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講義テーマ:「経営戦略としてのM&A」
1.講義内容の要約
2000年、企業経営者のM&Aに対する考え方が大きく転換した。日本企業の合併・買収件数は急速に増加し続け、2006年には2,775件を記録し、1995年の5倍にもなった。M&Aとは、合併(Merger)と買収(Acquisition)の頭文字であり、合併・買収だけでなく、営業譲渡や株式譲渡、資本提携等を含めた広い意味での企業提携の総称として、今日用いられている。
M&Aがこれだけ普及した背景には、持ち株構造の変化(市場への流通に加えて、外国人投資家の保有率がアップした)、資金調達手段の変化(銀行から借り入れる間接金融から、社債・株式等マーケットから仕入れる直接金融へ)、会社法の制定がある。
2007年の日本企業によるM&A買収額ランキングにおいて、第7位に「ツバキナカシマ経営陣・野村プリンシパルファイナンス」がランクインしているが、これは、MBO(Management
Buyout:経営陣買収)によるもので、M&Aの手法の一つである。しかし、MBOを実施するのに先立って、経営陣が買収に十分な資金を持っていないことが多く、買収先を担保にすることで、経営陣は金融機関・投資ファンドから資金を調達する。ここには、LBO(Leveraged
Buyout)の特質も備わっていると言える(@)。
戦略的意識を念頭にしたM&Aをする主な目的には、次の5つが挙げられる。@事業の多角化:既存の事業を有する企業の買収により、新しく開拓するよりも、時間コスト面で大きな節約になり、市場参入リスクが小さい。A時間の短縮:新規に参入するよりも、時間の短縮が大きく期待できる。B投資コストの節約:新規参入に比較して投資コストが節約できる。C人材の確保:優秀な人材を被買収企業から受け入れることが出来る。D企業規模の拡大:スケールメリットが得られ、より早く企業規模の拡大が可能になる。
さらに、M&Aの手順についても是非知っておきたい。買収目的の明確化→買収対象企業の選定→買収対象企業に対する買収戦術の策定→買収交渉の開始→Letter
of Intent(基本合意書)の締結→買収事前調査及び買収監査→最終的な買収方法の決定が一連の流れであるが、中でも、買収事前調査及び買収監査は重要である。株主調査、営業力・技術力調査、資産/借入契約、不確定責など、調査及び監査の対象は多岐にわたる。
2.問題提起及びコメント
経営学者のピーター・ドラッカーの「企業が失敗するのは、間違ったことをしたからでも、正しいことをうまく出来なかったからでもない。企業の事業環境を規定していたビジネスのルールが変わったことに気がつかなかったからだ」、という名言は、私も好きになった。経営に関する知識はほとんどないが、「的を射た指摘をする方だな」、と素直に思った。
また、講義終了後、「道内でもM&Aに関する最近の話題はあるだろうか?」という疑問が残った。新聞のWebページを検索したところ、2月1日、北海道銀行と北洋銀行が、有能な後継者不足に悩む経営者の為にと、企業の合併・売却も含めた総合的な相談に対応できる専門部署を開設した(A)ことが判明した。関係者の狙いは、M&Aの手数料収入と、経営者の退職金運用によるビジネスチャンスである。両銀行が後継者問題の解決を支援するのには、「本来業務の企業向け融資の伸び悩み」というはっきりとした理由がある。
最後に、エバーグリーン講座を受講して本当に良かった。様々な職業に就いている先輩の方々から、大変貴重なお話を聞くことができた。私のような夜間主コースの学生も、都合がつく限り是非受講してほしいと思う。
@.MBOとは? やさしい経済講座 http://www.fxprime.com/excite/bn_ykk/ykk_bn29.html
A.北海道新聞 「後継者問題対応を充実 北洋銀が相談シート、道銀は窓口 M&A仲介も」
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/73803.php
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