ほとんどの授業において,レポート課題や中間・期末テストによる評価(ブルーム的に言えば総括的評価)が行われています。これは,学生に対する動機づけの面でも,教育資料の収集の面でも必要な教育活動のプロセスといえるでしょう。
教育心理学における教育評価の分野では,「良いテストとは何か」について長年議論されてきました。ここでは,論文体テストと客観テストを取り上げ,その長所と短所について紹介します。
論文体テストは,「述べよ・論ぜよ」という設問に対して自由に解答を作成させる形式のものです。さらに細分化すると,挙例・定義・比較・関係・批判などに分けられます。例えば「ダブルフォルトとは何か説明せよ」は定義を問うものであり,「芝コートとクレイコートの長所と短所を述べよ」は比較に関する問題です。
論文体テストの長所は,知識だけではなく思考力や表現力などを総合的に測定できることです。また,「ただ知っている」レベルから「説明できる」レベルに持ち上げることができることも,理解の深化という観点から大きなメリットといえるでしょう。
短所としては,採点者間で評価が異なることが挙げられます。その理由として,採点者の好みや採点順序,その学生の日頃の行い(光背効果)が考えられています。近年,採点者間の評定のずれに対応するため,コンピュータによる採点の可能性が模索されています。特に,LSA(Latent
Semantic Analysis:潜在意味分析)という手法が注目されていますが,2006年現在では実用化には至っていません。今後の発展が期待される分野です。
客観テストは,記号や文字の選択によって解答する形式のものを指します。その長所は,論文体テストの短所をカバーしたものと完全に一致します。解答が明確に定まっているため,採点者間による評価のずれは一切生じません。また,採点においても論文体テストと比較すると,かなり容易であるといえます。
その一方,断片的な知識しか測定できないこと,また,いいかげんな解答でも正答と扱われる場合があることなどが短所として挙げられます。例えば,5つの選択枝から1つを選択する問題では,1つを選択すれば20%の確率で正答とみなされます。さらに,マルとバツの2択のみで構成されたテストでは,そのチャンスレベルは50%となります。これは,マルかバツのどちらかを書いておけば,確率的には5割は得点できてしまうことを意味しています。そのため,客観テストを作成する際には,慎重な選択枝の設定が求められるといえるでしょう。
論文体テストと客観テストのいずれにおいても,明確な長所と短所があります。「良いテスト問題」を作成するためには,これらの特徴を把握し,両者を適度なバランスで配置する必要があります。
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