西山 茂

         
担当科目:数理統計学

世界的に高名なある統計学者によれば「統計学は20世紀の新しいテクノロジー」です。ところが、自動車、コンピューター、インターネット、様々の家庭電気製品に比べると、統計学はいかにも馴染みの薄い技術に思えます。実際には、統計学の応用範囲は、物理学、天文学、遺伝学、経済学といった伝統的な領域から、最近では、医学、心理学、社会学、言語学、文学、コミュニケーション論まで、あらゆる科学領域に急速に広がりつつあります。この背景としては、健康診断、選挙分析など色々な場面で客観的なデータを求める社会的ニーズの高まりと、データに基づいて判断を行う技術である統計学の出番の増加が、第一にあげられるでしょう。数理統計学は、確率論をもとに組み立てられている現代の統計理論について、ゼミナール形式の教科書を用いて分かりやすく解説します。

担当ゼミの紹介

教官の専門分野との関連から、データを活用した経済分析について、輪読やパソコンの実習を行っています。毎年とりあげている標準的なテキストとしては斉藤光雄「国民経済計算」(創文社)を三年次前期に輪読して、先ずGDP統計の骨格について勉強することにしています。更に、SAS、RATS、DataDeskなど世界的に広く使われている統計分析ソフトウェアを利用して、与えられたテーマについて、パソコン操作の実習を行っています。卒論の課題としては、特に制限はありませんが、これまでは耐久消費財の需要分析、賃金水準変動の分析を選択した人が多いようです。中には「学生アルバイトの経済学」や「海外ツアーの実証分析」など生活密着型のテーマに挑戦している人もいます。

専門分野の紹介

データを利用した経済分析である計量経済学では、このところ、二つの大きな進歩が見られています。一つは、個別の家計から収集した所得データ、消費データを活用するマイクロデータ分析の技術です。高齢化や少子化など世帯構造の変化がどのような影響を及ぼすかを分析する際にマイクロデータの活用は不可欠です。もう一つは、長期間に渡る経済統計を駆使して経済システムを推定する時にデータ自体に含まれている特徴を知る時系列分析の発展です。経済予測や経済計画の分野で、正しい計算を行うためには、近年の時系列理論の成果が不可欠のものとなります。双方のうちいずれがより重要であったかという比較は、丁度、内科と外科のいずれが重要な医学であるかを問うのと同じくそれほど意味を持ちません。ただ、これから日本の社会を襲う急速な高齢化、三人ないし四人に一人が老人という高齢化社会が到来した時に、私達はいかなる生活をし、どのような経済問題に直面するのか。現在、日本で利用可能なマイクロデータが少ないことは事実ですが、今のうちに研究を進めておくことが大切なことは大いに強調してもいいでしょう

主要業績

  1. "Implication and Quality Characteristics of the Family Income and Expenditure Survey of Japan, 1984-88", Journal of The Japan Statistical Society, Vol. 24-1, pp.89-104, 1994
  2. "An Analysis of Underreporting for Micro-data Sets: The Misreporting Model or Double Hurdle Model" (coauthored with Atsushi Maki), Economics Letters, Vol.52-3, pp. 211-220, 1996
  3. 『楽しい統計学セミナー』(同文舘)1998年5月

         

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