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教員インタビュー 寺坂崇宏教授

  • <担当科目>
  • 計量経済学、経済と統計、統計演習

寺坂崇宏 教授
TERASAKA Takahiro


計量経済学の研究

 計量経済学という分野で研究の活動をしています。この分野は、経済理論を、データを使って検証して、将来の経済の動きを、いかに適切に予測するか、ということを突き詰める分野です。当初、私は、労働市場における、需要側と供給側のミスマッチについて、基本的な経済モデルとデータを用いて説明することを試みていましたが、その後、例えば所得や物価の動きのような、時間の経過とともに観測されるデータついて分析する研究に移り、今では、こちらの研究のほうが主になっています。手法をうまく適用できますと、複数の経済に関する変数の動きを予測できるようになりますが、適用は容易ではなく、ここで苦労をしています。実は、この研究は、予測に重きが置かれて、経済理論を直接的に検証するとは限らないのですが、手法をうまく適用して、できるだけ経済学の範疇で、推定されたモデルを解釈することをできればと考えています。

学部の学生の時の疑問がきっかけでした

 学部の学生の時に、計量経済学やそれに関連する科目の他に、理論経済学や経済制度に関係する授業を受講していましたが、そのときに、授業の中で提示されている経済理論が抽象的で、実際に生活している経済社会との対応関係をイメージすることが難しく感じていました。そのことが、計量経済学の分野で研究をはじめるきっかけとなりました。とはいうものの、例えば、株価の動き1つにしても、科学の進歩に伴う多くの技術革新や、日々起こる世界各国の政治の動きなど、経済学との関係が濃いとは限らない、多種多様な要因によって変動することも容易に想像できますから、この状況下で理論の検証することが、いかに難しいかということをすぐに思い知りました。ただ、その難しさ故、少しでも現実を説明できる理論に接近したいという欲求は強くなりました。これがこの研究分野の面白さかと思います。

 

理論に迫ることが難しくても、データを見ることは大切です

 経済理論を検証する形でのデータ分析は容易ではないのですが、このことは、難しさを指摘しているだけで、データの分析を否定するものでは決してありません。今起きていることを捉えるために、データを観測することは、最も必要なことの1つです。たとえ経済理論に十分に迫れなかったとしても、データの推移や、広がりの程度を見るだけでも、今起きていること、それまでに起きていたことの手がかりを得ることができます。手がかりを得るだけでも、限定的ではあれ、今後の政策のありかたや、私たち自身でできることを見つけられると考えています。例えば、働いて収入を得ることを考えてみますと、この地域ではどのような仕事が活発なのか、その仕事からはどのくらい収入が得られるのか、データを得ることで、その地域の経済の状況を捉える第一歩となります。

 

小樽商科大学での授業について

 大学院の「計量経済学」学部の「経済と統計」「統計演習」では、経済学の理論で扱われていることを、データを使って検証をすることを試みています。例えば、私たちの暮らしに密接に関係のある、いわゆる“各商品の値段の推移”の全般的な方向性を示す「物価」が、今どのように推移しているのか、その推移に影響することは、どのようなことなのかについて話をしています。経済学では、物価は大きなテーマの1つですが、小樽商科大学では、物価の動きを説明する経済学の理論を、体系的に習得できるだけではなく、その理論についてデータを使って検証することや、理論を通して現代の経済の動きを把握することができるようになります。ここ5・6年ですが、身の回りで起きている問題が、経済学に関係していることに気が付く学生が多くなっているように思います。授業で話をしても、問題意識が高いからなのか、熱心にデータを使った実習に取り組んでくれます。

 

様々な分野でデータが活用されています

 私は経済学に関係するデータについて、話をする機会が多いのですが、小樽商科大学のどの学科に所属しても、データを用いて、専攻する専門分野の理論を検証する機会があると考えて間違いありません。理論の検証は、文系理系問わず、絶えず行われていることですから、専攻分野に関係なく、データ分析の方法の習得が求められると言って良いでしょう。なお、最近では、先行してデータを分析して、その結果から新しいことを発見するという流れも広まっています。「理系の科目が得意であれば、データ分析の方法の習得に有利である」と言われがちですが、昔と比べますと、分析に関係するテキストの記述は洗練されてきました。さらに、デバイスを用いて、先端の方法を使って観測されたデータを分析することが非常に容易になりましたので、文系、理系、関係なく、扉を叩きさえすれば、習得への道が開かれます。大学へ入学しましたら、ご自身の専攻分野のところで、是非データ分析の勉強を始めてみてください。


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