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教員インタビュー 山田久就教授

  • <担当授業>
  • ロシア語Ⅰ,Ⅱ、外国語上級Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ(ロシア語)、基礎ゼミナール

山田 久就教授
YAMADA Hisanari


コーカサス山脈で話されているアバール語から言語一般の理論を見る

言語学という学問領域でアバール語の文法の研究を行っています。

言語は、音の時間軸上の最小単位である音素が複数個連続して意味を持つ最小単位である形態素となり、形態素が複数個連結して語ができ、語が複数個結びついて文が作られると考えられています。音素と音素、形態素と形態素、語と語の間の構造的な関係を研究する分野をそれぞれ音韻論、形態論、統語論と呼んでいます。私は主に統語論の研究をしています。

言語学では、いろいろな言語の分析・記述を行い、その成果を利用して言語一般に当てはまる規則性、一般性、普遍性を明らかにする理論的な研究がなされています。また、そうした理論をもとに個別の言語の分析・記述が行われ、さらに、それを利用して理論が修正されていきます。理論研究をさらに発展させていくには、まだあまり手がつけられていない多くのマイナーな言語のデータが必要であると私は考えていて、そうした言語の1つであるアバール語の研究を行っています。

黒海からカスピ海にかけてコーカサス山脈が連なっていますが、アバール語はコーカサス山脈北部のカスピ海寄り、ロシア連邦ダゲスタン共和国の一部でアバール人によって話されています。言語は分裂を繰り返し、多くの言語が生まれてきたと考えられ、世界の言語は共通の祖先を持つ言語の集まりである語族によって分類されます。ユーラシア大陸には、英語やロシア語などが属するインド・ヨーロッパ語族、トルコ語などが属するチュルク語族、アラビア語などが属するアフロ・アジア語族などいくつかの大語族がありますが、ロシア連邦ダゲスタン共和国にはどの大語族にも属さない言語がたくさんあり、アバール語もそうした言語の1つです。

あまり研究されていない言語を研究したい

高校生の頃、外国の街をひたすら散歩してみたいと思うようになったのと、新書等の本を読んでいて言語の構造への関心が生まれたことから、大学では言語学を学び、将来は大学教員になると決めました。

どの言語を研究していくのかを決めるにあたって、何に対してもマイナーなことが好きであったのと、留学するのに安く済みそうであったことから、ロシア語を研究することにしました。大学院に入って、ロシア連邦サンクトペテルブルグに2年程留学しました。留学を決めた時は、まだソ連だったのですが、留学に出発する直前でソ連が崩壊してしまいました。そのため出発が半年遅れ、すでにロシア連邦に変わっていましたが、社会主義の香りはまだ感じることができました。

サンクトペテルブルグでロシア語を研究している中、さらにマイナーなコーカサスの言語に関心が向き、ロシア語と並行して、アバール語の研究を始めました。サンクトペテルブルグから日本に帰って、ロシア語をテーマに修士論文を書いた後、アバール語の研究を行うためにロシア連邦ダゲスタン共和国の首都であるマハチカラに2年程留学しました。

マハチカラはいろいろな民族が住んでいますが、イスラム教徒が大多数です。サンクトペテルブルグでの生活も社会主義的なものを見ることができ、刺激的でしたが、マハチカラの生活では、それ以上に多くの未知なことに遭遇し、驚きの連続でした。

ことばを研究する早道はそのことばが話されている現地に住むことですが、どこへ行ってもたくさんの発見が待っているのではないでしょうか。

世界は広く、それぞれの国、民族はいろいろな点で違っている

日本も外国人が増えてきましたが、外国人がみんな英語を話せるわけでもないし、外国人をみんな同じようにとらえるのは無理があります。当たり前と思うかもしれませんが、外国人同士でも、想像以上にいろいろな点で違っています。エチケット、価値観、タブーなどなど。どういうことばに傷つくか、どのようなことばでほめると喜ぶか、どういうことを恥ずかしく思うかなど、さまざまです。

世界は広いので、日本人にはなじみのない世界がたくさんあります。いろいろな日本人がいろいろな世界を見て、みんなで情報を共有し、いろいろな角度から外国人との共生について考えていけるといいですね。

現在、インターネットの情報が氾濫していますが、現地に住んで、自身の目でその地を見て、現地の人々と交わると、想像以上に違った世界が見えてきますよ。

主にロシア語の授業を担当しています

主に、ロシア語を教えています。1,2年生向けの「ロシア語I、II」および3,4年生向けの「外国語上級(ロシア語)」です。「外国語コミュニケーション(ロシア語)」や「国際コミュニケーション(ロシア語)」の授業を行っていたこともありますが、最近は、そこまで担当する余裕がない状況です。ロシア語以外では、本学に赴任して以来15年程、現在の「言語・文学特別講義(言語学I,II)」に当たる基礎科目を担当していましたが、今は、基礎ゼミナールを5年程担当しています。

「ロシア語I、II」の授業に参加している学生の数は10~20人程度で多少寂しいですが、皆さん、積極的に取り組んでくれています。2年生の授業ではインターネット上にあるロシア語のテキストを読み、生のロシア語に触れ、ロシア語の授業から離れた後でも、必要になった時にインターネット上のロシア語から情報を得ることができる準備をしています。「外国語上級(ロシア語)」は履修者が毎年いるわけではないので、履修する学生がいるととてもうれしいです。

「基礎ゼミナール」では、ロシア語、アバール語、言語学から離れて、「外国人とのコミュニケーションにおける障害」という観点から表現手段、習慣等における日本人といろいろな外国人の違いについて学生達に調査テーマを自ら選んでもらい、グループ発表、個人発表、レポートに取り組んでもらっています。

マイナーな国にも目を向けよう

大学生になったら、時間を見つけて、海外を見る旅になるべく多く出て欲しいです。できれば、1年程留学して、その土地のことばを身に着けてもらいたいです。メジャーな国だけではなく、マイナーな国も見て、マイナーな国で留学生活が送れたら最高だと思います。人と違った知識を持っていることは、将来、大きな武器になります。海外に出るだけでもそうですが、現地の人の中へ溶け込もうとするとかなりな勇気が必要ですし、結構難しいです。将来、海外で仕事をする必要ができたとき、場所は違っていても、過去の海外経験が役に立ち、新しい場所に比較的楽に飛び込むことができるようになります。

未知の世界に出かけるのは、それはそれで楽しいですが、せっかくなので、出かける前にインターネットで予習をしましょう。予習をしていても、いざ現地に行くと、想像していなかったことがどんどん起こるのではないでしょうか。


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