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1.講義内容の要約
講師の土井尚人氏が手がける事業は次の3つである。インキュベーション事業、経営人材育成事業、そして経営支援事業である。儲けの源泉を見つけ、それをどのようなタイミングでいかなる手段を使って沸きださせるか。この民間企業の主目的といえる営利追求行為に対して難色を示すベンチャー企業の問題解決、ビジネスイノベーション支援が氏の経営する事業の内容である。
講義では様々な具体的事例を挙げながらケーススタディを紹介してくださった。一つは消費者側と企業側のギャップを発見し、その差を埋めることにより成功を導く方法である。つまり「不安・不満・不便」などの「不」のつくところにビジネスが存在するということである。二つ目はビジネスモデルの統合である。既存のビジネスモデルを組み合わせることでより効果的に利益を上げることができ、それまで分離していたビジネスモデルの複雑さが解消され、顧客が把握しやすいという利点がある。三つ目は商品用途・商品価値の変更と転用である。同じ商材で高付加価値サービスを作り出すことによって顧客層を広げ、異業種分野への開拓チャンスを得ることができるのだ。
これらのケーススタディ以外にも多くの事例から得られた原理が存在するが、総じて共通していなければならないのは自分の会社の「強み」を捉え、その「強み」を生かす「機会」に気付くという企業姿勢である。氏は「強み」の捉え方としてマイケル・E・ポーターが提唱した3つの競争基本戦略(コストリーダーシップ・差別化・集中化)を引用し、そして「機会」に気付く仕組みの作り方を社内、社外、時代変化の3つの側面から説明してくださった。
2.問題提起及びコメント
ピンチは契機である、というのが事業成功のポイントとなる考え方であり、企業が生き残る為のキーワードであることをこの講義を通して学んだ。様々な具体的事例をケーススタディに沿って紹介していただき、事業が成功していく過程を容易に楽しく理解することができた。くすぶっていた事業が一つのアイディアで好転し飛躍的な利益をもたらすようになり、あるいはそれほどの利益が見込めない事業でも視点を変え想像力を働かせることで思いもよらない収入を得ることができるのは、事業に携わるものにとって最大の醍醐味であり、また企業冥利に尽きるというものだろう。
しかし一方で、企業のそうした努力や斬新な発想の裏側には、いかに消費者を狡猾に欺くかという考え方が、望むと望まざるとに関らず利潤追求行為の結果として存在してしまう。もちろん企業側は消費者を欺こうなどとは思ってもいない。当たり前であるが、消費者あるいは顧客のニーズに的確に、誠実に応えてこそ企業は存続しうるのだ。つまりここで私が言いたいのはピンチを契機に変えることに溺れ、本来の企業目的(理念)から逸れてしまい、欺くことに特化し始めてしまう企業が少なからず出現してしまうのではないか、ということだ。今のところそのような例を見聞きしたことがないので(闇金以外は)この心配も他愛のないものに終わるのだろうが。
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