社会貢献・産学連携

第4回 一日教授会議事要旨(H17.10.20開催)

市民の方々との意見交換会「一日教授会」を,「街の振興と活性化」をテーマに,10月20日小樽グランドホテルで開催しました。丸井今井の閉店に象徴されるように,小樽の街の活気が失われつつある中で,商大が何をすべきか,何が出来るか,何を期待するかを市民の皆様と膝を交えて意見交換をし,商大が果たすべき役割について話し合われました。

会場には一般市民の方をはじめ,教職員,学生を含み,170人もの参加者があり,街の活性化に対する関心の高さや,商大に対する期待の大きさを感じさせる内容となりました。

今回は,1部で山田小樽市長,森川小樽商工会議所副会頭,作家の蜂谷 涼氏からゲストスピーチとして,それぞれの立場から商大に期待することをお話しいただき,2部では,フロアから意見,質問をいただき回答するという構成で行われました。

秋山学長から,商大の地域貢献の実績や今後の課題を説明した後,山田市長からは,地元産業・経済界との結びつきを深め,新規事業のアイディアを提案してほしい,また,市民・企業と学生が共に話し合えるような場を設置してはどうか等のご意見がありました。
森川小樽商工会議所副会頭からは,学生の柔軟なアイディアを街づくりに生かせるよう,市民,企業,学生の交流の場を設けてほしい,学生が卒業後も小樽に住み着いて街の活性化に貢献してもらいたいと話されました。

作家の蜂谷涼さんからは,観光学科の設置等,観光産業を伸ばすための人材育成を行ってもらいたい。また,文化の街小樽として芸能・文化に対して理解のある積極的な取り組みを期待するとの提言がありました。

引き続き行われた2部では,市民の方々から様々な意見や質問が寄せられ,最後に秋山学長から,来年も同じテーマで開催し,言い放し,聞き放しではなく,この一日教授会から具体的な成果を生み出したいとの挨拶で会議を締めくくりました。 

「一日教授会」意見交換議事録

◎市民の方々の質問・要望(Q)と商大の回答(A)の紹介

Q.学生と小樽市民及び企業等との交流を図ってはどうか。

A.学生の企業における就業体験を通じて,職業観を育成するため,インターンシップという授業を展開しています。正課教育の場面では,このインターンシップによって,企業や市民の方々と交流することができると思われますので,さらに多くの企業等に学生を受け入れていただくよう,ご協力をお願いします。
また,地元の方々を講師としてお招きし,小樽の文化や歴史について講義をしていただく「小樽学」という科目を開講しています。 この科目をさらに充実させ,学生に小樽の魅力をしっかり理解してもらい,地元講師の方々との交流に止まらず,広く市民や企業の方々との交流が深まるよう努めていきたいと思います。

※関連する意見として,
○学生と市民がもっとアイディアを出し合い,それを実現・発展させていくことも大切であると思う
○インターンシップだけではなく,もっと長期的に小樽の商店や企業などと携わることのできるカリキュラムを組んでみてはいかがか

Q.学生に小樽に住んでもらいたい。

A.学生の出身地域別割合は,小樽出身が6%,札幌出身が60%程度です。小樽に住んでいる学生は全体の30%程度となっています。
交通手段や交通網の発達に伴い,商大までの通学圏が拡大したことや,アルバイト等により学生の生活スタイルが変化したこと,そして何よりも札幌圏出身の学生が増えたこと,などが,小樽に住む学生が増えない要因と考えられます。
道外の入学者が増えれば,小樽に住む学生が増えるかもしれません。商大では,できるだけ多様な学生を受け入れるため,道外の高校生に対して積極的に広報活動に取り組んでいます。その効果が直ちに表れるとは考えていませんが,様々な地域の学生を惹きつけるために,今後も商大と小樽の魅力をPRしていく所存です。

※関連する意見として,
○札幌から通学している人の割合は?なぜ札幌に負けるのか?

Q.学生寮を復活してほしい。

A.かつてのように,相部屋で寝食を共にするような寮のスタイルを復活させることは,今の学生気質に合わないので難しいと思います。
現在,商大には一般学生のための寮はありませんが,外国人留学生向けの寮(国際交流会館)があり,全ての入居希望に応えられないほど好評を博しています。
一般学生用の寮については,今のところ,それほど多くのニーズがあるとは思えませんが,将来,入居を希望する学生が増えるようでしたら,日本人と外国人留学生の混住タイプの寮を構想したいと考えています。

Q.卒業後,小樽・北海道を離れる学生が多いので,小樽に就職して地元の発展に貢献してほしい。

A.全国各地から学生が集まり,商大で勉強してほしいと願っています。学生の出身地域が多様になれば,各地の文化や習慣に触れる機会も増え,視野や人脈も広がっていくことでしょう。
そのような環境で育った卒業生には,日本全国,世界各地で活躍してもらい,商大の社会的な評価を高めてほしいものです。もちろん,地元の発展に貢献する人材も必要ではありますが,多くの商大生が地元に残るのではなく,バランスよく各地に分散されることが理想だと考えています。

Q.小樽からの高校生を優先する地元枠のような制度を作れないか。

A.国立大学に入学者の地元枠を設けることができるかどうかは,建学の理念によって判断しなければなりません。
確かに,医師や教師の養成を目的とした医学部や教育学部のなかには,地域医療や地域の初等・中等教育を担う人材を養成する理念の下で,その地域の医師不足や教員不足を解消するため,卒業後の地元定着を義務づけたうえで,入学定員に一定の地元枠を設ける大学が増え始めています。
しかし,商大の場合,そのような地元枠を設けるにあたって,合理的な理由付けが難しいのではないでしょうか。商大としては,市内や道内の高校に出向いて説明会を開催し,数多くの地元の高校生に受験してもらい,そして入学してもらえるよう,これからも引き続き,入試広報に力を入れていきたいと思っています。

Q.小樽にサテライトは設置できないか。

A.小樽にサテライトを設置することについては,過去の一日教授会においても必ず意見が出されており,非常に良いアイディアであると受け止めております。
しかしながら,サテライトを設置する方向で検討する場合,商大としても,限られた予算のなかで実現することになりますから,費用対効果の観点から,学内外に説明できるものでなければなりません。つまり,サテライトを設置した場合の利用形態や利用頻度を明確にし,それに対するコストの負担を覚悟しなければならないのです。したがって,商大の一方的な地域貢献というスタンスで取り組むことには慎重にならざるを得ません。
商大単独のサテライトではなく,小樽の市民,行政,産業界,教育界が交流できる場所を確保する方向で,それぞれ相互に連携しながら検討することが実現への近道かもしれません。商大としても,腰を据えて検討したいと思いますので,利用形態に関する具体的なアイディアをお寄せいただくようお願いします。

Q.大学の施設を開放して欲しい。(大学開館前の広場を野外ホールに利用できないか。)

A.商大の施設は,学生に利用させることが第一義的な目的であることは,説明を要しないと思いますが,空き時間に施設を開放することについては,積極的に対応していきたいと考えています。
大学開館前の広場を野外ホールとして開放することは,月曜日から土曜日までについては,授業があるため利用できませんが,日曜日や祝日など,授業がない日に利用していただくことは可能です。
なお,現在,体育館を改築中ですが,建物が完成次第(来年4月以降),授業や課外活動に支障のない範囲で使用していただくことができるようになります。
その他の施設についても,商大の運営に支障を来すことがなければ,一般市民の方々に開放できますので,本日配付した「商大のトビラ」を参照してください。

Q.市民が大学生協を利用できないか。

A.大学生協は,商大の学生と教職員(大学生協の組合員)でなければ利用できないルールになっています。
だからといって絶対に利用できないかというと,必ずしもそうではありません。例えば,学生や教職員に知り合いがいれば,その人と一緒に,食堂のメニューを楽しんだり,コンビニ並みの購買部で買い物をすることができます。大学会館には,北洋銀行と郵便局のATMがありますので,ATMを利用し,そのついでに食堂で食事をしている市民を見かけることもあります。

Q.観光学科を新設できないか。

A.観光学科を設置することができれば,ある程度の志願者を確保することも見込まれ,大変魅力的な提案ではあります。
しかし,現実的には,観光学科の教育研究を担う新たな教員スタッフを確保し,文部科学省に学科新設のための設置審査を申請し,また,その運営のための予算も確保しなければなりませんので,極めて困難であると言わざるを得ません。また,学内の現在の人的資源もすでに限界に達しています。
観光学科を新設しなければ何もできないというわけではありません。商大では,観光の場面にも応用できる教育・研究を行っています。ビジネススクールにおける企業人養成のためのカリキュラム,CBC(ビジネス創造センター)のビジネス相談,学部で教育しているマーケティングや財務会計等,商大の得意な専門分野を活用して,少なからず観光産業に貢献できることがあります。また,観光をテーマとした公開講座の開催や,「小樽学」の講義内容を観光分野にも広げることによって,新たな観光資源発掘の手がかりを探ったり,観光産業の担い手を育成することも可能ではないかと考えています。

Q.少子高齢化時代を迎え,小樽の街づくりについて,小樽市とともに考えていったらどうか。

A.都市計画の研究に取り組んでいる教員もおりますが,小樽の街づくりについて体系的な研究はされていないのが現状です。また,これまでどおり,商大が市政に協力を惜しまないことは,言うまでもありません。

(小樽市長の意見)
小樽の人口は,昭和39年に20万人を超え,その後減少を続け,昨今の少子化の影響もあり,現在は約14万3千人です。街づくりの方向性としては,中心部に公共施設や商業施設,一般住宅を集約し,いわゆる「コンパクトシティ」を目指すのがいいのではないかと考えています。人口規模と高齢社会に適応した街づくりを検討していきたいと思います。

(フロアからの意見)
小樽は,世界各国の観光名所に劣らない観光資源と優れた文化を持っていることを再認識し,発展を遂げた他の都市を見習うことが必要です。また,寿司,硝子といったこれまでの観光資源に依存し続けるのではなく,新しい観光資源の発掘に力を注ぎ,魅力ある地方都市として街づくりを進めるべきだと思います。

(商大教員の意見)
商大にできることとできないことの見極めが必要です。商大生が小樽に住まないことの解決策や小樽の街づくりを考えていくには,行政や産業界からグランドデザインを商大に提示してもらい,その内容を基に,双方が連携しつつ検討していくといった方法でなければならないはずです。商大独自で進められるものではありません。

※関連する意見として,
○少子化に対して,どんな対応をしていくのか

Q.商大は商学には強いが,技術・科学的な面も強化できないか。

A.商大は幅広い学問領域をカバーしていますので,経済学や商学,企業法学といった分野ばかりでなく,社会情報学の分野には工学系の教員も配置しており,例えば商品のユーザビリティ(使い勝手)の研究で高い評価を得ている教員もいます。また,化学や生物学,物理学を担当する教員もいますが,そもそも社会科学系の単科大学ですから,技術・科学に弱いのは致し方のないことです。
しかしながら,地域社会や産業界と連携していく上で,社会科学の側面だけで貢献することにも限界がありますので,商大と医科学系及び理工科学系分野を有する大学が,相互に補完的な役割を果たすため,本年10月1日,札幌医科大学,北海道東海大学それぞれとの間で「文理融合型連携協力に関する大学間協定」を締結したところです。これを足がかりに,総合大学に引けを取らない社会貢献の実績を上げていきたいと考えています。

◎会場において回答できなかった質問・要望(Q)に対する商大の回答(A)

Q.OBネットワークを整備し,活用できているか。(情報収集,投資資金募集等,様々な活用を図れるのではないか。)

A.商大の同窓会組織として「社団法人 緑丘会」があります。会員数は約2万人で,東京池袋サンシャインビルに本部を置き,小樽をはじめ札幌,東京,大阪,京都など,全国各地に支部組織を設けて活動しています。
緑丘会の事業は,会員相互の親睦ばかりでなく,同窓生の募金によって設立された基金から,毎年一定額を商大に助成されるなど,物心両面で多大な支援をいただいています。
今後も緑丘会との連携を一層深めていきたいと考えていますが,社会一般的な傾向として,同窓会に加入する学生が減少し,商大においてもその傾向が顕著になっているため,緑丘会員の新規獲得に向けて積極的に協力するとともに,緑丘会の存続と発展に寄与してまいります。
また,緑丘会の協力により,就職アドバイザーの設置,企業セミナーの共催など,新たな事業が展開できるようになりました。さらに連携事業の可能性について検討を進めていきたいと思っています。

Q.教員の出版物(MBAテキスト等)を広く市民にPRし,様々なルートで購入できるようにしてもらいたい。

A.商大の教員組織が刊行した出版物として,ビジネススクールの教員が中心となって出版した「MBAのためのビジネスプラニング」,「MBAのための財務会計」,「MBAのためのケース分析」(いずれも同文舘出版刊)の3冊が刊行されております。
また,学部の教員が中心となって,大学の授業内容を高校生にも理解してもらうために出版した解説書「わかる経営学」,「美しい経済学」,「守る!企業法学」(いずれも日本経済評論社刊)も刊行されております。
いずれも一般の書店で購入できますので,最寄りの書店にお問い合わせ下さい(商大ホームページには,これらの出版物の簡単な紹介とともに,購入方法なども記載されておりますので,是非ご覧下さい)。
なお,「一日教授会」など,商大主催のイベント会場内における紹介についても,今後検討していきたいと考えております。

Q.今回の一日教授会について
(1)携帯電話の電源を切るよう,開会前にアナウンスして欲しい。

A.次回開催時には,開始時にアナウンスを行います。

(2)学生諸君から,「小樽についての希望,要請,将来像」,「地元に期待すること」についての発表が聞きたい。

A.今回の「一日教授会」に学生が10数名参加していましたが,意見交換の時間が不十分でしたので,学生に意見を述べてもらうことができませんでした。
次回は,ご指摘の点も踏まえ,また,できるだけ多くの参加者から,直接発言して頂くため,「一日教授会」の時間配分や進め方についても改善に向けて検討いたします。

Q.商大は,サラリーマンではなく,企業人,中小企業の経営者を育てて頂き,眠っている小樽経済人に気合いを入れて欲しい

A.商大は,昨年12月小樽商工会議所に,また,今年4月には北海道中小企業家同友会にも入会して,地域に根ざした大学として積極的に地域企業との交流を深めています。 会員として相互に協力を得ながら連携を図り,業務を推進していく中から,大学と地元の企業人との交流も生まれ,新規事業や,アイディアの提案等も出来るものと考えます。また,一般企業の中間管理職を対象としたMBAサマーセミナーを開催し,好評を得ておりますので,是非ご参加ください。

Q.公開講座に対する提案
・ロシア語公開講座で,文法面から日本人教員,発音面からロシア人教員の講義を受講できるようにして欲しい
・公開市民講座を1年1クールで10回1万円以内で,次のような内容を行って欲しい
(1) 家庭生活上の法律案
(2) 商店・中小企業のトラブルなど(法律)
(3) 伊藤整,小林多喜二などの文学論
(4) 情報社会といかにおつきあいするか
(5) 語学の重要性,小樽,国際貿易港として,ロシア語,中国語,韓国語
(6) ベンチャー,企業創立
(7) 新会社法
(8) 個人としてのファイナンシャルプランについて
(9) 精神性向上のため,芸術関係の講座を

A.今年の一般向け公開講座は以下のとおりですが,夜間主コースの授業科目を公開授業として聴講することができます。多彩な科目を公開しておりますので是非ご参加ください。
一般向けの公開講座は最近は語学に関する講座のみとなっていますが,生涯学習の観点からも,経済,商学関係や教養科目の講座開設の必要もあると考えております。現在の社会情勢に見合ったタイムリーな講座開設を検討していくうえで,ご提案いただいた講座を参考に,学内で検討させていただきたいと考えております。

2005年度公開講座 講 習 料
外国人による集中公開講座(前・後期) 各7,200円
   〃  集中中国語会話       7,200円
   〃  集中ロシア語会話   7,200円
   〃  集中韓国語講座        7,200円
外国語としての日本語とその教授法   7,200円

(フロアからの意見)
商大の公開講座を受講した経験があるが,障害者や高齢者も学べるよう受講対象を広げるとともに,さらに生涯学習の充実を推進すべきだ。 

Q.次のことについて回答して欲しい
・ 900万をピークに観光人口も減少したのはなぜか?今後の方向は?
・ 丸井今井撤退の原因は?今後の活用方法は?
・ 運河保存運動の小樽における経済史的位置づけは?
・ 小樽グランプリ構想の可能性と効果

Q.商大は,市立病院がどこに新設されたらよいと思うか

Q.経済面での地産地消をどう思うか。小樽近辺の地産をどう生かすか。農家を生かし,小樽発の物産をどう都市に売り込むか。経済界で,道路清掃とか,川の清掃を考えては?

Q.運河を拡大して,観光の魅力をアップして欲しい

Q.商大,市,市民,高齢者等で,「小樽の日」を制定し,小樽市内を清掃する

A これらのご質問は,商大単独では回答できない行政上の問題や,全市あげて考えるべき問題が含まれています。しかしながら,小樽の街の活性化を考える上で重要な事柄であることは確かなことでもありますので,行政,商大,産業界が一体となって分析し,検討する必要があるものと考えます。
また,小樽発の物産をどう都市に売り込むか,とのご質問に対しては,小樽市,小樽商工会議所,民間団体と商大との共同で,10月4日から16日まで,台湾百貨店「太平洋そごう」で小樽を売り込むキャンペーンを開催し,大変好評を博した経験があります。このように,国内外を問わず,小樽の物産を売り込む機会の拡大や販売ルートやマーケットリサーチ面における協力について積極的に行っていきたいと考えています。

 

Q.市民の商大ファンクラブ(クラブ活動の応援とか)を作っては?

A.市民の方々が自発的にファンクラブを作って頂けるような,学生と市民との交流の機会が必要と考えます。

Q.小樽駅~商大間に無料シャトルバスを走らせて欲しい

A.本学の財政状況では非常に困難と考えます。

    

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