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学長対談企画 森井 秀明 元小樽市長

この街と人の中で、大学は進化し続ける。

元小樽市長 森井秀明 × 小樽商科大学長 和田健夫

(左:和田学長、右:森井市長)

100年以上の歴史を持つ小樽商科大学と小樽市民の関係は今も深く強くつながっている。さらに周辺地域との連携で新たな動きも活性化してきた。
地域との関わりの意義や、これから求められる人材育成について、森井秀明元小樽市長と意見を交わした。
※対談時、森井氏は市長在任だったため、以下の対談では「市長」となっています。

まちを活気付ける大学生のパワー

和田

小樽商科大学のルーツは、今から105年前の1911年、前身である小樽高等商業学校の開学にありますが、そこに至るまでには、小樽市民の熱心な誘致運動がありました。当時、函館、仙台、小樽による激しい誘致合戦が繰り広げられ、敷地の提供や建設費の寄附など、住民が一丸となった活動の結果、小樽高商の設置が実現しました。

小樽商科大学は、小樽市や小樽市民と非常に縁が深い大学と言えますが、小樽市にとって大学の存在とは、どのようなものでしょうか。

森井

小樽商科大学は、小樽にとってなくてはならない存在です。大学の理念や現在の取り組みは、時代に即応した、大変有意義で実践的なものであると感じています。大学は知的財産であり、まちにおける‘知の拠点’と言えます。それらは私たちの暮らしへ確実に影響を与え、学生さんの若さ・パワーは、まちのプラスの力となり、まち全体を活気付けています。

私は、本来生まれ育ったまちで学び、あこがれをもって地元の学校へ入学し、さらに卒業後は豊かな知識と実体験を生かしてその地で活躍する、という流れが健全であり、理想なのではないかと思っています。それはどのまちにおいても当てはまることではないかと。

小樽の強みを生かして‘人の流れ’を

和田

市長が公約で掲げられた「住みよいまち、人にやさしいまち小樽」にこめられた想いと将来の都市像「訪れる人を魅了し、暮らす人には優しい、市民幸福度の高いまち」(小樽市総合戦略)について、お聞かせください。

森井

地方の人口減少に歯止めをかけ、国全体の活力を上げていく「地方創生」の取り組みに基づき、平成27年10月に、小樽市としての総合戦略をまとめました。少子高齢化や札幌市への一極集中の進行などにより人口減少が急速に進んでいる小樽市において、この総合戦略は、まず市民の生活基盤や企業の活動基盤を確保することにより更なる発展を遂げるための道しるべとするものです。

まずは「子育て世代をはじめ、全ての居住者に優しい生活利便性の向上」、次に「小樽の強みを活かした産業振興と、新たな人の流れを創出すること」、そして「札幌圏や北しりべし・後志地域における広域的な連携の推進」を3つの基本目標としています。

小樽は民間の地域ブランド調査において常に魅力度ランキングの上位に位置しています。美しい自然や街並み、歴史的建造物などの資源・特性を生かし、札幌にはない生活環境の魅力を国内外に発信することで、ヒト・モノ・カネの新しい流れを活発にすることが出来ると考えています。小樽で生まれ、暮らし、教育を受けることで地元定着を実現する「樽っこプライド育成プロジェクト」や観光を軸とした地場産業の振興により、にぎわいを取り戻し、雇用創出を実現する「にぎわい再生プロジェクト」など、具体的な施策を推進しています。

地域コミュニティの中核的存在に

和田

小樽市の総合戦略においては、森井市長の地元市民に対する想いと共に、将来の発展に向けた‘新たな人を呼び込む施策の重要性’を感じました。「広域連携」はその実現をサポートする取り組みであると考えます。本学でも、地方・地域との広域的な連携を推進しており、小樽市・後志地域を中心にさまざまな活動が成果を生み出しています。

本学は、平成25年度に文部科学省より「地域と共創する北海道経済活性化モデルと人材育成」をテーマに‘自治体と連携して地域の課題解決に取り組む大学’として採択されました。この「地(知)の拠点整備事業」(COC事業)は、地域のマネジメント拠点の側面から大学の機能強化を図るものです。「しりべし地域」は観光産業をはじめ、農業、漁業、ものづくりが盛んである一方、人口減少などの課題も抱える北海道の縮図ともいえる地域。本事業では、ニセコ観光圏での長期滞在型観光に関する調査・研究、余市町の観光を主軸とした地域経済活性化に関する調査・研究など多岐に渡る教育研究プロジェクトを進めており、地域に欠かせない大学として、北海道経済の活性化を目指しています。

グローバルな視野で‘まち’を考える

和田

また、森井市長は‘小樽の強みを生かすこと、独自の資源や特性を見いだす大切さ’を語られました。本学に置き換えてみますと、小樽商科大学ならではの強み、目指すべき人材ということと思います。昨今のグローバル時代に求められる能力は、グローバル(地球規模)な視野で、ローカル(地域や国)の発展に貢献できる力、であると考えます。

地域に根ざしたグローバルリーダーの育成に向けて、本学では平成25年に「No、1グローカル大学宣言」を行いました。ここには全国の社会科学系大学や学部の先導となる願いを込めています。北海道で唯一のグローバルビジネス教育プログラムでは、‘地域と世界の両脚を備えた人材育成’のために、地域に根ざした地域キャリア教育や、世界で通用する経済・経営の専門教育、異文化理解と言語能力を育成する言語文化教育があります。

地域・産学官連携による教育では、官公庁や民間企業などで地域経済に深く関わってきた方を特別講師として起用した「地域学」や、民間企業や公的団体と協力しあいながら地域の課題に取り組む課題実践型授業なども充実しています。特に、「商大生が小樽の活性化について本気で考えるプロジェクト(通称:マジプロ)」は、小樽市・後志地域でいくつもの地域活性化プロジェクトを実践しています。平成20年に小樽市観光振興室と連携したことが始まりで、今年で9年目を迎えます。市内飲食店の協力を得て取材・撮影・編集を行ったクーポン付きガイドブックの開発、洋菓子店との新レシピ開発、小樽の梁川通りに住み込んで体感した商店街の魅力をSNSにより情報発信する取り組み、などがあります。

森井

小樽商科大学は、全国のどこの大学よりも「実学教育」に熱心であると感じています。

開学以来の伝統と実績で、地元企業や個人商店の方々と商品開発などを通じてまちの発展に貢献されている。先入観や経験値とは無縁の、学生だからこそできる発想力で、現場に新風を吹き込んでくれることはとても有り難いことであると思います。古くから商売をされていた方が学生のアイディアによる新商品の具体化で売上も上々に、というお話も聞きます。それがまち全体に広がっていくことで経済が潤い活性化していきます。学生とまちのいい関係はこれからも大切に育んでいけたら素晴らしいですね。熱意のある学生達と、小樽の程良いまちの規模がこのような関係を生み出したのかもしれません。市民の皆さまが好意的に迎えてくれる環境は、古くから地元に根付いている大学ならではのものです。このような「課題解決型の実践教育」は市役所内でも大いに参考にさせていただきます。

また役所の仕事においても学生さんと一緒に取り組めるプロジェクトができれば良いですね。お互いに新しい刺激を受けながら活性化していけば有意義な結果が生まれることでしょう。

異文化を知り、自らを振り返る

和田

グローバルな視点を育成することを目的とした取り組みでは、異文化理解と外国語教育に力を入れ、北の外国語学校とも謳われた本学の語学教育の一層の充実と、海外留学支援の拡大、海外の大学との共同授業等を展開しています。学生の海外留学制度にはスタディー・ツアーを中心とした初年次学生の海外派遣、短期の海外研修、協定締結校に留学する長期の交換留学等、多様なプログラムがあり、その内容や留学支援奨励金も充実しています。

小樽市は多くの外国人観光客が訪れるまち。グローバル社会における取り組みについてお聞かせください。

森井

小樽市はアジアを中心に海外からの観光客が年々増加しています。観光案内所に外国語対応の通訳を配置するほか、ニーズが高いWi-Fi環境の整備を行うことで、利便性・ホスピタリティの向上、また観光拠点への誘導によって外国人観光客の回遊性を高め、経済波及効果の拡大を図っていきたいと考えています。

また、グローバルな視点での観光資源開発も必要です。各国の観光客は、歴史・文化・風土の違いで、興味の幅が大きく異なりますので、常に現実を見ながら情報を集約していくことが大切ですね。クールジャパン「kawaii」やファッション・グルメがキーワードになったり、気づかなかったロケーションを切り口にしたり、さまざまな角度から掘り起こしていきたいと思います。小中学生の国際感覚を育むために、ALT(外国語指導助手)や小樽商科大学の留学生との活動や宿泊生活など「英語漬け」の時間を過ごす「小樽イングリッシュキャンプ」は毎年拡大しています。子どもの頃から外国人と話す機会を設けることで、自然と視野が広がっていきます。また、高齢者も含め小樽市民一人ひとりが、普段の暮らしの中で‘国際観光都市’の意識で‘おもてなし’ができる環境をつくりだすことが大切です。グローバル化は、あらためて自分達の住むまちを見直すきっかけにもなります。「小樽ブランド」を磨き上げる重要な視点とも言えます。

社会人のために、子ども達のために

和田

本学では、学生の教育だけではなく、社会人の学び直しにも力を入れ、ビジネス開発プラットフォームの構築により、地域の人材育成、北海道経済の活性化に取り組んでいます。ビジネス開発プラットフォームとは、本学が持つビジネス教育のノウハウとネットワークの基盤となる連携体制のことで、産学官連携による地域課題研究や、経営人材育成プログラムの開発を行っています。

小樽・後志地域においては、地域と連携した人材育成事業として、中小企業家同友会しりべし・小樽支部と連携した「しりべし未来創造大学」や、ニセコ町商工会と連携した「ニセコビジネススクール」を実施しました。

もちろん、その核にあるのは小樽市との包括連携協定の締結であると考えます。本学との連携、国立大学との連携に期待することとはどのようなことでしょうか。

森井

小樽商科大学のビジネス教育・経営人育成プログラムは、どの職業カテゴリーにあっても必要な知識です。行政においても「経営」という視点を生かして取り組むことは大変意義深いこと。市役所職員にも機会をつくりぜひ参加してもらいたいと思います。この地には学ぶ環境が整っています。自主的に学びたければその場は用意されています。これは小樽市のとても大きな財産です。

また、小樽市の子ども達の教育を考えたとき、学生さんとの接点をもっと増やしていけたなら、と思っています。中学生の部活動に商大生が出向き、直接指導に当たることで大きな刺激になると思います。モチベーションや技術レベルの向上のみならず、「このお兄さん、お姉さんが通っている学校に行きたい」といった漠然としたあこがれを抱くこともあるでしょう。そんな原体験が、将来に向けた人間形成につながってくると思います。小樽の魅力づくりに、大学生を軸とした新たな展開も加えていければと思います。

冒頭でもお話させていただきましたが、小樽に生まれ育った子ども達が、たくさんの学びを通じて、将来はこのまちで働き、暖かい家庭を築く、そして潤いのあるまちと人が育まれていくことが私の理想。その中心に小樽商科大学があれば素晴らしいことですね。

和田

本学は地域に根差した大学としてさまざまな取り組みを行ってきました。このまちと共に人と共に、これまで以上に小樽市との連携を強化し、進化していきたいと考えていますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。


Column 商大探舎 Vol.5

ビリケン山

開学翌年(明治45年)には野球部が創設されるなど、様々な運動部が生まれていた。大正になり、1914年に相撲部ができた。15年4月には有望な新人が加わり、「ビリケン山」と名乗った。末延一郎という学生で、新人歓迎相撲であっさりと5人抜きを達成した。ビリケン山の名は全道に知れ渡ったが、1917年末に退学した。ビリケン山が去ると、「ライオン山」「九州山」「地獄坂」らの力士が後に続いた。

ビリケン山(『小樽新聞』1916.4.16)

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