CLOSE

教員インタビュー 筈井俊輔准教授

  • アントレプレナーシップセミナー
  • 経営組織Ⅰ
  • 経営組織Ⅱ
  • ケーススタディⅡ
  • リサーチペーパー

筈井 俊輔准教授
HAZUI Shunsuke


「仕事」の研究から組織の成立メカニズムやマネジメントの在り方を明らかにする

仕事の研究をしています。具体的には、仕事がどのように生じて、継続され、変化するのかという問いに取り組んでいます。なぜ仕事を研究する必要があるかというと、仕事とは人がある目的のために世界に働きかける方法であり、仕事を通じて人は幸せにも不幸せにもなるからです。仕事の研究は、組織の成立メカニズムやそのマネジメントの在り方を明らかにする鍵だと考えています。

経済学や社会学では、仕事は労働とか働き方、労働過程などと呼ばれ、資本主義経済や社会構造と一緒に議論されることが多いです。私の場合、もっと身近な職場や組織のマネジメントの在り方を考えるために、仕事とか業務と言っています。

では、仕事の継続と変化に着目すると、どのような示唆が得られるのでしょうか。私は現場で働く人々の話を聞いたり見たりするフィールドワークを行うのですが、現場では常に従前と同じ仕事を続けるか否かが問われていて、それが人々の間だけでなく人とモノの関係においても問題になっていることが分かります。当たり前のように聞こえますが、殊にマネジメントの話になると、従業員はあらかじめ定められたマニュアル通りに仕事を実行するものだし、実行しなければならないという経営思想があるのです。

ですが実際は、人々は仕事のやり方について交渉もすれば、モノから何かを見立てて新たな仕事を構想したりしています。このような人間性を無視してしまうマネジメントでは、職場のコミュニケーション不足やミス、事故を引き起すと言われています。そこで私は、現場の人々が感じ取った新たな仕事の形について対話したり実現したりしていくことが、職場の安全性のみならず人々が仕事から創意工夫の喜びを感じることにもつながるのではないかと考えています

日常から学んだ組織論の探求

幼少期から、人々が協力して組織のようなものを作り、何かを成し遂げることに興味がありました。大学で組織論を勉強しましたが、実は、組織とは何なのか、肝心なことがよく分からず煩悶していました。それがアメリカに留学したとき、ひょんなことからサークルを構想し、それに関わる学内業務を新たに作らねばならなくなりました。そのうちに組織のようなものが現れる不思議な感覚を得たのです。そこで組織論を勉強し直し、それが組織の形成される組織化(organizing)という過程であるということや、構造化された組織に個人の行為を可能にしたり制約したりする力があるということを学びました。

経営学や組織論というと、大企業の経営戦略や社会変革のイノベーションを思い浮かべますが、組織論の対象は身近な人々の集まりとか、現在進行中の物事だったりするのですね。それが分かると、組織論を勉強するのが俄然、楽しくなって、今もなお組織の研究に熱中しています。

目に見えない「組織」の捉え方によって、地域・社会とのつながりが変わる

申し上げた通り、組織論の対象は大企業だけではありません。中小企業や特定非営利活動法人(NPO)、学校のクラブ活動でさえ、れっきとした組織です。ニュースや新聞を見ても「組織」という言葉が出てこない日は無いですから、組織について考えることは我々の生活の一部と言ってもいいでしょう。問題は、目に見えない組織なるものをどのように捉えるかです。それによって、組織論と地域・社会とのつながりも異なります。

たとえば、組織を「A法人」とか組織図のような固定化されたものとして捉えると、複数の組織を比較して、ある種の組織が有する傾向を明らかにすることができるかもしれません。すると、「こういう組織形態が良いのではないですか」といった提言ができます。

一方で、組織を、人々のやり取り次第で変化する変動的なものとして捉えると、そもそも協力することの意義が見出される過程やメンバーがやりがいを感じるメカニズムが明らかになるでしょう。必然的に、研究者は現場により近い立場で、コミュニケーション・パターンについて意見したり、場合によっては新たな活動の構想を後押ししたりすることになるかもしれません。私も調査がきっかけで、市民活動を行うNPOのファシリテーションのお手伝いをしています。

学術的な知識から、現場を捉えなおすきっかけ

ビジネススクールに通う最大のメリットは、経営に係る様々な学問分野が学べることでしょう。特に本学のアントレプレナーシップ専攻には、経営戦略や会計、組織、マーケティングなど6つの科目が必修科目として用意されており、そこで得た知識を基にケース・スタディやビジネス・プランニングで発展的な学習ができます。

まだ社会人経験が無い方にとっては、なぜ大学院で勉強し直す必要があるのかと疑問に思われるかもしれません。実務で伸ばせるスキルがあるだろうと。確かに、実践や経験よりも効果的な学習方法はないのですが、仕事の現場では、雑多なことが次から次へと際限なく生じます。それに、部署や職種によってアクセスできる実践には限りがあります。そのような中で、体系的な経営の知識やスキルを身につけるのは至難の業なのです。

ビジネススクールは文字通り現場から一歩離れた場所であり、学術的に整理された知識を身につけることによって、現場を捉え直す機会を提供しているのです。そしてまた、新たに身につけるべきスキルを気づかせてくれることもあるかもしれません。ちなみに、私の主な担当科目は経営組織Ⅱ(パースペクティブと経営)とケース・スタディⅡで、受講生の皆さんの実務経験の振返りを聞くことが楽しみの一つになっています。

日頃から問題意識を

ご自身の問題意識を温め続けて下さい。問題意識は、突然、完璧な形で開示されるものではなく、手塩にかけて育むものだと思います。学友と一緒に意見交換するのも良いかもしれません。たとえそれが受験や就職活動のために急ごしらえで考えたものであっても、「自分はこういうことが問題だと感じているのかもしれない」と思えたこと自体が幸運だと思います。是非、大切に温めて自己研鑽に励んで下さい。


関連リンク


一覧へ戻る

資料
請求