Charley's Eight
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―10月22日(火)― |
夕 チャーリーのL8+ 2杯出艇 ・次のターゲットは今週末ニュージャージー州プリンストンで行われるヘッドレース、2,5mileだそうだ。 チャーリーは基本的には自分で考えて見て盗めというタイプである。しかしここが大事という時には教えてくれる。キャッチのドリルとしてワンフィンガードリルを行う。両手中指だけをハンドルに引っ掛け他の指は伸ばすよう指示。方向を変える際に重さを感じる。余計な力みを極力排除した状態でテンションを感じさせている。Light touch、 Light handle、ここでもリラックスという表現を繰り返す。自分が選手として指導された時とまるで同じ言い方である。ひとつチャーリーが口癖のように繰り返した表現がある。 “Light hands before Changing the direction of the wheels!” wheelsはシートの車輪のことである。その動きの方向を変える前にリラックスしてキャッチしろということだろう。エントリーまでwheelsを止めるなとも言っていた。同じ事ではあるが選手の感覚に訴えるいいアドバイスだと思った。 フィニッシュの関係では水中フェザーが気になったのか抜いてからフェザーを強調。まず両舷でフィニッシュの姿勢を取ってブレードは水中。合図でドロップダウン+フェザー。 “move down the handle before you feather” このドリルを8wで行う。6wでノーマルに漕いで8wへ。水中強度を上げていってr.26 Full Pressureで3’〜4’。艇を返す時にインハンドローで漕がせる。徹底している(我々のインハンドローとちょっと違うのは遊んでいるアウトハンドをガンネル上に置かせてシートスライドと同じリズムで動かしている点。この方がスライドのスピードが等速かどうかチェック出来る)。ここからどうやらメインのトレーニング。チャールズ河をまたぐ橋をくぐるごとにr22-24-26-28と上げていくというもの。Very hard.計6kmほど。もちろん2杯並べて競争させる。先の3’漕で勝っていた方のエイトに2艇身ほどハンデをつけてのスタート。まるで自分達が受けていたコーチングと同じcompetitiveなものである。激しいメニューの中でも技術練習で確認させたポイントを指摘し続ける。水中の強さをあおるようなセリフはほとんど出てこなかった。といっても水中で手を抜いたら相手に負けてしまうのだからわざわざコーチが怒鳴りつける必要もない。ダメなら他の選手と替えられてしまうのだから漕ぐ方だって必死だ。選手の技術的な修正をコックスに求めることがある。誰それのスクエアリングが遅いと「ジェシー(コックスの名前)、もう少し早めにスクエア」と言っていた。もちろんメニューの指示もその場でモーターからコックスに告げる。結局ハンデをもらった方のボートが逃げ切った。そのボートは常に迫ってくるボートより2枚高いレートで漕いでいた。つまり迫ってくる方がr22-24-26-28で漕いでいるのに対し、r24-26-28-30で漕いでいた。でもgood fightであることが重要。別にとがめる事ではなくOKだ、という認識。 |
―10月23日(水)― |
夕 チャーリーのL8+ 2杯 昨日と同じクルーにつかせてもらう。メニューも昨日とほぼ同じで週末のヘッドレースを見据えてのことだろう。長い距離を全力でタフに漕がせている。 またインハンドローにこだわっている。今日はインハンドのみで両舷全力漕をやらせていた。Keep swinging the body 上体を使ってスウィングの力で腕を引きつけろ。フィニッシュでアゴをハンドルより後ろへ持っていけとも言っていた。 夕方の練習を終えたチャーリーと私はサッカーの練習をやっている長男Charlesを迎えに艇庫近くのグラウンドに行った。サッカーはアメリカではマイナーなスポーツなのでは?と聞くと子供たちの間ではそうでもない、近い将来アメリカでもメジャーなものになるだろう、とのこと。チャーリーの子供達は赤ん坊のSophieを除いて皆習い事をしている。長男はサッカーとピアノ、長女のEmilyは水泳とピアノ、次男のEricはアイススケート。チャーリーによるとどれも奥さんが熱心にやらせているのだそうだ。「Wifeは何でも子供達にやらせようとして焚き付ける。自分はもう少しのびのびやらせたい方なんだけど」。帰りの車中で今日の練習はどうだった?と尋ねるチャーリーは結果より子供の努力を尊重する優しいパパであった。Charlesにボートを漕ごうとは思わない?と聞くとあっさり「サッカーの方が好き」と言う。チャーリーが助手席の私に向かって苦笑い。「でも父さんとダブルスカルに乗った事があるよ」とすかさずCharlesが付け加えた。 |
―10月24日(木)― |
朝 どこかよそのクラブのシングルスカラーの練習を見る。体も大きく、見た感じキャリアを感じさせる上手なスカラーである。多分彼の方からチャーリーにコーチして欲しいと頼んだのだろう。 まずノーワークを見たいとチャーリーが言う。(こっちでは日本のいわゆるノーワークをpaddleと言う。日本で使っているパドルと勘違いしてはとんでもない目に遭う。“I wanna see you paddle”と言われたら「ノーワークで流して漕ぐのを見たい」という意味である。)1分も見ないうちに技練を指示、Pause at foot、フェザーの状態でハンドルが自分の足の上に来たところで止まる。二本普通に漕いでまた止まる。シングルスカルでやるには難しいドリルだが上手く出来ている。 ボディセットは両サイドのハンドルの高さ、それをキープしたままハンズを横に広げていく感覚をチェックしている様子。またミドル〜フィニッシュでの上体の弱さも気になったようで、“keep the body firm”つまりフィニッシュで上体をガクッと落とすなと言う指示である。昔シットアップというと皆フィニッシュで背中をビタッと止める漕ぎ方があった(というか私がやらせていたのだが)が、それとはちょっと違う。あくまで背中はkeep swinging、でも背中が丸まって下に落ちないようにset the body firmということだ。ビタッと止めるというのは実は物理的に考えると艇のスピードに対しマイナスに作用する。艇が水から受ける摩擦抵抗は加速の2乗に比例して増大する。つまりキャッチからフィニッシュまで均等に加速させていく必要がある。フィニッシュで背中をビタッと止めると感覚的には強くフィニッシュを引けているように思われるが、フィニッシュの一点に集中して加速させる漕ぎになりがちなのと、艇にわずかながら衝撃を与えてしまうという事が、艇に対し余計な抵抗を作り出してしまう。いわゆる「加速曲線にトゲが出来る」という状態がそれ相応の摩擦抵抗を生むという訳である。総合して考えると強いフィニッシュを引くには背中を 丸めないこと、チャーリーから借りた本にはChest upと書いてあった。胸を張る、胸を上げる。もちろんキャッチでも。そして体重の乗せてlean back、その体重を腕で引き継いでエルボーバックである。 その他チャーリーが言った表現では“sholders over the hip through the middle”これも上体スウィングの適切なタイミングについての言及だろう。背中の飛びが遅いから ミドルで肩が尻の上を過ぎるように意識せよという事だ。 この後短力を10本から15本くらい漕がせる。特にフィニッシュを見ている。ここでもkeep holding the body つまり背中を落とすなと言っている。Move your head to the bow とも言っている。これは分かり易い。でもキャッチから頭を後ろに飛ばしてしまわないように注意すべし。 メインのメニューといったものは特に無く、技術中心の練習。一つ一つ進めていく中で、必ずどう変わったか、どう感じたかを聞いていたのが印象的だった。今日はコーチングを受ける方もそれなりのレベルだったため、チャーリーも手応えを感じていたようである。言った事への反応が良いとやはり気持ちいいものである。 |
夕 チャーリーのL8+につく。今日は週末のヘッドレースに向け最後の練習。 メインメニューは2’-2’-1’-2’-2’ レートはr26-28-30-28-26 今日もインハンドで全力漕、その後両手で漕ぐ。必ず違いを分からせるようにやっている。インハンドローの時“make the body swing help your arms”つまりスウィングを使って腕引きを助けろ、腕だけで引くと弱いからスウィングの力も利用してフィニッシュしろという事だ。swing more! またr20で4WのPower Row を20本交互に数セット行う。To develop strength and be smooth 筋力トレーニングのつもりで強く、なおかつスムースにボートを動かせ。 フィニッシュでボディを固定。 ストレッチャーから足を離すな。 |