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1.講義内容
講師の紀国郁夫さんが日製産業(現:日立ハイテクノロジーズ)の経理部長に着任した1980年から、日製産業の中間決算トップ発表が始まった。そして以後20年間、トップ発表を続けることとなる。
決算トップ発表を可能にするには、いくつかの秘訣があった。会社をあげての2倍、3倍の努力やOA化の推進、問題案件の早期処理などあるなか、一番の秘訣は経営管理制度が充実していたことである。この経営管理制度の各要素として、@課別損益制度、A在庫・信用限度制度、B長期停滞会議制度、C社内資金利子制度、D資金本店集中制度、E為替予約制度資金、F資金運用理念、が存在した。その中で特に重要であったのが、C社内資金利子制度とE為替予約制度、F資金運用理念の3つであった。
まず『社内資金利子制度』であるが、これはお金が入ったら支払いを行なうという、一般的な「入金」の考え方を基にしている。当たり前のようであるが、これが非常に大事であり、商社でありながら借金ゼロということにも大きく寄与した。
次に『為替予約制度資金』である。これは発注をした時点の為替での取引を行なうことを意味している。これによりその後為替レートに変動があっても、それによる損が発生しない仕組みになっている。
そして『資金運用理念』である。本業で得た利益を運用して資金を増やすのであるが、その際根本にあるのが、営業外で大きな損は出さないという考え方だ。あくまで運用は本業に付随するもので、そこで本業を脅かすような損を出してはいけないというものである。
このような経営管理制度の下、トップ発表を続けてきたわけであるが、その成果として社内協調精神及び事務の早期終了・発進や業績の向上ばかりでなく、OA化の無料の企業広告にもなるという事実が挙げられる。トップ発表にはそういった利点が存在する。
2.コメント
一企業の第一線で活躍されていた紀国さんのお話はすごく刺激的であった。その中でも特に印象に残っている言葉が2つある。1つは「社会に出て求められるのは、自分で判断し行動する力」である。大学までのマニュアルを暗記するような能力ではなく、その場の状況によって臨機応変に対応する力。そしてもう1つは「上司と喧嘩しても、もっと上が見てくれていれば問題がない」というものだ。この2つの言葉は自分が正しいと思った道をまっすぐ突き進んでこられたという、自身の生き方を示すものであったように思える。
本講義では決算トップ発表については勿論、今後企業の一構成員として生きていく中で、持ち続けなければならない気概を学ぶことができた。
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