講義テーマ:サッポログループの経営システム変革
               −純粋持ち株会社体制への移行−



1.講義内容の要約

 サッポログループは、1876年の開拓使麦酒醸造所設立のときから現代に至るまで大きく成長してきた会社である。近年には、サッポログループホールディングス株式会社へと商号変更し、純粋持株会社体制へと移行した。経営システム改革の背景としては、新ビジネスモデルの構築として、マーケットや時間軸が異なっている経営を分離した。すなわち、今まで携わっていた酒類・飲料・外食などの事業と、不動産の事業の分離である。またこれは、会計制度の変更に伴うリスクを回避するためでもある。他事業に携わることで、経営戦略の選択肢を拡大しているのだ。
 また、経営システム改革に伴って、グループ再編が行なわれた。再編前は、サッポロビール株式会社と、株式会社サッポロライオンの2社がサッポログループを引っ張っていたが、再編後はサッポロホールディングス株式会社を新設し、その傘下にサッポロビール株式会社や株式会社サッポロライオンを置くという形態をとった。こうして新体制がスタートしたのである。


2.問題提起及びコメント

 現在のサッポログループは酒類や飲料などの事業だけではなく、外食やホテル、そして不動産などといった事業などにも手を伸ばしている。しかしこういった多事業への参加は経営が難しいのではないかと思う。なぜなら、自論ではあるが、「会社」というものは基本的にある分野に特化することで確実に収益を上げることができるものだと思う。しかし、多くの事業に手を伸ばしていくということは、それぞれの事業でのマーケットの動きを随時把握しないといけなくなるのだ。その分社員一人一人への負担は大きくなり、些細なミスが大きな被害をもたらすことも考えられる。現時点では、サッポログループはサッポロホールディングス株式会社を新設し、その傘下として、サッポロビール・サッポロ飲料・サッポロライオン・恵比寿ガーデンプレイスなどといった株式会社を新設、統合、吸収分割するなどして純粋持株会社体制へと移行したが、この体制だとサッポロホールディングスにかかる負担が大きいのではないかと思う。サッポロホールディングスは傘下の株式会社を常に見ていなければならないはずである、しかし細かなところまで目を光らせることは難しい。また、お客様や株主などのステークホルダーに対して傘下の各会社の詳細な情報を与えるときに、その情報が確実性や内容の充実性の高いものとは考えにくいのである。経営システム改革を行なってから現時点までについては、株価やTOPIXは確実に上昇しており、至って順調である。しかし不測の事態や会社内の小さな綻びによって打撃を受ける可能性を常に孕んでいるのである。
 サッポロホールディングス株式会社が更なる発展のために経営基盤の強化やグローバル化への対応などといったものを考えることは大事だと思う、しかし『新規事業の創出』については賛同できない。それは前述したように、多事業への参加は見返りも大きいかもしれないが、その分被害が出たときのダメージも大きい「ハイリスク・ハイリターン」な行動だからである。そのことを考慮に入れて更なる発展を目指してほしい。


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