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学長対談企画 片山 健也 ニセコ町長

 

世界視野を持った「グローバルリーダー」を、地域の力へ。

その取組みのヒントはニセコ町のまちづくりにあった。

 

ニセコ町長 片山健也 × 小樽商科大学学長 和田健夫

 

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小樽商科大学が掲げる「No.1 グローカル大学宣言」とはグローバルな視野を持ち、地域経済の発展に貢献できる人材の育成。

小さな町から世界的な観光スポットとなったニセコ町には、共通する取組みや‘気づき’、そして将来へ向けた多くのヒントが隠されていた。

片山健也ニセコ町長の地方創生や連携・地域発展などの思いと共に国立大学の役割と求められる人材育成について語り合った。

 

 

町民が自ら考え行動する「自治」を基本とした町づくり。

 

和田

ニセコ町は「地域から、世界的な観光リゾート」へ飛躍的な発展を遂げられました。
まずはこの町の基本的な取組み、特に「地方創生」についてお伺いしたいのですが。

片山

第二次安部内閣が掲げた政策である「地方創生」は、都市圏への「人口一極集中」や日本の人口減少問題の克服を目指し、‘地域の特徴を生かした自律的で持続的な地域振興’を図るオールジャパンの取組みとして始まりました。

実はニセコ町は、国のこの方針が出される以前から「まちづくり基本条例」に基づいた取組みを行ってきました。町民一人ひとりが、自ら考え行動することによる 「自治」を基本としたまちづくり。その内容に、客観的なデータや数値目標を加え、私たちは「自治創生」と呼んで進めています。ニセコ町は現在人口は 4900人ほどで、この規模の町村では珍しく、人口が微増傾向にあります。2000年と比較すると約350人ほど増加しています。

和田

「町民が自ら考え行動することによる『自治』」とは具体的にどういうことでしょうか。

片山

この間、私は‘開かれた政治’を大切にしてきました。

たとえば予算策定と意思決定の過程を町民にオープンにし、税金がどこでどんな風に使われているのかが住民にわかるようにする。住民が参加することで財政民主主義が実践できると考えています。住民参加、情報 共有。町民の意見を丁寧に聞いて、役場を通じて町民がつながる、そして町民同士の連携も生まれる。町民の意見がたくさん出る中で町の方向性を考えていく。 それがまちづくりの原点であると思います。

また地域活性化の拠点として「道の駅」があります。白紙から住民と議論し築き上げた「住民自治」の駅です。その「ニセコビュープラザ」が、2014年重点「道の駅」(全国35箇所)として国土交通省から選定されました。国際リゾート・ニセコのインバ ウンド観光対応拠点として、また観光と農業の2つの産業を結びつける‘場’の創出として。これからも地元住民と共に地域の特徴を生かした‘ニセコの玄関口’を拡充させていきたいと考えています。

 

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学生の主体的な学びを支える仕組みづくり。

 

和田

素晴らしい取組みですね。町長のお話の中で「自主性」や「オープン」といったまちづくりのキーワードが聞かれました。その実践内容に大変共感できますし、勇気が湧いてきました。

小樽商科大学では、「No.1グローカル大学宣言」を柱に‘5つの挑戦’を設定しておりますが、そのひとつに「アクティブラーニング/コミュニケーション ラーニング」という教育手法を進めております。教員が一方的に講義を行うのではなく、学生が主体となり授業に参加する「能動的な学習」を涵養するもので す。

本学は‘10年後のスタンダード’を目指し、タブレット やPC、3壁面スクリーン、ディスカッションテーブルなどさまざまな最先端のICT機器を整備したAL対応教室を設け、教員と学生の双方向による授業や地 域と連携した課題解決型授業などを展開しているところです。町長のお話された‘住民と役場の開かれた関係性がまちの活性化を促す’取組みは、本学におけ る、学生の主体的な学びを支える仕組みづくりと共通するところがあると思います。開かれた環境が新しいアイディアを生み出し、深く考えるきっかけとなり、 社会的な対応力を向上させていくのだと思います。

 

 

大学・学生に期待すること。

 

和田

ところで小樽商科大学では、2013年に文部科学省より「地(知)の拠点整備事業」に採択されました。これは自治体と連携して地域の課題解決に取り組む大学を国が支援するもので、その成果を本学の教育及び地域社会に還元することを目的とした事業です。

2014年から、ニセコ観光圏における「長期滞在型観光における調査・研究プロジェクト」を立ち上げ、現状と課題の調査や勉強会を通じ、観光客のニーズと地域対応について検証させていただいております。

またこれまでも、ニセコ町にはインターンシップ生として学生を受け入れていただいたり、本学の地域連携会議にご出席いただきご意見を頂戴するなど相互に取り組みを深めてまいりました。今後さらに、町長が本学や本学の学生に期待されることを教えていただきたいのですが。

 

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片山

私共の日々の仕事や組織での活動において‘立ち止まって地域を見つめる’という機会はなかなか生み出せないのが事実です。学生さんが、ニセコ観光圏 における調査・研究を行っていただけることは、大変ありがたい試みで感謝しております。学生さんのインターンシップは2~3週間ではなく、思い切って1年 から2年という期間にしていただくのはいかがでしょうか。長い人生の中でのニセコの「現場」で過ごす1~2年は貴重な体験になることと思います。

まちづくりに興味を持ってもらい、将来は夢を抱いて地域に根付く。そんな人材を多数輩出して欲しいですね。泥まみれになって地域振興に向っていくバイタリ ティのある人材は魅力的です。職員の交流も長期的に考えていけたら嬉しいです。スキーシーズンはもちろん、夏のアクティビティや野外体験を含め、1年を通 じた滞在型観光地としての価値や課題も感じていただけたらと思います。

双方にとって柔軟な仕組みを模索し、自由な交流が実現できれば、新しい発見や発信が生まれてきます。

 

 

開かれた視野を養うこと、多くの価値観を知ることが大切。

 

和田

インターンシップの効用は何でしょうか。

片山

ニセコ町は、今まで全国各地からインターンシップを受け入れてきております。道内と関西の学生さんでは‘気づき’が違います。多くの辛らつな意見が飛び交ったこともありました。

当初は職員も素直に受け入れることができない状況もありましたが、今ではきちんと多くの意見を聞き入れ、吸収できる土壌ができていると思います。開かれた視 野を養うこと、そして違う分野や立場の方との交流をはかり、多くの文化、価値観を知ることは本当に大切です。お互いに持っている資産(人材や場など)を生 かしあうことで有意義な交流が図られると思います。

 

     

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有島記念館には大正期の作家有島武郎の足跡が紹介されており、この地で武郎は、
所有する農場全体を小作人全員の共有として無償解放することを宣言しました。
それが武郎が望んだ「相互扶助」の思想であり、今でもニセコ町まちづくりにおける
共通認識となっています。

 

未来の北海道を支える人材育成には

能力開発と多くの体験が必須。

 

和田

先に申し上げましたように、小樽商科大学は、グローバルな視野で北海道経済の発展に貢献できる人材(グローカル人材)を育成するため「No.1グローカル大学宣言」を2013年に行いました。

異文化理解や言語・コミュニケーション能力を養い、海外留学でさまざまな交流を深める一方、地域経済や地域の課題を学び、地域の立場からものごとを考え行動できる能力を育てることを目指しています。

本学は、国立大学の中でも、入学者に占める地元出身者の割合が最も高い大学です。将来にわたって北海道を支えていく人材を育てていくことがわれわれの使命と考えています。

一方、ご存じのように、国立大学の社会科学系学部は、今その存在意義が問われています。育成する人材像・能力とそれを達成する教育方法が見えないことに原因 があるようですが、私は、学部の名称を変えたり、カリキュラムに新しさを出すだけではだめで、知識・理論の伝授に加えて、学生に新たな「体験・出会い」の 場を提供することが必要であると考えています。留学、自治体や企業と連携した課題解決型授業、インターンシップ、社会の様々な分野で活躍している人との交流などが有効です。

 

 

自然に広がった住民意識の変化は

グローバル社会への一里塚に。

 

和田

グローバル社会における人のありかたに話を移したいのですが、町長は、学生がグローバルな視野を持って、地域で活躍し、社会に応えていくためにはどんな能力が必要とお考えでしょうか。

片山

ニセコ町のことでお話しますと、ニセコの資産は「環境」です。この環境を守る以外、ニセコの価値を守る方法は無いと思っています。

「観光」においても「農業」においてもニセコの優れた自然環境を保全し、育てることこそが、将来にわたっての「ニセコの信頼」を勝ち得ていくものと考えていま す。そして経済の発展や住民の潤いにつながっていきます。バブル崩壊後、ニセコの観光客は激減し、海外からの観光客を呼び込もうという意識は自然と広がり ました。住民に違和感、抵抗感はありませんでした。

そして国際交流員がスイス、カナダ、イギリス、オーストラリ アと世界各地からやってきました。地域住民と一緒に遊び、各国料理を作り、味わい、学芸会に参加したり、お祭には浴衣を着て交流を深めました。今では地域 一体となって海外の子ども達とも過ごす幼児センターやインターナショナルスクールもあります。ヒルトンニセコビレッジでは世界規模の人事が普通に行われ、 ニセコ町の外国人宿泊客数は昨年148000人、外国人移住者は161人で、いずれもここ10年間で約10倍になります。人口4900 人の町ですから、30 人にひとりが外国人ということですね。

この「小さな世界都市」はそんな歴史と共に歩んで きました。この間住民のみなさんは全く差別無く、自然体で生活しています。これからのグローバル社会を担う学生には、自主性と広い視野を持ち、多くの価値 観を柔軟に受け入れる幅をもってもらいたいと期待しています。環境を守り、大切に育てる。この風土こそがグローバル社会への一里塚であると思います。

和田

私は本日町長とお会いして、グローバル社会における人の育て方を実感することができました。そして小樽商科大学の「グローカル大学宣言」の意義と価値をあらためて確信いたしました。

本学は地域に根ざした大学としてこれからもさまざまな取組みを深めながら、地域と共に発展していきたいと考えております。

これからもよろしくお願いいたします。本日は有難うございました。

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