CLOSE
  • HOME
  • エバーグリーンからのお知らせ
  • 令和7年度第10回講義:山田 瑞希さん(H24卒/R6 OBS修了)「世界と北海道をつなぐ次世代の観光人材とは-タイ市場PRの現場から見えた観光の仕事とこれから-」

エバーグリーンからのお知らせ

2025.12.10

令和7年度第10回講義:山田 瑞希さん(H24卒/R6 OBS修了)「世界と北海道をつなぐ次世代の観光人材とは-タイ市場PRの現場から見えた観光の仕事とこれから-」

講義概要(12月10日)

 

○講師:山田瑞希氏(2012年小樽商科大学商学部経済学科卒業・2024年大学院商学研究科アントレプレナーシップ専攻修了/インバウンドプランナー)

 

○題目:「世界と北海道をつなぐ次世代の観光人材とは-タイ市場PRの現場から見えた観光の仕事とこれから-」

 

○内容:私は小樽商大の夜間主コースに入学後、ラジオパーソナリティを中心に仕事をしながら、6年半の在学期間を経て卒業した。やがて海外と関わる仕事がしたい気持ちがふくらんで、観光情報発信に関する業務を行うふたつの企業とOBS(小樽商科大学ビジネススクール)での学びを経て、フリーランスのインバウンドプランナーとなった。そうした経験と現在の仕事を概説しながら、これからの観光業界で求められる人材について、いくつかのヒントやきっかけを提供したい。

 

 

世界と交わるたくさんの「仕事の形」がある観光業界

 

山田瑞希氏(2012年小樽商科大学商学部経済学科卒業/インバウンドプランナー)

 

 

 

小樽商大在学中にラジオパーソナリティーに

 

今日の話は、タイや観光に少しでも関心のある方に届けばうれしいです。また、どちらにも今は関心がない方にとっても、仕事の見つけ方や卒業後のヒントとして受け取ってもらえれば幸いです。

 

私は北海道を拠点に、インバウンドマーケティングや観光分野の企画・調整を行う「インバウンドプランナー」として活動しています。札幌で育ち、小樽商科大学(夜間主コース)を卒業後、社会人としての実務経験を積みながら、大学院(OBS・小樽商科大学ビジネススクール)を修了しました。現在は主にタイ市場を中心に、日本と海外をつなぐ観光・エンターテインメント分野のプロジェクトに携わっています。

 

大学時代は夜間主コースの学生として、日中はアルバイト、夕方から大学に通う生活を続けました。大学2年生の秋ごろ、さまざまな偶然が重なって、ラジオ局でパーソナリティとして活動する機会を得ました。当時は明確な将来像があったわけではありませんが、「社会とつながりながら学ぶこと」や、「遠くの誰かに情報を届ける面白さ」を実感した経験は、その後のキャリア選択の土台になっています。

 

振り返るとこの時期の経験は、業種や職種にとらわれず、仕事を構造的に捉える視点につながりました。小樽商科大学での学びは、専門知識そのもの以上に、社会と学びを同時に進める姿勢を身につける時間だったと感じています。その姿勢が、私の現在の仕事観や観光業界の捉え方にもつながっています。

 

 

インバウンドビジネスの世界へ

 

いきさつは省きますが、在学中に一年間休学しました。その経験によって仕事に向き合う時間を持ったことで、自身の進路を見つめ直すことになりました。復学後は卒業と同時に、それまで続けていたラジオの仕事にも一区切りをつけ、次の挑戦として「海外と関わる仕事」へと関心を向けるようになります。

 

私的な旅行をきっかけに訪れたタイでは、人や文化との距離感に強い親和性を感じる一方で、当時高まりつつあったタイの人々の北海道への関心を現地で実感しました。この経験から、「北海道出身である自分が、地域の魅力を海外にどう伝えられるのか」、というテーマに関心を持つようになります。
その後、観光広告を扱う企業とインバウンド業務に携わり、海外市場ごとの特性や、情報の伝え方の違いを実務を通して学びました。国や文化が異なれば、同じ情報でも受け取られ方は大きく変わります。学生時代に培った情報発信の経験と、こうした実務経験が結びついて、現在の私の専門領域が形づくられていきました。

 

 

インバウンドプランナーとしての仕事

 

私は現在、インバウンドプランナーとして、主に日本と海外をつなぐ観光・マーケティング分野の仕事に携わっています。インバウンドプランナーという肩書きは資格や登録制度があるものではありませんが、海外市場を理解したうえで、地域や企業の目的に応じた企画を立案して、実行までを支える役割を担っています。

 

関わっている領域は、大きく分けて次の三つです。
ひとつは、海外市場に向けたプロモーションの企画・実施です。自治体や企業が外国人観光客に向けて情報を発信したいと考えた際に、どの国や層に、どのような伝え方が適切かを整理して、現地の文化や感覚を踏まえたプロモーションを設計します。市場調査や企画立案に加え、関係者との調整や実施段階のサポートも行います。

 

二つ目は、観光マーケティングの分野です。これはプロモーションの前段階にあたる仕事で、地域としてどのような観光客を迎えたいのか、どのような課題を抱えているのかを整理して、中長期的な視点で戦略を検討します。調査や分析、資料作成など、表に出にくい業務が中心ですが、観光施策の土台となる役割です。三つ目は、観光と親和性の高い文化・エンターテインメント分野に関わる業務です。立場や価値観の異なる関係者の間に立ち、企画や進行が円滑に進むよう調整を行います。

これら三つの領域に共通しているのは、相手の市場や文化を理解し、関係者の目的を整理したうえで、企画し、調整し、実行を支えることです。異なる背景を持つ人や組織の間に立ち、物事が前に進む環境を整えることが、インバウンドプランナーとしての役割です。

 

 

 

 

立体的に成り立っている観光の仕事

 

ここまでの話から、観光と一口に言っても、関わり方や仕事の形が非常に多様であることが見えてきます。
多くの方が思い浮かべる観光の仕事は、旅行会社や航空会社、ホテルなど、いわゆる「観光業としてわかりやすい職種」かもしれません。もちろんそれは観光産業の中核を担う重要な仕事です。一方で、観光を成立させるためには、その背後を支える多様な仕事も存在しています。
マーケティング調査やデータ分析、情報発信の企画、翻訳やコンテンツ制作、イベントの企画運営など、観光客の目には直接触れにくい業務も、地域の魅力を適切に伝えるうえで欠かせない役割を果たしています。インバウンドプランナーの仕事は、こうした「観光を支える側」の業務に位置づけられます。

 

観光産業は、表に見えるサービスと、その奥にある支援的な仕事が重なり合うことで成立する、非常に立体的な構造を持っています。この構造を実感してもらうために、簡単なワークを実施しましょう。

 

 

ワーク:「興味のある業界と観光・地域との関係を考える」

 

皆さんが関心を持っている業界や職種を起点に、それが地域や観光とどのように関わり得るのかを整理してみたいと思います。具体的には、以下4つの質問を用意しました。あなたの答えを記入したあと、それを隣の方と5分間でシェアしてみてください。

 

(1)自分の興味のある業界職種は?
(2)その業界は地域とどんな接点がありますか?
(3)その業界が観光とつながるとしたら、どんな役割がありそうですか?
(4)観光と関わった場合に、地域経済や暮らしへの影響にはどんなものがありそうですか?
(※各自個人ワークのあと、内容を隣席とシェア)

 

 

共有の中では、スポーツ、法律、広告、エンターテインメントなど、一見すると観光から距離があるように見える分野が多く挙げられました。しかし、人の移動や情報発信、地域との関係性という視点で捉え直すことで、観光との接点が自然に浮かび上がってきましたね。
ワークを通して、観光は特定の業界に限定されるものではなく、多様な分野が関わり合う「フィールド」であることが分かっていただけたと思います。観光をひとつの職業として捉えるのではなく、複数の仕事が交差する構造として理解することで、自分の関心や強みと結びつく可能性が広がるはずです。

 

 

地域の営みに観光を掛け合わせる

 

地域に根ざした営みと観光を掛け合わせることで、どのような可能性が生まれるのか—。例えば農業や食の分野で考えてみましょう。
地域で生産される農産物や食品は、その土地の風土や環境、雇用と密接に結びついています。これらは単なる生産活動ではなく、地域の歴史や暮らしを含んだ「地域資源」として捉えることができます。こうした営みが観光と結びつくことで、農泊やファームステイといった体験型コンテンツが生まれたり、地域ならではの加工品や土産品の開発につながったりします。さらに、フードロスや環境への配慮といった社会的な課題への取り組みも、観光と接続することで新たな価値として発信できる可能性があります。
入り口は農業や食であっても、視点を細かくしていくと、観光とつながる多様な事業の可能性が見えてきます。地域の魅力発信やブランディングにつながるだけでなく、生産者にとっては新たなやりがいや収入源の確保にも寄与するでしょう。

 

私が伝えたかったのは、「地域の営みに観光を掛け合わせることで、世界の見え方が大きく広がる」、という気づきです。北海道で働きたい、地域に関わり続けたいと考える人にとって、観光は特定の業界に限られた話ではありません。人口減少が進む地域社会においては、外から訪れる人の視点を取り入れたまちづくりが、今後ますます重要になります。
ですから職業選択の場面では、求人票に書かれている業務内容だけではなく、その仕事がどのように地域や人と結びついているのかを想像することが、仕事への理解や解像度を高めることにつながります。

 

 

これからの観光人材とは

 

最後に、インバウンドプロモーションの現場での経験を踏まえながら、これからの観光分野で求められる人材像について整理してみましょう。

 

海外に向けた情報発信やプロモーションの現場では、日本側が「伝えたいこと」と、相手側が「知りたいこと」の間にズレが生じる場面が多くあります。気候や距離感、生活習慣といった感覚の違いは、言語以上に大きな影響をもたらします。日本語としては正しく翻訳されていても、相手の文化や感覚に合っていなければ情報は届きません。
重要なのは、単に言葉を置き換えることではなく、「相手にとっての当たり前」を理解したうえで、どのように伝えれば意味を持つのかを考えることです。インバウンドマーケティングの本質は、言語の翻訳ではなく、文化や価値観の翻訳にあります。

 

こうした仕事に向いているのは、異なる常識や価値観の違いをストレスとして処理するのではなく、「なぜ違うのか」に関心を持ち、柔軟に受け止められる人だと思います。観光業界は、社会情勢や国際関係、災害などの影響を強く受ける分野でもあります。そのため、環境の変化を前提としたうえで、状況に応じて役割や関わり方を変えながら動けるしなやかさが求められます。
また、観光の仕事には、決まったひとつのキャリアパスがあるわけではありません。表に見える仕事だけでなく、その背後には多くの調整、分析、企画、支援の役割があります。自分の得意分野や関心に応じて、どこに関わるかを選ぶことができる点も、この分野の特徴です。

 

地域や日本の魅力を、日本人の目線だけで固定的に捉えるのではなく、少し距離を置いて眺めてみる。遠くから全体を見渡す。あるいは細部にぐっと近づいて観察する—。視点や距離を行き来しながら物事を捉えられる人にとって、観光は非常に奥行きのある分野だといえます。

 

 

 

 

<山田瑞希さんへの質問>教員より

 

Q)今日の講義にはOBS(小樽商科大学ビジネススクール)のご学友や関係者の皆さんが応援に駆けつけていますね。OBSでの学びとはどういうものであるかを、学生諸君に簡単に説明していただけますか?学生がふだん見ている風景とはちょっと違う学びの日常があると思います。

 

A)私が入学したのは35歳ころで、1学年は35名くらい、平均年齢は40歳以上でした。経営者、企業の第一線で働く方、学部卒業後すぐに進学した方など、バックグラウンドは多様でしたが、「働きながら自分を鍛え直したい」という強い動機を持つ人が集まっていた点が共通していました。
私自身は、独立を前提に入学したわけではありません。当時の取引先に経営者の方が多く、同じ目線で議論できる知見や判断力を身につけたいと考えたことが、進学のきっかけでした。インバウンド分野では、現場判断だけでなく、経営判断に近い視点が求められる場面が多くあります。
OBSでの学びは、知識の習得にとどまらず、実務経験を持つ多様な人材と議論を重ねることで、考え方や視野を大きく広げるものでした。また、名刺交換的な関係ではなく、修了後も続く実践的なネットワークが自然に形成される点も特徴です。進学をきっかけに新たな挑戦やキャリアの転機を迎える人も多いので、学びと実務が直結する環境でした。
また、在学中には「日本ビジネススクール・ケース・コンペティション(JBCC)2023」で準優勝した経験も、印象深い学びのひとつです。

 

 

<山田瑞希さんへの質問>学生より

 

Q)タイでの生活やお仕事で、いちばん大変だったのはどんなことですか?

 

A)大変だったのは、日本とタイで仕事の進め方や時間感覚、優先順位の置き方が大きく異なる点です。目指しているゴールは同じでも、その到達プロセスの考え方がまったく違うことがあります。
これはタイに限った話ではなく、異なる文化や価値観を持つ人たちと仕事をする際に共通する課題だと感じています。その違いを「間違い」や「ズレ」として否定するのではなく、前提として受け止めたうえで、プロジェクトが前に進む形を探り続ける必要があります。
そうした調整の積み重ねは簡単ではありませんが、同時にそれは、異文化の間に立って仕事を進めるこの分野ならではの難しさであり、同時に、面白さでもあると感じています。

 

 

Q)社会に出て辛かったこと、仕事をやめたいと思ったことはありますか?

 

A)学生時代から仕事をしながら学ぶ生活を送っていたので、私は「社会に出た瞬間」を明確に区切ったことがないのですが、これまで仕事を続ける中で最も厳しかったのは世界的なパンデミックにより観光業界全体の動きが止まってしまった時期です。関わっていたプロジェクトの内容や体制の変更が余儀なくされて、自身のキャリアも止まってしまったように感じて不安を覚えました。

 

 

Q)フリーランスの仕事を選んだ理由やいきさつにはどんなことがありましたか?

 

A)「どのような働き方が自分に合っているか」を考え続けた結果、フリーランスという形が最も適していると判断した、という表現が近いと思います。
直近まで在職していた会社に入った当初から、強い独立志向を持っていたわけではありません。そのため、今後についても、働き方は時代や状況に応じて柔軟に変化していけばよいと考えています。

 

 

Q)インバウンド全般の仕事で、日本人が苦手な分野とか、日本側でもっと改善すべきだとお考えのことについて教えてください。

 

A)日本側が課題として向き合うべきなのは、世界的な視点で日本を捉え直しながら、積極的に世界を知ろうとする姿勢にあると思います。
観光地としてなぜ日本が選ばれているのか。インターネットやSNSの時代において、日本のどの要素が注目されているのかといった点は、常に更新し続ける必要があります。日本人が「クール」だと感じているものが、必ずしも外国人にとって同じ価値を持つとは限りません。実際には、日本人の想定とは異なるポイントが、日本の魅力として評価されている場合も少なくありません。
また、世界を知るということは、単に情報を集めることではなくて、自分自身がインバウンドの立場になる経験を持つことでもあります。実際に外国人観光客として行動してみることで初めて見えてくる視点は多く、そうした体験の積み重ねが、インバウンド理解の土台になると感じています。

 

 

Q)語学を含めて、タイでのコミュニケーション術をどのように会得しましたか?

 

A)まだ十分に会得できているとは言えなくて、現在もそれは課題のひとつです。語学学習そのものに加えて意識しているのは、タイ人のコミュニティに入って、できるだけ多くの時間を共有することです。
語学の勉強だけでは知ることのできない生活や仕事の習慣、価値観を理解することで、言語以上に重要なコミュニケーションが可能になり、結果として仕事もうまく進むようになると感じています。相手の習慣や考え方を理解したいという姿勢を明確に示すことは、とても重要です。

 

 

 

 

Q)小樽でのインバウンド関連のアルバイトではそういう経験が積めるのかな、と思いました。いかがでしょうか?

 

A)とても良いと思います。外国人観光客と日常的に接するアルバイトでは、マニュアル通りにいかない場面が数多く出てきます。
そうした現場で得られるリアルな体験や気づきは、観光マーケティングにも直結するものであり、非常に有意義な経験になると思います。

 

 

Q)ラジオパーソナリティになったのにはどんな経緯がありましたか?

 

A)夜間主コースの友人に勧められて、アシスタント募集のオーディションを受けたことがきっかけです。そのオーディション自体は不合格でしたが、その後ご縁があり、番組を担当させていただくことになりました。

 

 

Q)学生時代の経験で得たことで、いまの生活に活かされていることを教えてください。

 

A)留学生との交流や、立場や年齢の異なる友人との出会いです。視点の異なる留学生の友人たちと小樽の街を歩くと、彼らが切り取る風景や思い出のポイントが自分とは異なることが面白いと思いました。それは、現在のインバウンドの仕事にも直接つながる経験でした。
また、私が在学中にエバーグリーン講座でさまざまな先輩の話を聞いたことや、マーケティング関連の授業での学びも、その後の大学院での研究や現在の仕事に活かされています。

 

 

Q)なぜバンコクを選んだのでしょうか?また観光に行くとして、バンコクのほかにおすすめのまちはありますか?

 

A)バンコクに惹かれた理由は、言葉では表現しにくいのですが、他に訪れた都市よりも自分に合っていて、過ごしやすいと感じたことです。また、当時はタイで北海道の知名度が高まり、ラベンダーやカニ、雪といったイメージを中心に北海道ブームが起き始めていた時期でもありました。
北海道とタイは気候や暮らしが真逆であるからこそ、その対比に面白さを感じたのも理由のひとつです。
バンコク以外では、北部のチェンマイもおすすめです。大都会であるバンコクとは異なり、落ち着いた雰囲気と洗練された街並み、歴史ある寺院が共存する魅力的な場所です。

 

 

Q)日本とタイとの違い、あるいはタイと北海道の違いは、山田さんの目から見るとどんなところにありますか?

 

A)インバウンドの視点から見ると、国や地域の違いそのものよりも、「同じ場所や体験であっても、何を価値と感じるかが大きく異なる」、という点が重要だと感じています。
例えばスキーというアクティビティをとっても、長時間しっかり滑ることを目的とする人もいれば、雪景色の中でスキーウェアを着て、写真を撮ること自体を体験の中心とする人もいます。表面的には同じスキー人気であっても、求めている体験の深さや楽しみ方は大きく異なります。

 

 

教員より

 

Q)最後に後輩たちへメッセージをお願いします。

 

A)最後までお話を聞いていただき、また多くの質問をありがとうございました。観光業に限らず、北海道で仕事をする中で、皆さんといつかどこかで一緒に仕事ができる機会があれば嬉しく思います。

 

 

アーカイブ

月別

資料
請求