講義テーマ:国際経営の理想と現実

1.講義内容の要約

 今回の講義では、長年、企業の海外進出のコンサルティング業務等に関わってきた長田さんによって、国際経営の現状や理想について語っていただいた。
 現在、多くの日本企業が海外進出を果たしている。しかし、海外進出を成功させている企業はそれほど多数存在しないというのが現実である。
 まず、海外進出の目的であるが、日本企業は1985年のプラザ合意以降の円高により、為替リスクを回避する手段として海外進出を行った。またアジア等発展途上国では安い労働力が入手できること、北米でのローカルコンテンツ問題、欧州や北米での関税回避など、さまざまな問題を解決できることを意図して海外進出に乗り出した。
 しかし、海外進出はその目的を安易に解決できるほど容易なものではなかった。失敗の要因はいくつか考えられる。まず文化・風習の違いから来る人々の仕事に関する意識の違いである。ドイツを例に語られたが、ドイツは日本に比べて仕事への熱心さに欠けている。そのため、残業はほとんどなく、病欠や休暇を多くとる。また品質管理に関する意識は低く、柔軟性もない。またこの文化の差異に対し日本企業が理解しようとせず、現地化に遅れているという問題もある。日本人駐在員は、英語があまり話せない。だから現地でも日本人とばかり交流したり、日本親会社とのコミュニケーションは日本語で行うという。だから現地の理解は進まない。さらに現地で優秀な人材を採用できないという問題も大きい。多くの現地人は、日本企業に勤めたがらないのだ。このような多くの要因により、日本企業は海外進出を失敗に終わらせ、撤退している。
 こられのことを踏まえて、企業の海外進出の思想的な姿とは、進出のプラス面、マイナス面をよく調査し、慎重に戦略を練った上で進出することであると言える。そして実際に進出し成功の見込みがないと判断したら、すぐに撤退することが重要なのである。
 その他、長田さんのメッセージとして、語学の達人になること、決算書を読む能力を身につけること、統計を学ぶこと、この3つに熟達することで一流になれると語られた。



2.問題提起及びコメント等

 海外進出の難しさを語る中で、長田さんが強調していたことは、現地の人々のmentalityの違いである。仕事への熱意が違うために、なかなか上手く行かないということである。
 このことに対して私は国特有の風習が人々に与える影響の大きさを改めて深く感じた。国際化が進展し、国境がなくなりつつあると言われる中でも、精神面まではボーダレスにはならないのだと実感した。日本が年功序列から成果主義に移り変わっていること、働きづめではなく、余暇も大事にするようなってきていることなど、ずいぶん欧米型の考え方が取り入れられている。しかし講義を聴いて、表面的なシステムは変わっても、日本で育った人と、欧米で育った人が同じmentalityを持つことは不可能だと思った。今後どんなに国際化が進んだとしても、ボーダレス社会として、違和感なく一緒に働いていくことは無理だろう。ただし、理解を深めるよう努力することは可能なので、考え方が違うことを十分に念頭に置いた上で、積極的にコミュニケーションを図るべきである。


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