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教員インタビュー 赤塚広隆教授

  • <担当科目>
  • 基礎数学
  • 経済数学
  • 現代の数学II
  • 基礎ゼミナール
  • 研究指導

赤塚 広隆 教授
AKATSUKA Hirotaka


ゼータ関数

 微分積分を用いて整数の性質を調べる解析数論と呼ばれる分野、その中でもゼータ関数、L関数という関数を中心に研究を行っています。これらの関数の値が0となる数(零点)全体と素数全体の間には密接な関係があります。つまり、ゼータ関数、L関数は素数分布の情報を持つ関数であり、これらの関数の性質を知ることは整数の性質を解明することに資するものである、と期待することができます。

 私は主として、ゼータ関数、L関数やそれらの導関数の零点分布の研究を行ってきました。それと関連するものとして、約数を走る和で定める数論的関数(数列)とゼータ関数の零点分布の関係についても研究を行っています。

微分積分を用いた整数の研究

 自然数や整数は数直線上にポツポツと並んでいる数の体系で、一見すると微分積分とは相性が良くないように見えます。しかし、ゼータ関数やL関数を介在させることにより、(複素変数の)微分積分を用いて素数の性質を調べることが可能になります。このような意外性が、上記の研究分野に関心を持ったきっかけでした。

 ゼータ関数の零点に関する重要な予想として、非自明零点と呼ばれる零点は複素平面内のある一直線上に並ぶことを予期するリーマン予想(1859年提出、2025年8月時点で未解決)があります。リーマン予想と同値になる主張のうち著名なものを解説した本(K. Broughan, Equivalents of the Riemann hypothesis, Vol.1—Vol.3, Cambridge University Press. Vol.1,2は2017年、Vol.3は2024年出版)があり、3巻で合計1500ページにも及びます。ゼータ関数の一側面の解説書でこの厚さですので、先人たちのゼータ関数の零点研究の蓄積を感じさせられます。

整数論とその応用

 私の研究分野は純粋数学の一部であり、自分自身や分野の近い研究者の興味関心を原動力として研究を行っています。そのため、私自身の研究は地域や社会と直接のつながりを持つものではありません。

 ただ、より広い目で整数論分野全体を見ると、暗号理論などの実社会への応用があります。こういったもののうち基本的なものを、ゼミの学生さんと一緒に勉強させてもらっています。

数学のゼミ

 3年次のゼミでは、数学のテキストを複数のゼミ生で輪読してもらっています。テキストは興味を持って勉強を続けられるものならば何でもいいと思っていますが、初等整数論の本の場合が多いです。そして、4年次のゼミでは、3年次に学習した内容のうち、自身が特に関心を持つ部分を卒業論文にまとめてもらっています。

 3年次の輪読では、ゼミ生に本の内容を板書しながら自分の言葉で説明してもらっています。その際、当たり前のこととして本では説明されていないことについても、「何故そうなるのか」ということを頻繁に質問し、ゼミ生に答えてもらうようにしています。自分の頭で一つずつ考えることは社会に出ても重要だと考えているためです。

 卒論では、初等整数論の暗号への応用や、それに関連することをテーマとする学生が多いです。自分で例を作って計算する、プログラミングができる学生はプログラムを書くといったことをしてもらい、学習したことを自分の言葉でまとめてもらうことで卒論を書いてもらっています。

商大で学ぶことについての私見

 現在の大学生の多くは、卒業してから40~50年は社会で働くことになると思います。社会の変化や技術の発展についていくには、絶えず知識をアップデートする(学び続ける)ことが大切だと思います。また、独創性の高い仕事をするには、時間をかけて自分が納得できるまで粘り強く考える(または試行錯誤する)必要があるかもしれません。大学生のうちに幅広い学問分野に触れ、様々な分野の基本的な考え方を身につけておくことも、視野を広く持つという意味で大切だと思っています。

 本学は単科大学ですが、幅広い分野の教員が在籍しています。私個人としては、本学での学びを通じて上で述べたような能力(学び続けられる、時間をかけて粘り強く考えられる、視野を広く持てる)を身につけてほしいと思っています。


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