講義テーマ:「北海道の活性化のために」
             −観光を中心として−



1.講義内容の要約

 近年北海道は観光地として国内及び海外からも高い評価を得ている。広大な自然やそこから得られる豊富な食材などが北海道の魅力である。特に東アジアからの人気が高い。しかし、観光入込客数の85%は道内観光客であり、海外からの観光客が増加しているとはいえ、入込客総数自体も伸び悩んでいる現状にある。最近では旅行会社などで多様なプランが用意され、観光の目的や形態も変化してきている。
 北海道が今後観光地としてより発展していくためには、変化し続ける観光形態に対応して新たな魅力的なポイントを作っていかなければならない。北海道といえば従来自然を売りとしてきた。より自然と触れ合えるような体験型の観光やアウトドアを軸として自然から得た新鮮な食材をアピールした健康とグルメを売り出していきたい。また、一度訪れるだけでなく「また来たい」と思ってもらえるようなサービスも展開していかなければいけない。リピーターをなくして観光は繁栄しないのである。
 北海道が観光地として繁栄することによって、様々な面で経済効果が期待される。これは政府や大企業に対するものだけであってはいけない。地域社会経済の発展にもつなげていく必要がある。その大きなチャンスが今目の前に迫ってきている。洞爺湖サミットが今まさに観光業界で注目されている。既に北海道のPRを目的とした9ヶ国語のパンフレットなどの作成など活動が始まっている。サミット開催地近辺の地域経済などの繁栄も期待され、様々な企業も動き始めている。その際にもやはり北海道ならではの魅力を最大限に生かしていくことが求められている。


2.問題提起及びコメント

 北海道で生まれ育った私たちにとって北海道が観光地として目覚ましく発展していくことは非常に嬉しく思う。経済発展や地域活性化などにも大きな期待を寄せている。しかし、私が最も危惧しているのは、北海道人にとっての環境の変化である。確かに多くの人がこの地に訪れたり北海道ブランドの品物を買ったり、観光を楽しんでくれることによって私たちの生活がよりよくなるだろう。とはいえ、マイナスの面がないとは言い切れないだろう。例えば、観光客が残していく大量の廃棄物はどこにいくのだろうか。それらの処理にかかる膨大な費用は北海道の大きな負担となるだろうし、また北海道の最大の魅力である自然が損なわれる可能性も高い。
 また、現在洞爺湖サミットをきっかけとして観光を盛り上げようと努力されているが、これはこれから先も持続していくことができる計画なのだろうか。今は廃れてしまった駅前の商店街の再建などが計られているが、サミットが終わった後にはまた多くの店が閉店を余儀なくされる予感がしてならない。どのくらいの期間でどの程度の補助を持って道はこれらの小さな商店を援助していくのか、先をきちんと見据えている計画であるのかが非常に気になるところである。
 経済発展のために観光を、観光のために道内の改革を、道内の改革のために北海道人の生活を削るなんてことはあってはいけないのである。いかなる計画が練られているのかを私たち自身はもっと調べて理解していく必要があると思う。


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