佐野 博之

         
学生へのメッセージ

 私の専門である公共経済学は、家族,企業,地域社会,政府の各々がどのように役割分担をすれば、ひとり一人の豊かな暮らしが実現できるのかを追求する学問分野です。その答えはそう簡単に見つかるものでもないし、たった1つであるとも限りません。でも、それだけにとてもやり甲斐のある学問であると言えるでしょう。経済学はお金もうけのための学問だという漠然としたイメージを持っていませんか? 他国で飢えと病気に苦しむ子供たちを支援するために、豊かな国の国民ひとり一人ができることと政府がやるべきことは何か。これも経済学における重要な研究テーマなのです。

担当科目:公共経済学

 公共事業、環境政策、年金問題、医療制度改革...。今日私たちが直面するこれらの諸問題を解決するために、政府はどのような政策を遂行していくべきなのか。これは、公共経済学が取り組むべきテーマの一つです。公共経済学ではまず、政府が役割を担うべき公的部門とは何かを明らかにした上で、とるべき政策を考えていくことを目的にしています。しかしながら、今日の経済社会においては、国や自治体が担うべき役割について十分な検討がなされないまま、不必要な部門にまで公的な介入がおよぶ事例が少なからず見受けられます。このような政府による経済への過剰な介入は、我々国民全体の利益を損なう結果になることが知られています。もはや政府は常に正しい行動をとるのだという前提で議論をするこれまでのスタイルは、あまりにナイーヴだということが言えます。それゆえに、公共経済学は新たな役割を求められるようになりました。その役割とは、国民全体の利益を顧みない政府を前提として、政府の役割やそのあり方を研究すべきであるというものです。これは、今日わが国が取り組まなければならない構造改革と密接に関連している重要なテーマでもあるのです。

担当ゼミの紹介

今年度の私のゼミは、3年生8人と4年生11人でスタートします。ゼミではテキストが指定され、各ゼミ生がその内容を順番に発表していきます。ゼミ生は担当する箇所を事前に調べ理解した上で、内容をわかりやすく発表し、その発表に対して全員でディスカッションを行います。また、2つのグループに分けて、あるテーマに関して討論会を行うこともあります。その中で各自が関心を持ったテーマを深く掘り下げて研究し、卒業論文につなげていく予定です。公共経済学に対する理解を深めることはもちろんのこと、説得力のあるプレゼンテーションと積極的なディスカッションの能力を身につけることも目標の一つです。ちなみに、過去に提出された卒論のテーマは、環境問題や教育問題から年金・医療問題、さらにはワークシェアリングに至るまで様々です。

専門分野の紹介

  1. レント・シーキング理論:政府(官僚や政治家)がある特定の企業や集団の利益になるような政策を選択するような行動をとるとき、社会全体の利益がどの程度損なわれるかを研究しています。
  2. 租税競争論:複数の地方自治体が互いに他の自治体の税収に影響を与え合うような状況における、自治体間の戦略的な行動を分析しています。

主要業績

  • “Exit from rent-seeking contests” with J. Itaya, Japanese Economic Review 54, 2003, pp.218-228.
  • 「補助金に関するフライペーパー効果の理論と実証」(板谷淳一・山口力との共著),経済学研究(北海道大学),第52巻第3号,pp. 69-85, 2002.
  • “Collusion deterrence mechanisms in hierarchical regulatory contracts”, Economic Journal of Hokkaido University 26, pp.115-131, 1997.

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