FDに対する関心が高まる中,学生による授業評価を実施する大学が増加しつつあります。では,この授業評価はどのような観点から行われているのでしょうか。
1月22日に開催されたFD講演会において中京大学の浅野誠教授は,大学の授業改善が(1)内容改善(2)説明提示改善(3)学生の活動改善の三段階を経て達成されること,それゆえ授業評価もこの3つの観点において行われる必要があること,を指摘されました。その上で浅野教授は,多くの大学において(1)と(2)の点を中心に授業評価のアンケートが行われているが(3)に関する質問項目をアンケートに設けている大学は少ない,と述べています。実際,本学における「授業改善のためのアンケート」の項目を見てみますと,「教師の教授法」に関する質問項目が7項目であるのに対して「学生」に関する質問項目は3項目に過ぎません。その内容は,授業への出席率や授業に対する満足度を聞くものです。
授業評価のこうした傾向は,学生の学習要求の発掘,あるいは学習への動機づけに授業がいかなる機能を果たしているのかについてあまり関心が払われてこなかったことに由来するものと考えます。学生の学習経験と授業との関連性が見過ごされてきたわけです。そのため,授業評価は教員の教授技術の評価と同一視される傾向があるのではないでしょうか。
授業改善の最終的な目的を学生の行動変容に求めるとするならば,授業評価は授業を通じて形成された学生の学習経験のレベルにまで踏み込んだものになるでしょう。具体的には,授業を通じて何らかの発見があったか,新たな問いが生じたか,自分で調べてみたいこと,教員に確かめてみたいことができたか,といった点についてのアンケート項目を設けたり,自由記述を通して聞いていくということが考えられます。京都大学をはじめいくつかの大学では,こうした観点に基づく授業評価の試みが始まりつつあるようです。
FD専門部会 岡部善平
|