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教員インタビュー 田中圭准教授

  • <担当科目>
  • 学部:監査論、簿記原理
  • 大学院(現代商学専攻):会計学特講

田中圭 准教授
TANAKA Kei


現代ドイツ監査制度の研究

 会計学という学問分野で、監査論と呼ばれる領域を研究しています。みなさんが学校で成績表をもらうように、会社にも成績表があります。ただし「財務諸表」と呼ばれる会社の成績表は、会社自身が作ります。これが適正に作成されていると保証するしくみが財務諸表監査です。財務諸表監査の中心は、公認会計士による会計士監査ですが、企業の内部監査や監督官庁による検査を含めた監査制度全体に関心があります。

 会計・監査制度は国によっても多様な形があり、私の研究対象は現代ドイツの制度です。ドイツでは商法典を中心とした成文法規定を中心に会計制度が形成され、さらに今日ではEUにより加盟国に課される規制への対応も迫られています。長い歴史的背景を持った国内制度がグローバルに変化する会計・監査のルールを反映しながら変化していくあり方を分析することで、現代会計の性質を明らかにしたいと思っています。

会計学は無味乾燥な数字を扱うように見えますが…

 テストの成績や部活動での記録・点数など、何かの「数字」に喜んだり、悔しい思いをした経験はないでしょうか。大学入学後に初めて出会った会計学が扱う「数字」は、一人ひとりの人間の行動を決める手掛かりになったり、時として人間の行動を縛ったりする、私にとっては大変興味深いものでした。学部卒業後そのまま大学院に進学したとき、会計を研究するうえでとても大事なテーマだよ、と恩師から教えられたのが監査論です。当時は内部統制監査という新たな制度が日本も含め各国で導入される、国際的な会計・監査制度の大きな変革期でした。

 たとえば、不況やコロナ・ショックで企業が従業員を減らす、新卒採用を見合わせるといった行動をとることがあります。このような場合、企業への「悪影響」は企業会計上の数値により認識され(このままでは利益が減ってしまう・損失が出てしまうなど)、対応策が検討されているはずです。また上場企業は、公認会計士による監査を受けたうえで財務諸表を公表しています。投資家はこの成績表を参考にして、ある企業に投資するかどうかを決めるでしょう。様々な人々の経済的意思決定に利用される会計情報は、監査制度を通してチェックされています。監査は、経済活動の円滑化に重要な役割を果たしているのです。

監査はみなさんのすぐそばにあるかも

 さて「監査」と聞くと、自分の作業を監視されるようなちょっと怖いイメージ(できれば受けずに済ませたい?)を持たれるかもしれません。みなさんは買い物に行ったお店やアルバイト先で、店員さんが「(レジに)一万円入りま~す」という場面に遭遇したことはありませんか。これは大きな金額のお金を受け取ったことを複数の人が確認する作業で、「内部統制」という監査とかかわりの深い手続きの一部です。

 もし組織の中で一人の人に大きな金額を取り扱う仕事を抱え込ませてしまうと、誤りが生じやすくなったり不正への誘惑もあるでしょう。京セラの創業者として有名な稲盛和夫氏は、複数の人間で仕事チェックすることを「人を大切にするシステム」と呼んでいます。もしかすると監査は、決して完璧でない人間にとって優しいしくみという一面もあるかもしれません。

 最近では、財務諸表のような会計情報だけでなく、企業のサステナビリティについての情報開示についての監査の必要性も議論されています。多くの人にとって、人生の思わぬところで監査と出合う場面が今後いっそう増えていくと思います。

丘の上にのぼると

 観光地としても賑わう小樽の街ですが、教員として着任し地獄坂をのぼって静かなキャンパスに足を踏み入れたとき、歴史ある大学の一員になることに少しばかり緊張を感じました。商大は私の専門である会計学では戦前の高等商業学校時代からの長い学問的伝統があり、またかつて大学院生時代に読んだ阿部謹也『北の街にて』や伊藤整『若い詩人の肖像』の舞台でもあります。

 実際に授業が始まると学生たちは真面目かつ積極的、ごく自然に学生同士での協同作業にも取り組める印象で、教員として気付かされることも多いです。各ゼミにゼミ室が割り当てられていることをはじめ、商大の学びの環境は非常に充実していると感じます。

伝統と挑戦

 長い学問的伝統の蓄積があると同時に、新しい挑戦を歓迎する気風もあり、小樽商大はまさに思う存分学べる場所です。学部・大学院ともに多くの選択肢と研究環境が用意されています。みなさんが何かを「学びたい」と強く感じたとき、商大はきっと新たな仲間と出会い、成長できるスタート地点になると思います。


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