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1.講義内容の要約
外交を考えるということは、そのまま自分の将来や生き方について考えることにもつながる。自分が暮らしていく世の中が、広い視野で見てどんな立場であるのか。社会の中で生きていくなかで、どんなことを心がけて行動すればよいのか。本質的なところは、外交も我々の普段の生活も変わらないのである。
日本の外交の三本柱は、国民とともにある外交、自由で豊かな世界を目指す外交、世界に発信する機動的外交である。この中でも、国民を守り、平和・安全・繁栄を守って伸ばすことは外交の最大目的であり、日本はこのために日米安全保障条約と国連こそが最も重要であると考えてきた。また、「情けは人のためならず」という考え方に立ち、ODAにも力を入れてきた。最近では国連常任理事国入りを目指す動きも活発になっている。
今、日本の外交で最も重要な相手国は、アメリカと中国だ。アメリカは言うまでもなく世界を動かす経済大国であり、日本にとっては同盟国でもある。集団的自衛権を認めるか否かの問題等、長い付き合いといえども絶え間なく変化を遂げる世界情勢の中で解決すべき問題は更に山積みになりつつある。中国はここ何年かで飛躍的な経済成長を見せ、経済力はもうすぐ日本を抜く勢いだ。これからますます成長を遂げて世界の中心に立っていく国であるから、小泉首相の靖国神社参拝問題をはじめとする諸問題を早急に解決し、現在の「不仲」を修復していくことが望まれる。
しかし実際には、外交は一国間同士の折り合いの問題ではない。常に世界中の第三国も関わってきて、利害関係など問題は更に複雑化し、なかなか事は進まない。全てがうまくいくには、人間関係と同じように、まずは自分の意思をはっきりとさせて誤解のない堂々とした言動をとり、皆に「もったいなくて傷つけたくない」と思ってもらうしかないのだ。
2.問題提起及びコメント等
上記のとおり、日本は国連常任理事国入りを目指しているが、いまだそれは達成に至らないままに議論を続けている。議論の内容とはどんなもので、原因は何なのであろうか。
日本の常任理事国入りに反対する意見のほとんどは、常任理事国は国連軍に率先して兵力を提供するという1947年の合意や、「戦略的指導」に責任を負う軍事参謀委員会に参謀総長などを出す義務があることから、憲法第九条によって戦争の放棄・戦力の不保持を明言している日本は常任理事国としての責任の負担が難しいというものだ。これに対して、憲法の枠を超さない範囲での責任に留める協定を結ぶべきだとか、改憲するべきだとかいう意見がある。
そもそも、日本が国連常任理事国入りを目指す目的とは何なのか。常任理事国入りは、憲法第九条の問題と相まって難しい問題だ。だからこそなぜ常任理事国入りを目指すのか、本来の目的を明確化し主張することが重要なのだ。そこさえ確立していれば、常任理事国入りという形以外にも世界の平和と安全を追求していくために出来る事は数多くあるはずであるし、それを実際に行動してみれば各国からの評価も変わって新しい道も開けるのではないか。被爆国として、平和憲法を持つ国として、戦争を放棄した国として、現在よりも強い発言力を持って世界の平和と安全を目指す。それこそが日本だからこそ出来ることであり、日本が常任理事国入りを果たす意義でもあるのではなかろうか。それでなければ、日本の常任理事国入りは単に利害関係上の問題に他ならない。
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