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授業情報/Course information

科目一覧へ戻る 2023/03/17 現在

科目名/Subject 日本経済史
担当教員(所属)/Instructor 高槻 泰郎 (商学部)
授業科目区分/Category 昼間コース 学科別専門科目
開講学期/Semester 2021年度/Academic Year  前期/Spring Semester
開講曜限/Class period
対象所属/Eligible Faculty 商学部/Faculty of Commerce
配当年次/Years 2年 , 3年 , 4年
単位数/Credits 2
研究室番号/Office
オフィスアワー/Office hours
更新日/Date of renewal 2021/02/24
授業の目的・方法
/Course Objectives and method
この授業の目的は、経済学の考え方を使って、歴史上に起きた出来事の意義を考察する能力を培うことにある。その方法は、講師が専門とする江戸時代を中心にいくつかの事例を取り上げ(毎回の講義前半)、受講者とディスカッションする(毎回の講義後半および講義後のメール交換)ことに求める。歴史上に起きた出来事の中には、現代に暮らす我々にとって、直ちには理解しがたいことが少なくない。例えば、江戸時代の商家に勤めた奉公人は、概ね12~13歳で奉公に上がり、40歳過ぎに「のれん分け」を受けて独立するまで住み込みで働いた。衣食住は保証されるが、基本的には無給である。原則として結婚もできない。この点だけ見ると「ブラック企業」と呼びたくなるが、このシステムが江戸時代を通じて、いや明治以降も、かなりの長きにわたって継続したのはなぜだろうか。「主人と奉公人の上下関係が絶対の時代だから仕方ない」で片付けるのではなく、このシステムにどのような合理性が潜んでいるのか、考えてみる必要がある。また、江戸時代の大名は、沢山のお金を商人から借りたが、仮にこのお金を返さなくても、江戸幕府から罰せられることはなかった。そもそも訴訟になることすらなかった。「身分制の社会では仕方なかったのだ」と片付けてしまうと、多くの商人が大名にお金を貸し続けた理由を合理的に説明することはできない。また、多くの金融商人が、明治時代以降に近代的な銀行へと転身できた理由を説明することができない。プレイヤーの合理的行動を仮定して分析を行うのが経済学であり、その対象は現代の事象に限られるわけではない。数百年前でも、数年前でも、過去に起きた出来事を正確に解釈するためには、(A)その歴史的背景を踏まえた上で、(B)論理的に考察する必要がある。(A)にあたって歴史学の考え方を用い、(B)にあたって経済学の考え方を用いるのが経済史という学問だと講師は考えている。この授業では、限られた時間の中で経済史の考え方を受講者と共有するために、(B)に力点を置き、実際に江戸時代に生じた様々な経済事象について、合理的な解釈を行うことを目指してディスカッションを進める。もちろん、全てを合理的に説明できるとは限らない。経済学を使って説明できない事象が存在するとすれば、それを深掘りすることで、我々の知る経済学をさらに説得的な学問にするためのヒントを得ることも可能である。
達成目標
/Course Goals
過去に生じた出来事を合理的に解釈し、説明する能力を培うことを目標とする。具体的には、講師が提示した様々な歴史的事例について、(1)なぜそのような現象が起きたのかを考察し、(2)講師も含む、他者との意見交換の中から思考を整理し、(3)論理的にアウトプットする能力を、講義中のディスカッションを通じて培うことを目標にする。
本講義の目的は、学術論文の執筆能力の向上ではなく、ビジネスパーソンとしての思考力、コミュニケーション能力、表現力の育成にあるため、歴史的知識の習得(いわゆる暗記)や歴史的資料の読解能力の習得は直接の目標としない。日本史を学んだことがない人にも、自由に考察・議論をしてもらうことを重視する。
授業内容
/Course contents
講義は集中講義形式かつ遠隔授業の形式で計15回実施する予定である。Zoomによってリアルタイム配信を行い、その様子を動画として録画し、一定期間、視聴可能な状態にしておく(リアルタイム配信とオンデマンド型のハイブリッド)。
各回の前半部分を講師による背景説明、後半部分をリアルタイムで受講する参加者とのディスカッションで構成する。オンデマンド形式で受講する者は、講義動画視聴後、コメントや質問を受講者で構成されるメーリングリストに投稿し、そこでディスカッションを行うことにする。リアルタイムで受講する場合と、オンデマンド形式で受講する場合とで、不公平が生じないように配慮する。
各トピックにおけるディスカッションの活発度合いに応じて、講義時間を弾力的に割り振りたいので、以下のトピックを各回に厳密に割り当てることはしない。

●経済史学とはいかなる学問か-歴史学と経済学の間-
●喧嘩両成敗(喧嘩をしたら理由を問わず双方死罪)は合理的か
●政権が変われば借金は帳消し?-室町時代の徳政令は正当化できるか-
●なぜ江戸時代の人々はコメに拘ったのか(1)-米納年貢制という不思議な貢租システムを再考する-
●なぜ大坂は「天下の台所」となったのか-偶然か、必然か-
●世界初のデリバティブ取引市場誕生の背景-リスクヘッジか、投機か-
●デリバティブ取引はなぜ公認されたのか-否定派VS肯定派のディベート-
●全ての米俵に百姓の名前と住所を書かせた熊本藩は異常だったのか
●なぜ江戸時代の人々はコメに拘ったのか(2)-大名・農民が商品化したのはコメだけだったのか-
●大名はなぜ商人に金を返したのか(1)-司法不在の金融市場が機能した理由-
●大名はなぜ商人に金を返したのか(2)-大名の財源を見直す-
●江戸幕府はなぜ旗振り通信を禁止したのか-飛脚で我慢できない人々と飛脚以外我慢ならない幕府-
●米価の安定はなぜ難しかったのか-価格の公定、恫喝、そして対話へー
●貨幣を悪鋳すれば物価が上がるって本当?-貨幣数量説からの脱皮を目指して-
●両替屋はどのようにして「銀行」となったのか-藩債処分「大打撃論」を疑う-

この他、受講者の関心に応じて、また講義中のディスカッションから派生して、新たなトピックを立てる可能性がある。その場合、上記のトピックで扱わないものが出てくる可能性があることを了解されたい。
事前学修・事後学修
/Preparation and review class
達成目標の欄にも書いた通り、本講義では、歴史的知識の習得それ自体を目的としない。むしろ、現実に起きた事象を経済学的に解釈する癖をつけてもらうことを目的とするため、以下のような入門書の内、興味を持ったものに目を通しておくと、スムースに講義内容に入って行けるのではないかと考える。

<比較的短時間で読めるもの>
●梶井厚志『戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する』中央公論新社、2002年。
●レイ・フィスマン、ティム・サリバン著(土方奈美翻訳)『意外と会社は合理的 組織にはびこる理不尽のメカニズム』日本経済新聞出版、2013年。
●高槻泰郎『大坂堂島米市場―江戸幕府VS市場経済―』講談社、2018年。
<読むのに時間はかかるが内容が充実しているもの>
●ポール・ミルグロム、ジョン・ロバーツ『組織の経済学』(奥野正寛・伊藤秀史・今井晴雄・西村理・八木甫訳)NTT出版、1997年。
●中林真幸・石黒真吾編『比較制度分析・入門』有斐閣、2010年。

事後学習としては、今後皆さんが直面する様々な不可解で一見すると不合理な現象を、合理的に理解し、解決しようと努力することが、それにあたる。
使用教材
/Teaching materials
講義毎にスライドとして配布・映写する。必要があれば、書籍や論文の一部を複写したものを配布する。
成績評価の方法
/Grading
講義中の発言内容および講義後の発言(メール)内容(40点)と、講義終了時に出題する小論文(60点)によって成績評価を行う。
成績評価の基準
/Grading Criteria
発言については、回数だけではなく、全体の議論に裨益するような発言を特に評価する。たとえ誤った見解だとしても、議論に裨益することは大いにあり得るので、積極的な発言を期待する。その際に、発言のマナーを問うことは言うまでもない(相手に対する誹謗中傷や他者の発話を遮る行為などは減点対象)。リアルタイムで受講する場合と、オンデマンド形式で受講する場合とで、採点上の不公平が生じないように配慮する。
小論文は、講義で取り扱った事象や概念について、それらを合理的に解釈し、第三者に説明することができているか、その達成度を問うものとする。
履修上の注意事項
/Remarks
アクセシビリティに関連して、合理的配慮を求める受講者は事前に教員まで連絡すること。
リンク先ホームページアドレス
/URL of syllabus or other information
https://researchmap.jp/7000003953
実務経験者による授業
/Courses conducted by the
ones with practical
experiences
該当しない/No
遠隔授業
/Online class
遠隔授業/Online class

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