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授業情報/Course information

科目一覧へ戻る 2023/03/17 現在

科目名/Subject 経営戦略論
担当教員(所属)/Instructor 内田 純一 (商学研究科)
授業科目区分/Category 昼間コース 学科別専門科目
開講学期/Semester 2017年度/Academic Year  後期/Fall Semester
開講曜限/Class period 金/Fri 3 , 金/Fri 4
対象所属/Eligible Faculty 商学部/Faculty of Commerce
配当年次/Years 3年 , 4年
単位数/Credits 4
研究室番号/Office
オフィスアワー/Office hours
更新日/Date of renewal 2017/03/06
授業の目的・方法
/Course Objectives and method
 観光事業を中心としたサービス業のケースを用いながら、経営戦略論を<幅広く>学びます。

 担当教員がもともと専攻していたのは経営情報学ですが、これまでに、広報論と観光学の分野で併せて14年の教育研究歴を持っています。本学ビジネススクールに移籍してからは2年目です。

 そうした経歴を持つ関係上、経営戦略論のなかに、広報論や観光学の知見を導入し、さらにWebビジネスやソーシャル・メディアに対応するトピックを盛り込むことで、講義に独自色を打ち出すことにしました。

 観光事業を中心としたサービス業の事例を多く扱うことで、従来の製造業ベースの経営戦略論では、あまりとりあげられることの少なかった理論や実践も広く紹介できると考えています。

 冒頭で経営戦略論について<幅広く>としたのは、一般的には経営戦略論の基礎的領域とは見なされないものの、発展的あるいは応用的には関連してくるはずの領域を本講義では含んでいるからなのです。

 一般に経営戦略論の大きな構成要素は、
  1.資源戦略
  2.競争戦略
  3.ドメイン戦略
の三分野とされています(榊原清則著『経営学入門』、日本経済新聞社、初版2002年・第2版2013年)。

 本講義では、この三大要素を柱としながらも、観光事業を中心としたサービス業の事例で学ぶことで扱う理論の幅を拡張します。近年、観光分野にはWebビジネスやソーシャル・メディアを活かした事業も多く存在しています。こうした新しい実践面の取り組みについて、どのような戦略的アプローチを適用しうるのかについても、本講義では考察します。

 このように、経営戦略にかかわる基礎的論点から最新のトピックまでを加えることで、伝統的な理論だけでなく、最新の現象や実践課題に対応していきます。

 なお、講義は講師による一方向の説明に終始するのではなく、受講生と講師あるいは受講生同士の間で、意見交換やディスカッションを行うなど双方向の形式でも行われます。そのため知識の定着だけでなく、質問力、ディスカッション力を重視します。
達成目標
/Course Goals
 小樽商科大学の長い歴史の中で、「経営戦略論」という名の科目が正式にカリキュラムに組み入れられるのは平成29年度が初めてのことです。

 従来、経営戦略論は製造業の事例で講じられてきました。例えば日本で長年、経営戦略論の教科書として流通してきた『経営戦略論』(石井淳蔵・奥村昭博・加護野忠男・野中郁次郎著、有斐閣、初版1985年・新版1996年)において、経営戦略の三大要素について解説した章を見てみましょう。「第2章 競争戦略」では、ビール(キリン、アサヒ)、VTR(ソニー、ビクター)など国内製造業が扱われています。また、「第4章 ドメインの定義」では、富士写真フィルム、花王、シャープ、日本電気(NEC)、キャノンといった日本のメーカーが事例として扱われています。さらに、「第5章 経営資源展開の戦略」では、フォード、テキサス・インスツルメンツ、GE、3Mといった米国製造業を例に説明されています。

 いずれもそれら理論が生まれる背景になった実証研究が工業分野で行われたことから当然のことですが、サービス業の研究も近年進んできており、既存の理論に新たな考え方を提供しています。以下では前述の三大要素ごとに、新たな考え方がどう関わるかを具体的に説明しておきましょう。

 まず、「資源戦略」については、伝統的に自社が保有するヒト・モノ・カネといった経営資源の資源配分、そしてそれらの経験効果、多角化、シナジーといった観点が扱われてきました。観光事業では、これに観光地内の伝統文化や歴史遺産、自然の豊かさといった「地域資源」の問題が付け加えられます。自社の保有資源でない地域資源が、事業運営上の重要概念になってくるということです。いま地域資源を含めた資源戦略の考え方が地域中小企業にとって不可欠な視点になってきています。さらに、そうした地域資源は一つの企業の力だけでは整備できないものが含まれているので、国や地方のガバナンスとともに論じなければならない場合も多いのです。

 次に、「競争戦略」については、業界構造分析にもとづくポジショニング(差別化、集中、コスト・リーダーシップ)の考え方を採用することが広く定着しています。これらは業界や市場の垣根がしっかりと区分された分野では現在でも有効な視点として機能します。ここではポジショニングに加え、政府規制や業界標準化、製品ライフサイクルについて学ぶのが通例です。ところが、観光事業を対象にした場合、海外からの訪問者が国境だけでなく業界や市場の垣根までも越えてきます。自国をベースに築いた競争優位性は意味がなくなり、自らの規格がグローバル・スタンダードを握っていても、世界中の多様な文化に対応できるわけではありません。観光事業はこうした「インバウンド」の文脈での新たな競争を考えるのに最適な分野です。そして観光に限らず「自社がここにいる」ということを相手に知らせるインバウンド・マーケティングはあらゆる事業で求められてきています。

 最後に、「ドメイン戦略」については、ドメインを訳して事業領域の戦略と呼ばれるように、企業がどの顧客を相手にどのような機能を提供するか、といった企業の生存領域の定義付けに関する問題を扱い、さらにその認識を企業側・従業員側・顧客側が共有しているかというドメイン・コンセンサスの議論を扱います。ドメインは保有技術の応用可能性や、獲得した市場との親和性をもとにその拡張が議論されるのが普通です。しかし、観光事業にかかわらずサービス業では、技術や市場によって自社の生存領域を決めるよりも、どんな価値をもたらそうとする企業なのかという、よりコンセプチャルな次元でのドメイン定義が重要になっています。インターネットが生み出したウーバーやAirbnbなど昨今注目されるシェアリング・エコノミー下のサービスは全く新しい発想でドメインの定義が行われた例でしょう。

 以上の通り、観光事業やサービス業によって経営戦略を講じることには一定のメリットがあります。

 日本のGDPに占めるサービス業の割合も、就業者の人口もすでに7割を占めているという現実があります。担当教員は、いまの大学生に求められる経営戦略論とは、工業分野を対象とする研究から生まれた既存の戦略理論をサービスにあてはめて考えることのできる応用力や、新しいサービスを戦略思考によって自ら生み出せるような構想力をつけることだと考えています。

 こうした考えを反映し、本講義の履修を通じて得られる能力・技能の達成目標を以下の通りに設定しました。

 ・経営戦略の理論についての全体像を把握し、自分の言葉で説明できる
 ・経営戦略論にもとづきながら、実践に適用しうるプランを構想できる
授業内容
/Course contents
 本講義は、2講連続で開講される4単位科目です。1コマ目を担当教員から理論について説明する講義形式とし、2コマ目を受講者参加型により事例について討議するディスカッション形式とする予定です。

 週ごとに扱う主題と、含まれる主なトピックは以下の通りです。

1.【イントロダクション】:戦略と戦術、軍事戦略と企業戦略、組織は戦略に従う

2.【目標の設定】:ビジョン、ミッション、アイデンティティ

3.【企業と社会】:広告、広報(PR、IR)、企業社会責任、ガバナンス

4.【伝統と革新(1)】:ラグジュアリー・ブランド論、モード、ファッション

5.【伝統と革新(2)】:破壊的イノベーション、企業成長論、アントレプレナー

6.【競争戦略】:ポジショニング(三つの基本戦略、5 Force)、バリューチェーン

7.【資源戦略】:リソース・ベースト・ビュー、コア・コンピタンス、VRIO分析

8.【ドメイン戦略】:成長マトリックス、事業コンセプト、ドメイン・コンセンサス

9.【ビジネスモデル】:事業システム、ビジネスモデル・キャンバス

10.【オープンとクローズド】:モジュール化、アーキテクチャ、デザイン・ルール

11.【デザインと経営】:デザイン・ドリブン・イノベーション、サービスデザイン

12.【戦略論と地域】:産業クラスター論、立地論、地域産業集積、地場産業

13.【サービスマネジメント】:経験価値、サービス・ドミナント・ロジック

14.【国の戦略】:インバウンド、プレイス・ブランディング、地政学

15.【総括】:戦略論の新たな可能性(イノベーションの民主化がもたらすもの)
使用教材
/Teaching materials
作成中(開講時に指示します)
成績評価の方法
/Grading
期末試験:50%
小レポート:30%
積極的参加度:20%
成績評価の基準
/Grading Criteria
秀(100-90):内容を完全に理解し、かつ独創的な考察力あるいは発想力を有する
優(89-80):内容を完全に理解している(知識を応用することができる)
良(79-70):内容をほぼ理解している(知識を保有している)
可(69-60):内容の一部を理解している
履修上の注意事項
/Remarks
・2講連続で15週にわたって開講される4単位科目
・講義形式+ディスカッション形式の授業スタイル
・ケース(観光事業が中心)についての予習が毎回必要
リンク先ホームページアドレス
/URL of syllabus or other information
https://www.otaru-uc.ac.jp/~uchida/
備考
/Notes
情報機器、視聴覚機器を講義の一部で利用
遠隔授業
/Online class
遠隔授業/Online class

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