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教員インタビュー 坂東雄介教授

  • <担当授業>
  • 憲法・基礎I
  • 憲法・基礎Ⅱ
  • 法学
  • 研究指導(ゼミ)

坂東 雄介教授
BANDO Yusuke


移民・難民・外国人・国籍に関する法的問題について研究しています

現在の主な研究関心は、①移民・難民に関する法規制はどのようにあるべきなのか、②外国人に対してどのような法的処遇をするべきなのか、③国籍の法的な性質は何か、にあります。この3点は独立して存在しているわけではなく、複雑に絡み合っており、この大きな視座を念頭に置きつつ、個別の法制度の分析をしています。

過去に取り組んだ例として、外国人が収容されたときに一時的に解放される仮放免という制度があるのですが、この制度について争われた裁判例を分析し、どのような事由であれば仮放免が認められるのかを明らかにしました。

他にも、外国人の法的地位や移民・難民に関する国際人権規範(自由権規約、難民条約など)の内容を明らかにし、日本の国内法に対してどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることも研究関心の1つとなっています。

さらに、外国の成功事例・失敗事例を分析することは、日本の法制度を検討する際にも有益です。私は、オーストラリアの移民・難民に関する法制度や関連する判決の分析を通して、日本法への示唆を探っています。

最近では移民法に刑事法の思考が流入している現象(crimmigration)について、取り組んでいます。これは、世界各地で起きている現象であり、日本でも2023年に法改正により刑事収容施設法を参考に入管収容制度が改められました。なぜ移民法が刑事法化するのか、その歯止めはどこにあるのかを探っています。

国境という線引きが正当化されるのはなぜか、という古くて新しい問題に取り組む

人と人の間にはたくさんの線引きがあり、その線引きによって「自分たち」と「自分たちではない人たち」に区別されます。その線引きの1つが国境です。国境によって「国民」と「外国人」という区別が生じ、法的地位が異なります。

例えば、日本国民は選挙権を有しますが外国人にはありません。日本国民は当然のように日本に居住することができますが、外国人は出入国管理及び難民認定法によって定められた在留期間や在留資格の範囲でしか滞在することができません。

国境という線引きによって法的地位に違いが生じるのはなぜなのか。この線引きを当たり前のものとして受け止めてしまいがちですが、一歩踏み込んでその正当化根拠を検証してみようというのが研究の出発点です。

外国人・国籍の法的地位や国境管理の問題は古くから扱われてきた問題です。そして、現代でも問題が生じ続けています。例えば、ロシアとの戦争から逃れてきたウクライナ避難民を、日本国内ではどのように受け入れるのかと話題になったことを覚えている人も多いと思います。過去に日本は、ベトナム戦争から逃れてきた難民の受け入れも実施してきました。日本の過去の受け入れ方を分析して成功要因・失敗要因を明らかにし、次のステップにつなげることは非常に面白いです。日本のあるべき姿を探るためには他国の受け入れ体制の分析や難民に関する国際規律の検討も欠かせません。日本国内に限らない、広い視野が求められるダイナミックな世界が研究の面白さです。

問題の様相の変化と研究分野への社会的関心の高まり

私の研究分野においては、まさに地域や社会とのつながりがダイレクトに生じています。

例えば、技能実習問題です。北海道は農業や漁業が産業の基幹となっている地域が数多く存在しており、また、人手不足から技能実習生が担い手となっていることもよく知られていると思います。しかし、中には単にコストを安く抑えられるからと深く考えずに技能実習生を採用する企業もあります。技能実習生を適切に受け入れるための体制を構築することは各地域の企業、自治体双方に課せられた課題であり、私は、参照すべき好事例の調査を継続的に実施しています。

私が研究を始めた頃とは異なり、外国人問題の様相が変化し、社会全体の関心が高まっているのを実感しています。ロシアとの戦争から逃れてきたとウクライナ避難民については報道などで見知っている人もいると思います。また、2023年には外国人の送還・収容に関する仕組みを定める出入国管理及び難民認定法が改正されました。時代の変化に対応するためにどのような法理論を構築するのか、日々検討を重ねています。

国や地方自治体がどのような仕組みの下で活動しているのかを学ぶ

ゼミのテーマは憲法・行政法の判決の分析・検討です。憲法や行政法に関する判決を取り上げ、1-2名の報告者がレポートを作成し、それを元に2-3週かけてディスカッションをしています。報告者はその判決が下された背景事情や、その判決の影響など丁寧に調査することが求められます。そして、時おり、専門的な文献を輪読しています。

ゼミの特徴としては、ゼミ生それぞれの関心に沿った幅広いテーマを扱うこと、徹底的な調査能力が身につくことです。こう書くと堅苦しいイメージを持たれがちですが、ゼミ中はコーヒーや紅茶を飲みながら楽しくお話しています。

卒業論文は特定の法制度を取り上げて関連する裁判例や法実務を分析するものが多いです。例えば、完全な公務員とも民間企業とも言いにくい中間的の職場の労働条件に関する裁判例の分析や、名誉棄損を行ったSNSの投稿を削除するように請求する裁判例の分析などです。少し変わったところでは、戦前から戦後にかけて日本の法制度の基礎を築いた末弘厳太郎の司法制度の理解の変遷について卒論を書いた人もいます。

進路は、国家や自治体の活動について分析するゼミのテーマの特性上、公務員志望が多いです(約7割)。ただ、ゼミでの活動を通して法律学的な思考を十分に体得できると思いますので、民間企業への就職を希望する人にとっても有益なゼミだと思います。

日常的には意識することがない、社会のインフラとしての法律の存在を自覚する

皆さんは、法律とくれば、刑罰が重い・軽い、離婚や遺産相続、交通事故が起きたときの損害賠償などをイメージする人が多いと思います。確かにこれらは法律学で取り上げる内容の一部ですが、それ以外にも様々な法分野があります。普通の人々は日常的に法律を意識して生活することはほとんど無いと思いますが、法律学は皆さんも構成員の1人である社会を支えるインフラとして機能しています。法律を学ぶことによって、社会がどのような仕組みによって成立しているのかを深く理解することができると思います。

本学の企業法学科では、憲法・民法など基本となる科目を学習した後に会社法・知的財産法・国際取引法など発展的な科目を学習します。法律学の学習では裁判例の分析が欠かせません。裁判官が実際に下した紛争解決策を学ぶことは、同時に紛争予防策を学ぶことでもあります。このような学びを通して、公平・合理的に社会の仕組みを捉え、分析できるようになることが最終的な到達目標です。この思考は、どの進路に進むにせよ、必ず活きます。

この学科では、公務員や民間企業に就職する人から、各種法律資格試験(司法試験、行政書士、司法書士、税理士など)にチャレンジする人まで幅広く対応しています。皆さんにお会いできるのを楽しみにしております。


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