれる資産の情報有用性や、それに関連してその後の利益計算に影響を与えるのれんの償却や減損という「会計処理に対する経営者の行動」に焦点を当てた研究を行っています。

M&Aとは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略で、他の企業と統合したり経営権を取得したりすることによる事業規模の拡大等を目的として行われます。M&Aを行う際には相手側企業の株主に対して対価を支払うことになるのですが、M&Aによって大きな相乗効果が期待される場合には、相手側企業の価値を超える対価が支払われることもあります。この相手側企業の価値を超える対価部分が会計上の「のれん」となります。

この「のれん」は、他の資産とは異なり実体がなく、かつ企業と切り離して存在することができないという特殊な性質を有しています。それゆえに、その価値をどのように評価し、利益計算にどのように組み込むことが適切なのかという点に関連して多くの論点が存在しています。

会計の制度は奥深い。様々な研究手法を用いて最良の会計制度を追求する。

もともと数字が好きだったこともあり、大学に入学した当初から漠然と会計には興味がありました。そのため、大学3年次に始まるゼミでも会計を専攻したのですが(ちなみに私は本学の卒業生です)、そこで会計の制度が思っていた以上に奥深いものであり、様々な論点が存在することを知りました。

卒業後はいったん公務員として働き始めたのですが、いろいろとあって研究者の道を志すようになり、職を辞して神戸の大学院へ進学することになりました。そこで会計データや株価データなどをもとに統計的な手法を用いて会計制度を検証・分析する手法を知り、さらに「のれんの減損」については利益数値に与える影響が大きく、また制度的にも多くの議論が展開されているにもかかわらず、日本国内ではデータを用いた研究がほとんど行われていないということから、この研究テーマに取り組むようになりました。

会計の目的と企業側の思惑、企業外部からの評価などが複雑に絡み合うなかで、様々な研究手法も用いて最良の会計制度を追求し続けられるところに、この分野のおもしろさを感じています。

財務諸表の重要な役割

企業が行った取引は「簿記」と呼ばれる方法で記録され、最終的に「財務諸表」という書類にまとめられます。この財務諸表は、企業に投資を行う投資家の人たちや融資を行う金融機関がその判断材料とするほか、企業と企業の利害関係者との間で結ばれる各種契約の基礎資料としても利用されています。

そのため、現在の経済社会において中心的な存在ともいえる企業の実態を適切に反映し、その情報を必要とする人たちに上手く伝えるための制度設計を考えることは、この地域・社会を発展させるためには非常に重要なこととなります。

もちろん国ごとに社会的な環境は異なりますし、上場企業なのか中小企業なのかによっても会計に求められる役割というのは変わってきますので、そのような背景の違いと現状の会計制度との関係性についてもしっかりと理解しておく必要があります。

文系学生が高度な数学的知識を有することで、研究の幅が拡がる

私が専門とする財務会計の分野では、簿記をはじめとして数字を扱う機会は多いですが、それほど高度な数学的知識は必要ないことがほとんどです。また、現在の会計制度を学ぶ際には、会計基準と呼ばれる会計のルールをしっかりと理解する力がより重要になってきます。したがって、財務会計に関する知識を習得するという観点からは、数学に苦手意識を持つ文系学生にもそれほど学びにくさというものは感じないのではないかと思います。

ただし、そこから一歩進んで、現在の会計制度や会計制度の変更が経済的にどのような影響を与えているのかに関してであったり、企業経営者は自身にとって都合がいいように会計数値を調整するような行動を行っているのではないかであったりといった検証を行う場合には、より高度な統計的知識が必要となってくる可能性があります。もし、そのような観点からの研究に興味がある場合には、関連する授業やゼミ等でその知識を補う必要があるでしょう。多少苦労することはあるかもしれませんが、そこで得られた知識や技術は今後の社会生活にもきっと役立つでしょうから積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。

商大で多くの知識の習得と仲間との出会いを

小樽商大は規模としては小さいですが、ビジネスに関連した知識や技能を身に付けるための環境としては、他の大規模大学にも勝るものをもっています。特に本学の学生と接していて感じることは、自主的に行動を起こす力のある学生が多いということです。大学側からも実践的な学びの場というものは提供されていますが、学生自らが積極的に自身の興味・関心をもとに同じ方向を向いた仲間を募り、活動を進めていける学生が多い印象があります。

現在小樽商大に興味を持っていただいている高校生のみなさんも、商大では専門的な知識の習得はもちろん、同じキャンパスで学ぶ仲間や教員などとの多くの出会いが自身を成長させることになると信じておりますので、ぜひ小樽商大に来ていただければ嬉しく思います。


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