- <担当科目>
- 管理会計論
岡田龍哉 准教授
OKADA Tatsuya
管理会計はいかに発展してきたのか

原価計算や管理会計は内部会計といわれることもあり、多くの場合、社会的な制約を受けずに実践される経営管理システムです。各々の企業等が置かれた環境に基づいて運用するシステムであり、社会的に定められたシステムとして運用されるわけでもないため、管理会計の知識・技術は個々の企業等における実践や研究の中で生まれてきました。
一方、そのように個々に生まれてきたシステムであるにもかかわらず、原価計算や管理会計といった名称で括られるように、社会全体としての共通認識が、いくつかこれらの中に存在していることもまた事実であり、そこに本質が見出せるのではないかと考えています。現在の原価計算や管理会計システムが各々の時代背景や経営環境等に基づく合理的な意思決定の蓄積で成り立っているのであれば、その展開の歴史を明らかにすることは原価計算や管理会計の本質を探るための1つの手段となり得ると考え、取り組んでいます。
人間臭さが魅力かもしれない
会計は数字を扱うイメージが強いので、「計算をする」ことが主な仕事であると考えられることもあります。もちろん、会計情報を計算等によって使いやすくまとめることができるというのは重要な側面です。しかし、もう少し腰を据えて学んでいけば、会計は一部の人がイメージするような無機質なものではなく、とても人間的な行為であることに気が付きます。
これまでに築かれてきたいくつもの会計システムも、その時々で人が判断や解釈を加えながら発展してきました。したがって、時代が違えば、人が違えば、今の会計とは全く異なる会計の体系になっていたかもしれません。今でも、組織や人が異なれば基本的には異なる会計システムを用いています。会計システム等がなぜ今の姿になったのかを考えることは、会計を利用する人の行動・考え方の本質を探ることであるともいえます。今、目の前の組織・人が行っていること、行いたいこと、行ってほしいことが会計システムを通じて伝わってくるような、この人間臭さが(個人的には)面白いと思えるところなのかもしれません。
地域産業の発展のために
北海道には歴史ある企業も多く、長く地域・社会を支えてきました。北海道は地理的に特徴的な地域であり、この地で長く発展してきた企業の実務から学ぶことは非常に多いと考えています。
しかし、時代が変われば経営管理実務も変化していくものであり、それに応じて経営管理システムもまた進化していくものです。経営管理システムに変化が求められるとき、過去、その企業がどのような経営管理システムを用いていたのか、その中で、特に強みとなっていた部分はどのようなものかを参照することは、より適切な経営管理システムの構築の助けになると考えています。いま、何を変えるべきなのか、あるいは何を維持すべきなのか。歴史から学ぶことが1つの手段となり得ます。北海道の産業が成長し、地域がさらに発展できるよう、北海道の企業を対象に会計の歴史を研究していきたいと考えています。
何に対しても疑問を持つゼミに
学びへのモチベーションは疑問から生まれるものと考えています。そのため、ゼミ活動の場ではできるだけ多くの疑問が生まれるよう、そしてそれを自ら解決するよう、取り組んでいます。会計に限らず、広く時事や歴史などをテーマに、全員で「なぜなのか」と問うことで、他者との知識の共有、価値観の理解、そして知識の醸成や知識の使い方の学びに繋がるよう活動しています。そうして培われた知識や技術が、将来の様々な場面で応用できるものになると考えています。
もちろん、メインテーマとして会計を据えていますので、会計に関する知識や技術の修得に向けた取組も行います。具体的には、テキストを軸にしたディスカッションや簿記等の反転授業を行いながら、学生が多くの疑問を持ち、自ら考えられるような場を目指しています。
小樽商科大学は魅力的
小樽商科大学の魅力は伝統とゼミ室にあると考えています。長く北海道の経済・産業を支えてきた実績があり、現在の教育・研究に高い水準で引き継がれていると感じます。本学での学びは実践的であり、学生も楽しみながら学んでいます。
また、個々のゼミ室が用意されていることは特徴的です。学生は専用のゼミ室で一緒に勉強をしたり、ディスカッションをしたりしています。同じ学びを志す仲間と気兼ねなく過ごせる場が用意されていることは、自主的に学び、考える時間をもたらしてくれています。あまり他の大学には見られない特長であると思いますので、ぜひゼミ室を活用して、仲間とともに成長していってほしいと考えています。
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